業界トピックス
弁護士が読む本、読まなくなった本
- INDEX
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1.受験生が読む本は、合格後は読まない
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2.使わなくなった六法・裁判例集
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3.基本書と白表紙は覚えるので読まなくなる
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4.できるだけ薄い本を買ってきて
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5.ニッチな分野の専門書
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6.企業法務ではガイドラインをよく使う
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7.一番読むのは漫画
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記事提供ライター
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サイト運営会社:株式会社C&Rリーガル・エージェンシー社
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1.受験生が読む本は、合格後は読まない
多くの司法試験受験生は、受験勉強において、六法、基本書、判例集、受験指導校(司法試験予備校)のテキストを読み込みます。ところが、現在の筆者は、これらをほとんど読まなくなってしまいました。筆者に限らず、ほとんどの弁護士が、司法試験合格を境に、読む本の種類ががらりと変わるはずですので、その理由と、現役弁護士が仕事でどのような本を使っているのかをご紹介します。
2.使わなくなった六法・裁判例集
筆者の勤務弁護士時代、事務所内には六法と裁判例集がずらりと並んでいました。
司法試験の問題に適用されるのは最新の法律ですが、実際の事件に適用されるのは、事件が起こった時点の過去の法律です。事件が起こった年の六法を使えば当時の法律がわかります。だから書棚に毎年の六法を並べておくのだと、先輩弁護士たちから教わりました。
判例集は弁護士の生命線です。受験生は、最高裁判所の判例だけを知識として覚えておけば足りますが、弁護士が訴訟を有利に進めるためには、直近の、可能であれば係属中の事件と同じ地方裁判所の、依頼者に有利に引用できる裁判例を探してきて、裁判官に突きつければ、訴訟はかなり有利になります。裁判官は独立しており裁判例に拘束されることはないのですが、同時に、だからこそ、どの裁判官が裁いても同じ結論になるだろうという公平さを重視する裁判官も多いはずです。
六法と裁判例集は弁護士業務に必須です。にもかかわらず、筆者の事務所の書棚には、六法も裁判例集も、受験生時代に用いていた思い出の品しか置かれていません。その理由は、偏にインターネットサービスの充実です。何年何月何日に適用される法律を知りたいと検索すれば、その年度の六法を引っ張り出してくる必要がありません。インターネットサービスならば、書籍化された裁判例集には載らないであろうマニアックな裁判例まで検索できます。世間ではDXやIT化が騒がれていますが、弁護士業界では21世紀初頭からデジタル化が進展し続けており、日々業務が楽になっていくと実感しています。
もっとも、紙に慣れてしまった先輩弁護士は、今でも毎年の六法と、取扱分野の裁判例集を買い集め、法律事務所の図書館化を進めています。お客様の目線になれば、蔵書量が多い法律事務所は立派に見えるはずですから、お客様にもDXやIT化が浸透するまでの過渡的措置としては、先輩方のアナログなやり方が正しいのかも知れません。
3.基本書と白表紙は覚えるので読まなくなる
多くの弁護士が、後進におすすめしたい基本書を持っています。しかし、基本書の内容を身につけたから司法試験に合格したのであり、合格後も愛読するものではありません。まれに、学説が鋭く対立する分野の訴訟で、基本書の記載を証拠提出することがありますが、それは主張の権威付け目的に過ぎません。基本書に書かれている主張と同じ主張を自力で行えるのが弁護士です。基本書は重要だからこそ頭の中に刻み込んでいます。
司法修習では、市場には流通しない、白い表紙の教材が配布されます。これは白表紙(しらびょうし)と呼ばれています。司法修習は実務家を短期育成するプログラムであるため、白表紙には実務で役立つ情報が詰まっています。弁護士稼業に慣れてくると、基本書同様に白表紙の内容は頭の中に刻まれるのですが、未だそこに至っていない新人時代は、白表紙をバイブルのように扱うことになります。
4.できるだけ薄い本を買ってきて
筆者の新人時代のボス弁は、慣れない分野の事件が飛び込んでくる度に、事務職員に、どの分野のできるだけ薄い本を買ってきて、とお願いしていました。筆者も真似をして、今でも、慣れない仕事が来ると、できるだけ薄い就活用の業界研究を買ってきます。何時間でわかる、何日でわかる、といったタイトルの、1,000円ちょっとで買える本です。
ボス弁も筆者も、その薄い本で仕事ができるとは思っていません。しかし、最低限の業界知識や業界用語を知っておかなければ依頼者との会話が成立しないので、それを効率的に身につけるためには、できるだけ薄い本が好適なのです。依頼者との初回面談は就職活動のようなものですから、業界研究をすることは当然であると、筆者は考えています。
恐ろしいことに、訴訟の相手方弁護士が、目の前の事件の基礎知識を全く理解しておらず、自ら提出した書面の記述について裁判官から質問を受けても、堂々と、専門的なことはわかりませんが、依頼者からそのような説明を受けました、と答えることが多々あります。自分で書いた書面の内容を理解できないような無責任な弁護士にはなりたくないので、筆者はできるだけ薄い本から勉強を始めています。事件の規模によっては、依頼者から勧められた専門家しか読まない分厚い解説書を読み込むこともあります。弁護士は法律だけ学べばよいわけではなく、それが司法試験受験生との最大の違いであるように思えます。
5.ニッチな分野の専門書
筆者がある相続の相談を受けた際に、問題となっていたのは、親戚で分け合った土地が道路につながっているかどうかでした。筆者は、道路にまつわる法律の専門書を探したのですが、どこにも売っておらず、弁護士会の図書館でようやく見つけました。このようなニッチな分野の専門書は、弁護士業務で最も役立つのですが、必要となる頻度が非常に低い上に、どの分野が必要になるのかも読めないので、事前に準備できないことが悩みどころです。また、ニッチな分野の専門書は、電子書籍化されていることがほとんどないので、図書館に頼らざるを得ず、筆者の弁護士業務は、アナログから完全に脱することができずにいます。
6.企業法務ではガイドラインをよく使う
企業法務では、書籍ではないのですが、官公庁が公開しているガイドラインを日常的に読み込むことになります。法の解釈は裁判所の専権ですから、弁護士が最も信頼するべきは裁判例です。しかし、企業法務分野では、未施行のものも含め、最新の法改正への対応が求められます。裁判で争われるのは、最新の法律ではなく過去の法律です。そのため、企業法務分野では、最も信頼できるはずの裁判例に頼れません。そこで、せめて官公庁の見解に頼ることになります。
7.一番読むのは漫画
現在の筆者が最も読む時間を割いている書籍の種類は、間違いなく漫画です。友人の弁護士たちも、おすすめの漫画に出会うと布教活動を始めるので、漫画を読むのは筆者だけではありません。漫画はデジタル化が進んでいる分野なので、スマートフォンで読むことが多いのですが、加齢による視力の衰えを隠せなくなってきた筆者には、台詞の文字が小さすぎることが悩みです。老眼に優しい大画面のスマートフォンが出て欲しいと思いつつ、そういえば電車の中でも基本書を読み返していた日々もあったと懐かしい気持ちになりました。
記事提供ライター
弁護士
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。
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弁護⼠、法務・知財領域に精通したプロフェッショナルエージェンシーです。長きに渡り蓄積した弁護士・法律事務所・企業の法務部門に関する情報や転職のノウハウを提供し、「弁護士や法務専門職を支える一生涯のパートナー」として共に歩んでまいります。
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