業界トピックス

一般民事とは?|民事系法律事務所の仕事内容・特徴・必要なスキルとやりがい

INDEX
  • 一般民事とは?弁護士が扱う分野をわかりやすく解説

  • 民事系法律事務所で扱う一般民事事件の特徴

  • 法律事務所の規模による一般民事の働き方の違い

  • 一般民事事件の実務の流れと弁護士の働き方

  • 一般民事を扱う弁護士のやりがいと注意点

  • 民事系法律事務所で求められるスキル・向いている人とは

  • 一般民事を扱う法律事務所で働きたい方へ|C&Rリーガル・エージェンシー社へ

一般民事とは?弁護士が扱う分野をわかりやすく解説

一般民事は、身近なトラブルを幅広く扱う、弁護士にとって“実務の基本”とも言える分野です。交通事故や債権回収、不動産、労働問題など、扱うジャンルが多岐にわたります。
 
また、企業法務と比べて個人を依頼者とすることが多いため、一人ひとりの事情に寄り添う姿勢や、言葉を尽くして理解してもらう力も大切です。
 
ここでは、一般民事の特徴を踏まえながら、企業法務や家事・刑事事件との違いについても簡単に触れていきます。

■一般民事と企業法務の違い

一般民事と企業法務は、どちらも弁護士の代表的な仕事ですが、扱う依頼者や事件の進め方が大きく異なります。
 
企業法務は、クライアントが企業(法人)である点が最大の特徴です。たとえば、M&A、契約書のリーガルチェック、株主総会の運営、労務管理など、企業活動を円滑に進めるための“予防法務”の割合が多くなります。問題が起きた後の訴訟対応もありますが、できるだけリスクを未然に防ぐことが求められます。
 
また、企業法務では、一つのプロジェクトに複数名の弁護士がチームで取り組むことも珍しくありません。そのため、社内外との調整や長期的なスケジュール管理、他士業や専門家との連携なども日常的に行います。
 
一方、一般民事は依頼者の多くが個人です。トラブルが発生してから相談に来るケースがほとんどで、交通事故の損害賠償請求、債権回収、近隣トラブル、不動産問題など、すでに発生している問題をどう解決するかに注力します。
 
また、一般民事では一人の弁護士が相談対応から書面作成、交渉、裁判対応までを一貫して担当することが多いのも特徴です。依頼者にとっては、弁護士が唯一の頼れる存在になるため、法律的な説明をわかりやすく伝えたり、時には感情面のケアをすることも欠かせません。
 
企業法務が「企業の経営を守る防波堤」だとしたら、一般民事は「依頼者の困りごとを直接解決する身近な相談役」と言えるでしょう。

■一般民事と家事事件・刑事事件の違い

一般民事と家事事件・刑事事件は、いずれも個人が当事者となる分野ですが、扱うテーマと弁護士の関わり方には明確な違いがあります。
 
家事事件は、親族・相続に関する争いを対象とする事件です。代表例は離婚、親権争い、養育費や財産分与、遺産相続など。金銭だけでなく、感情面の対立が大きく絡むため、依頼者の気持ちに配慮しながら調停や交渉を進める力が必要です。また、家庭裁判所での調停や審判が多いのも家事事件の特徴です。
 
刑事事件とは、刑法や特別法の適用によって個人が処罰される事件のことです。弁護士は、被疑者・被告人となった人を弁護します。逮捕・勾留中の迅速な接見対応、警察や検察とのやり取り、保釈請求、裁判での弁護活動など、スピード感と緊張感が求められます。
 
これに対して、一般民事は“個人と個人”または“個人と企業”のトラブルを広く扱います。相手方との交渉で解決することもあれば、訴訟や和解、調停を選ぶこともあります。案件ごとに最善の着地点を探る柔軟さと、幅広い法律知識が求められます。家事・刑事に比べてジャンルが広く、事件ごとに進め方も変わるため、「人の話を聞き、状況を整理し、最適な一手を見つける力」が生きる分野と言えるでしょう。

民事系法律事務所で扱う一般民事事件の特徴

民事系の法律事務所は、日常で誰にでも起こり得るトラブルに幅広く対応しています。取り扱う事件は多岐にわたりますが、共通しているのは「目の前の依頼者の困りごとを、一緒に解決まで伴走する」こと。
 
一件一件に依頼者の生活や想いが詰まっていて、弁護士としての総合力を磨ける分野です。
 
ここでは、一般民事でよく相談される事件例や、近年増えてきている新しい分野について紹介します。

■どんな事件がある?

