法務スペシャリストの転職やキャリアップに役立つ! 書評連載 まずはここから!ベーシックな事例で学ぶ 企業法務の仕事【前編】|弁護士や法務の転職・求人情報なら「弁護士転職.jp」

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法務スペシャリストの転職やキャリアップに役立つ! 書評連載 まずはここから!ベーシックな事例で学ぶ 企業法務の仕事【前編】

転職活動には、時間がかかります。特に2020年は、政府が発表した緊急事態宣言によって、転職のスケジュールを余儀なく変更された人が少なくありません。

しかし、自宅にいる間にも転職対策としてできることはあります。その中の一つが、読書です。法律関連の書籍を読んでおけば、面接に役立つ情報を得ることができます。志望理由書を書くヒントが見つかることもあります。自宅にこもっていると、どうしても転職活動のモチベーションが下がってしまいますが、法律の書籍にふれていれば、モチベーションが刺激されます。

それでは、どのような本を読めば転職対策になるのでしょうか?これまでの書評連載では、「Q&Aで学ぶGDPRのリスクと対応策」と「会社役員のための法務ハンドブック」を紹介しました。今回は、「まずはここから!ベーシックな事例で学ぶ 企業法務の仕事」という書籍を紹介します。

今回の記事では、本の内容を紹介したうえで、キャリア別の読書方法も紹介しています。ご自身のキャリアと照らし合わせながら、最適な読書方法を見つけてください。

1.お薦めする理由

「まずはここから!ベーシックな事例で学ぶ 企業法務の仕事」は、法務部の仕事を網羅的に紹介した書籍です。法務部が会社の中でどのような存在であり、具体的にどのような仕事を扱っているのかについて、具体例を交えて分かりやすく紹介されています。

1-1.著者は企業法務のエキスパート

この本の著書の河村寛治さんは、法学部卒業後に伊藤忠商事株式会社の法務部に勤務し、国際法務チーム長として活躍した経歴を持つ法務のエキスパートです。現在は明治学院大学法学部名誉教授をされており、これまでに多数の書籍を出版されています。インハウスローヤーが増える中で、資格ではなくスキルを武器にキャリアを構築した著者の書籍には、法務部におけるキャリアパスを考えるうえでのヒントが隠されているかもしれません。

1-2.どんな内容?

この本は、【パート1:総論編】と【パート2:各論編】の二部構成となっています。

パート1(総論編)では、「法務部がそもそもどのような部なのか」が分かりやすく解説されています。人事部や経理部との関係性や、法務部員に求められる資質についても紹介されています。現在増加しつつある企業内弁護士と資格を持たない法務部員の関係性についても述べられています。

パート2(各論編)では、法務部の業務が分野ごとに紹介されています。社内で不祥事の疑いが生じた場合に法務部はどのように動くのか、海外への事業展開をする場合に法務部が担うべき役割は何かなど、具体的な法務部の仕事を学ぶことができます。

2.キャリアステップ別の読書法

「まずはここから!ベーシックな事例で学ぶ 企業法務の仕事」は、分かりやすい文章で解説されているため、法律知識を持たない人でも、気軽に読み進めることができます。まとまった時間が取れる人であれば、数日で読み終えることができる長さです。

しかし、現職の仕事や転職活動で忙しい場合には、「読書をするためにまとまった時間が取れない」ということもあります。そこで下記では、キャリア別の読書方法を紹介します。ご自身のキャリアに応じて、ポイントを絞った効率的な読書方法を選んでください。

2-1.企業法務未経験の人

法務部での実務経験が全く無い人は、転職の場で「ポテンシャル採用」がキーとなります。ポテンシャル採用とは、潜在能力に期待して実務経験のない人材を採用することです。他部署での勤務経験があるものの法律業務を扱った経験がない人や、弁護士事務所での勤務経験はあるものの企業に勤めた経験がない人などが、対象となります。

ポテンシャル採用として内定を得るためには、「法務部でどのような業務を扱うのか」を具体的にイメージしておくことが重要です。面接で「どうして未経験の法務部を希望しているのですか?」と聞かれたときに、「なんとなく面白そうだから」「法学部出身だから」などの漠然とした答えをしていては、オファーを得ることはできません。

このようなとき、「まずはここから!ベーシックな事例で学ぶ 企業法務の仕事」が助けになります。面接で説得力を持った受け答えをするためには、法務部の全体像が見えていることが必須ですが、パート1を通読しておけば、法務部の仕事について大まかなイメージをつかむことができます。特に、パート1の第2章(P19-34)では、法務部で取り扱う業務が網羅的に紹介されているため、「法務部に転職したら何がやりたいか」を考えるうえで参考になります。

パート2の第4章「契約作成と契約管理(P131-152)」も必見です。法務部の性格は企業ごとに異なりますが、契約業務はどの企業においても法務部の仕事です。この章では、契約業務の基礎から応用まで解説されているため、目を通しておけば転職後の実務に役立つでしょう。契約の交渉や契約書の作成だけでなく、契約締結後の管理方法についても解説されていますので、実践的な知識を幅広く身につけることができます。

2-2.法務実務経験4年以内の法務部員

法務部での勤務経験が4 年以内の人は、下記の方法でこの書籍を活用しましょう。

2-2-1.転職の方向性を決める手がかりにする

20代〜30代前半の法務部員は、いざ転職活動を始めてみると、転職の方向性に悩むことがあります。漠然と「転職したい」と思って転職活動を始めても、企業によって法務部の位置づけが異なるため、「どのように戦略を立てればよいのか分からない」ということがあるからです。

転職の方向性に迷った場合は、パート1「総論編(P16-58)」に目を通してみましょう。企業によって法務部の性格がどのように異なるのかという点が紹介されているため、「転職先としてどのような企業に応募するか」を考えるうえでの参考となります。例えば、パート1の第2章の第4部「法務の組織(P30-34)」では、様々な企業における法務部の位置づけを紹介しています。法務部の中に知財部がある企業や、総務部と一体型の法務部など、一言で「法務部」といっても多様なスタイルがあることが分かります。

この本を読んで法務部の全体像をつかむことができれば、「自分は国際特許に関わる仕事をしたいから、海外展開をしていて知財戦略に力を入れているメーカーに応募してみよう」というように、転職活動の戦略が見えてくるかもしれません。

2-2-2.面接対策として活用する

20代〜30代前半の法務部員の面接では、「将来の法務部員像」を尋ねられることが少なくありません。例えば、「どのような法務部員を目指していますか」「法務部員としてどのようなキャリアを考えていますか」「将来的にどのような仕事を専門としていきたいですか」などの質問が予想されます。

このような質問に答えるためには、目指すべき法務部員について具体的なイメージを持っておくことが必要です。とはいえ、勤務経験が短い場合は、理想とするイメージはどうしても漠然としたものとなってしまいます。

この本のパート2「各論編(P60-359)」では、法務部の業務が網羅的に紹介されているため、読み進めるうちに自分が力を入れたい分野が見つかるかもしれません。法務部の業務の中で興味のある分野を絞ることができれば、転職活動の戦略も自然と決まります。例えば、「大型M&Aに携わりたいから、大企業にしぼって応募しよう」というように、自分のやるべきプランが見えてきます。

パート2「各論編(P60-359)」を全部読む時間がない人は、パート2の目次を見て、興味のある分野に目を通してみましょう。興味のある順にリストを作り、面白いと思う分野が見つかるまで読み進める、という方法も選択肢の一つです。

3.まとめ

今回は、転職対策として「まずはここから!ベーシックな事例で学ぶ 企業法務の仕事」の書籍を紹介しました。企業法務未経験の人や、法務実務経験4年以内の法務部員に向けて、効率的な読書方法も紹介しました。

次回の後編では、引き続き、キャリアステップごとの読書方法を紹介します。中堅法務スタッフ(法務実務経験5〜10年)の方や、課長・部長クラスの方は、後編の記事を併せて参考にしてください。

記事提供ライター

元弁護士 ライター
東京大学卒業後、2009年に司法試験に合格。弁護士として知的財産業務、企業取引等のビジネス関連の業務を扱う。現在は海外に在住し、法律関連の執筆や講演を行う。

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