民事系の法律事務所で扱う一般民事事件には、交通事故、債権回収、不動産トラブル、労働問題など、身近だけれど一人では解決しにくいテーマが多く含まれます。
 
たとえば交通事故なら、保険会社とのやり取りを代行して被害者が納得できる賠償を受け取れるようにサポートします。
 
債権回収では、支払いを拒む相手に内容証明を送ったり、必要に応じて訴訟や強制執行に踏み切ることもあります。
 
不動産のトラブルでは、賃料滞納や立ち退き交渉、リフォーム工事の瑕疵をめぐる損害賠償請求など、オーナー側・借主側どちらからの相談も少なくありません。
 
労働問題では、不当解雇や残業代の未払い、ハラスメントなど、個人が企業を相手に声を上げる場面で、弁護士が労働者に寄り添い、正当な権利を勝ち取るためのサポートを行います。
 
扱うテーマは本当に幅広いですが、どの案件も暮らしに直結するからこそ、依頼者に寄り添いながら一歩ずつ解決へ導く姿勢が何より大切です。

■近年増えているSNS誹謗中傷や情報開示請求などの新しい分野

ネットやSNSの普及に伴い、誹謗中傷への対応や発信者情報の開示請求といった相談は年々増えています。
 
たとえば、匿名掲示板やSNSで名誉を傷つけられた場合、投稿を削除するだけではなく、相手を特定して損害賠償を請求することもあります。こうした手続きを進めるには、ITやプラットフォームの仕組みを理解する力が欠かせません。ネットに慣れている若手弁護士にとっては親和性が高く、専門分野としてキャリアに活かすケースも増えてきました。
 
オンラインの金銭トラブルも同様で、詐欺サイトの被害回復や情報開示など、従来の一般民事にはなかったテーマを扱う機会が増えています。こうした現代的な案件では、ネットリテラシーに対する理解を深めることが、対応力の差につながります。
 
一般民事は「昔ながらの典型的な事件を扱う分野」というイメージを持たれがちですが、SNS誹謗中傷や情報開示請求のように、社会の変化に合わせて新しい論点に挑戦できるのも魅力です。

法律事務所の規模による一般民事の働き方の違い

一般民事を扱う法律事務所といっても、その規模や体制によって働き方は大きく変わります。小規模事務所の少人数で幅広くこなすスタイルと、中規模・大規模事務所の分業やチームで進めるスタイルでは、事件の規模感や担当する役割、身につくスキルも変わってきます。
 
自分がどんな環境で力をつけたいのかを知っておくことは、これから一般民事のフィールドに飛び込む弁護士にとって大事なポイントです。

■小規模法律事務所の特徴

小規模の民事系法律事務所は、いわゆる“町弁”とも呼ばれる地域密着型のスタイルが多く、少人数で多様な事件を取り扱うのが特徴です。
 
依頼者と弁護士の距離が近く、相談から受任、交渉、裁判対応まで、一人で幅広く担当する場面が多くなります。自分の頭と足をフル回転させて事件を動かす感覚が強く、まさに「弁護士としての総合力を鍛えたい」という人には打ってつけです。
 
事件の種類も日常的な交通事故から不動産、家事、刑事事件までバリエーション豊か。小規模だからこそ、依頼者に直接「ありがとう」と言ってもらえる瞬間も多く、人の役に立っているという実感を持てる環境です。

■中規模・大規模法律事務所の特徴

一方で、中規模・大規模の民事系法律事務所では、不動産や交通事故など、分野ごとに専門チームで進める分業体制が一般的です。分野ごとに案件を担当することで、特定の分野についての実務経験と知識を深めやすくなります。「この分野なら任せてほしい」と胸を張れるエキスパートを目指したい人にはぴったりの環境です。
 
さらに、小規模事務所では一人で対応できる件数や規模に限界がある一方で、中規模・大規模の事務所なら所内の人員を組んで役割分担ができるため、交通事故の被害者が重度の後遺障害を負った場合や、多数の被害者を代表して損害賠償請求を行う集団クレーム、相続で大規模な不動産の共有物分割をめぐる紛争などより大きな案件や複雑な事案にも対応できるのが大きな強みです。
 
「一つの分野を徹底的に深めたい」
「自分一人では経験できない規模の案件に挑戦したい」
そんな人にとって、中規模・大規模の民事系法律事務所は専門性と経験値をどちらも積み上げられるフィールドになるはずです。

一般民事事件の実務の流れと弁護士の働き方

ここでは、一般民事事件の具体的な進め方と、弁護士がどんな働き方をするのかをイメージできるように整理します。

 

■相談ルート・受任から解決までの流れ

相談を受けて、受任をし、解決するまでの流れは以下のとおりです。
 
1. 初回相談(ヒアリング・見立て)
まずは初回面談で、相談者の話をじっくり聞きます。この段階で弁護士は、事実関係を整理し、どの法律が適用できるかを瞬時に考えながら、「何が一番の論点か」「どの選択肢が現実的か」を探ります。
 
相談者としては「とにかく不安をなくしたい」気持ちが強いので、法律的な問題だけでなく、解決までの流れや見込み、費用についてわかりやすく説明することが重要です。
 
2. 受任契約(弁護士に正式に依頼する)
相談の結果、弁護士に正式に依頼することになれば、委任契約書を締結します。
 
ここで大切なのが、「何をどこまでやるのか」「解決のゴールはどこか」を依頼者と共有すること。後々のトラブル防止のためにも、受任の条件はできるだけ明確にします。
 
3. 調査・証拠収集
受任後は、必要に応じて事実関係をさらに掘り下げる調査に入ります。交通事故なら事故現場の状況確認、不動産なら契約書類の精査や現地調査など、証拠をどう集めるかが解決の土台になります。
 
4. 交渉・示談交渉
証拠が整えば、相手方との交渉に入ります。交通事故なら保険会社、債権回収なら債務者本人や代理人、不動産トラブルなら賃借人や業者など、相手はさまざまです。
 
交渉の場では、依頼者の主張を通すだけではなく、相手方の状況や反論を踏まえて落としどころを探る柔軟さが求められます。ときには、依頼者にとって不利な現実を伝えたうえで、「何を優先すべきか」「どこまで譲るか」を一緒に考え、納得してもらう説得力も大切です。
 
示談での解決が現実的であれば、示談書を作成し、条件が整えばここで事件終了です。
 
5. 調停・訴訟へ
示談がまとまらない場合は、依頼者と相談のうえ、調停や訴訟へ進むことになります。訴訟であれば、弁護士が依頼者から聞き取った情報をもとに訴状を作成して裁判所に提出し、期日で主張・立証活動を行います。
 
6. 解決後のフォロー
判決や和解で終わった後も、弁護士の役割は続きます。損害賠償の支払いが履行されない場合は、強制執行を検討したり、相手方と追加で話し合いを持つこともあります。
 
依頼者の「解決して終わり」ではなく、「本当に問題が片付いたか」を見届けるのが、
一般民事を扱う弁護士の責任でもあります。

■一般民事を取り扱う弁護士の働き方

一般民事を扱う弁護士は、一つの事件を解決に導くまで、様々な対応を求められます。
小規模の事務所では、基本的に一人の弁護士が相談から調査、交渉、裁判対応までを一貫して担当しますが、中規模・大規模では分野ごとの専門チームを組み、複数人で役割を分担することもあります。
 
扱う事件によって解決までの期間もさまざまで、示談交渉だけでまとまれば数週間から数か月で終わることもありますが、不動産の明渡訴訟や損害賠償請求などでは半年から1年以上かかることも珍しくありません。その間に相手方の対応が変わったり、思わぬ追加トラブルが起きたりするので、スケジュールの再調整や追加の書面作成など、粘り強さと柔軟さが必要です。
 
日々の業務としては、基本的には事務所の営業時間内に相談を受けたり、期日に出頭したりといった対外業務を行います。営業時間が終了してようやく、日中に受けた相談内容を整理しながら、一人でじっくり起案に取り組むのが一般的です。
 
また、現場調査や出張が発生することもあります。特に交通事故の事故現場や、不動産物件の状況確認が必要な場合は、依頼者と一緒に現場へ足を運び、写真を撮ったり証拠を集めることも大事な仕事です。相手方の所在地や裁判所の管轄によっては地方への出張が続くこともあり、日によってはスケジュールが移動で埋まることもあります。
 
依頼者の暮らしに深く関わる分、弁護士自身もフットワークを活かして最後まで伴走するのが、一般民事を取り扱う仕事の魅力です。

一般民事を扱う弁護士のやりがいと注意点

一般民事を扱う弁護士の仕事は、トラブルを抱えて不安な依頼者に一番近い立場で寄り添いながら、問題の解決に向けて具体的な道筋を示せることが最大のやりがいです。
 
たとえば、交通事故の損害賠償や不動産の立退き交渉など、暮らしに直結する問題を「法律を使って解決できる」だけでなく、依頼者の気持ちを整理し、時には現実的な解決策を示して前を向いてもらえる瞬間は、何物にも代えがたい達成感があります。
 
また、一般民事は扱う分野の幅が広いため、一つの事件が解決するたびに新しい分野の知識が増え、弁護士としての総合力を高められるのも魅力です。交渉力や調整力はもちろん、依頼者の心情に寄り添う説明力など、どこに行っても通用するスキルが自然と鍛えられます。
 
その一方で、注意しておきたいのは「依頼者の感情を受け止めすぎて自分が疲弊してしまう」ことがある点です。家族の問題、生活に直結するトラブルなど、感情的なやり取りになることも多く、ときには依頼者自身を説得して軌道修正する難しさもついて回ります。
 
だからこそ、適度に線引きをして冷静に状況を判断し、依頼者と向き合うときと、法律家としての視点を持つときを上手に切り替えるバランス感覚が必要です。

民事系法律事務所で求められるスキル・向いている人とは

一般民事を扱う弁護士は、幅広い分野のトラブルに向き合いながら、依頼者にとって最適な解決策を一緒に考えていく役割を担います。だからこそ、どのようなスキルやマインドが求められるのかを知っておくことは、働き方を考えるうえでとても大切です。

 

■必要な能力・マインドセット

民事系法律事務所で求められるのは、まず何より「話を引き出す力」です。依頼者は、何が問題の本質かを自分でも整理できていないことが多く、弁護士が上手に質問しながら事実を組み立てる力が求められます。そのうえで、集めた情報を分析して、依頼者にとって現実的な選択肢を示す「問題解決力」も不可欠です。
 
さらに、法律知識を武器にするのはもちろんですが、それを依頼者が理解できる言葉でかみ砕き、ときには耳が痛いことでも正直に伝え、納得してもらう「説得力」も大切です。
 
また、一般民事では交渉や示談で終わるケースも多いため、相手方だけでなく、依頼者自身の思い込みをやわらげ、現実的な落としどころを一緒に探す「調整力」が問われます。
 
感情的なやり取りに巻き込まれることもあるので、気持ちを切り替えられるタフさと、一件一件の経験を自分の成長に変えていける前向きさも欠かせません。

■どんな人に向いているか

一般民事は、人の暮らしに直結する問題を扱う分、「誰かの役に立ちたい」という気持ちを原動力にできる人にぴったりの分野です。
 
一人の依頼者と長く関わり、信頼関係を築きながら一緒に解決のゴールを探していくスタイルが多いため、人の話をきちんと聞ける人、相手の立場に立って物事を考えられる人は大きな強みになります。
 
また、理想だけを押し通すのではなく、時には依頼者にとって耳が痛いことも正直に伝えて
現実的な方向へ導ける勇気と説得力を持てる人は、一般民事の現場で特に信頼される存在になれます。
 
幅広い分野を扱うからこそ、新しい知識を学び続ける好奇心がある人、イレギュラーがあっても「どうすれば何とかできるか」を前向きに考えられる人は、この仕事を続けるほどに大きく成長していけます。
 
「目の前の人の“困った”を法律で解決したい」
「感謝される瞬間にやりがいを感じたい」
そんな思いを持っている人には、民事系法律事務所はきっと自分の力を発揮できる場所になるはずです。

一般民事を扱う法律事務所で働きたい方へ|C&Rリーガル・エージェンシー社へ

一般民事を扱う弁護士の仕事は、依頼者の生活に深く関わり、問題を解決するだけでなく、「前を向いて生きていく力」を後押しする仕事です。だからこそ、幅広い分野の実務経験を積みながら、交渉力や調整力、依頼者を説得する力など、どこでも通用する“弁護士としての総合力”を磨けるのが大きな魅力です。
 
C&Rリーガル・エージェンシー社は、弁護士や企業法務など士業・法務領域に特化した転職支援サービスを提供しています。ただ求人をご紹介するだけではなく、あなたが弁護士として「どんなキャリアを築きたいか」を一緒に考え、長期的な視点からのアドバイスや情報提供を行っています。
 
たとえば、
「一般民事系法律事務所での経験を将来どう活かせるのか」
「企業法務と比べて自分に合うのはどちらか」
「将来独立を目指す上で、どんな働き方を選ぶと良いか」
といった具体的なご相談も大歓迎です。
 
今すぐの転職を考えている方はもちろん、「現職のまま、将来の選択肢を広げたい」
「まだ転職は考えていないけど、市場感を知っておきたい」という段階でも、ぜひお気軽にご相談ください。

中澤 泉(弁護士)

弁護士事務所にて債務整理、交通事故、離婚、相続といった幅広い分野の案件を担当した後、メーカーの法務部で企業法務の経験を積んでまいりました。 事務所勤務時にはウェブサイトの立ち上げにも従事し、現在は法律分野を中心にフリーランスのライター・編集者として活動しています。

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