業界トピックス

弁護士の年収は低い?検察官、裁判官と比較/独自アンケートも

目次
  • 1.若手弁護士の年収

  • 2.所属先別の年収

  • 3.検察官、裁判官の年収

  • 4.独立弁護士の年収

  • 5.まとめ

1.若手弁護士の年収

弁護士の数が増えて、その年収は低くなったと言われていますが本当でしょうか?2022年8月から10月にかけて、C&Rリーガル・エージェンシー社が、若手弁護士(当時弁護士登録1年目(74期)から5年目(70期))を対象に実施したアンケートによると、若手弁護士の21.2%が年収600~699万円、15.3%が700~799万円、14.0%が500~599万円と回答しています。同アンケートでは、6.3%が年収1600万円以上と回答している一方で、1.4%が年収300~399万円と回答しており、個人差は大きいものの、若手弁護士の年収は、600万円台前後に集中していることがわかりました。

弁護士の多くは、法科大学院を出て、司法修習を終えてから弁護士になるため、社会人としてのスタートを切るのは、30歳前後になります。国税庁による令和3年民間給与実態統計調結果における年齢階層別の平均給与を見ると、若手弁護士と同年代と思われる25~29歳の平均年収は371万円、30~34歳が413万円となっています。弁護士の年収は低くなったと言われていますが、若手弁護士の年収は、他の職業と比較すると、高い水準にあることがわかりました。

ここでは、誰もが気になる弁護士の年収について紹介します。

【関連コラム】:四大法律事務所の平均年収は?年収が高い理由と中途採用の年収の相場を紹介

2.所属先別の年収

一般論ですが、弁護士の年収は、勤務先の種類、規模、地域によって大きく異なります。弁護士の年収を勤務先毎にまとめた調査としては、日本弁護士連合会が2020年に実施した弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査があり、その概要が「近年の弁護士の活動実態について」としてまとめられています。

同調査によると、弁護士全体の平均所得は1,119.07万円、中央値は700万円でした。同調査の有効回答数1,788のうちの1,669を占める一般の法律事務所に所属する弁護士の平均所得は1,129.73万円、中央値は700万円と、全体の結果とほぼ一致します。なお、所得とは、いわゆる年収のことです。

最も所得が高いのは、外国法共同事業事務所に所属する弁護士で、平均1,809.11万円、中央値1,450万円と突出しています。外国法共同事業事務所の多くは大規模なので、大規模な法律事務所に所属する弁護士ほど所得が高いという一般論を裏付ける結果となっています。

ひまわり基金法律事務所に所属する弁護士の所得は、平均869.79万円、中央値530万円です。ひまわり基金法律事務所は、日本弁護士連合会が、司法過疎を解消するために、司法過疎地に設置している事務所です。法律事務所の所在地によって所属する弁護士の年収が変わるという一般論を裏付ける結果となりました。

企業に所属する弁護士の所得は、平均925.5万円、中央値800万円でした。一般に、企業に所属した場合、得られる給与は法律事務所に所属する場合に比べて低くなると言われていますが、平均を比較するとそのような結果になるものの、中央値で比較すると、むしろ法律事務所を上回るという興味深い結果になっています。企業における弁護士の評価が高まってきた結果と言えるかもしれません。

3.検察官、裁判官の年収

弁護士になるためには原則として司法試験に合格して司法修習を終える必要がありますが、司法修習を終えると、弁護士以外にも、検察官、裁判官になる道が拓けます。このことから、弁護士、検察官、裁判官を総称して、法曹三者と呼びます。弁護士の年収というテーマから離れますが、参考として、同じ法曹三者である、検察官、裁判官の年収についても紹介します。

検察官も裁判官も公務員であり、その年収は、主として、基本給、各種手当、賞与(期末手当および勤勉手当)から構成されます。検察官も裁判官も、2023年現在、初任給は237,700円です。一見弁護士とは比較にならない低水準ですが、ここに各種手当と賞与が加わります。各種手当の中でも大きな割合を占めるのが地域手当です。これは、物価水準が高い地域の公務員に対して支払われる手当で、東京都特別区に勤務する場合、基本給の20%相当の地域手当が出ます。弁護士の年収においても地域差があることが確認できましたから、検察官と裁判官の年収にも地域差を設けることは当然とも言えます。賞与も合わせると、検察官も裁判官も、初年度の年収は500万円を超えると言われています。冒頭に紹介した若手弁護士の年収と比較するとやや低い水準ですが、勤続年数に応じて昇給が期待できる点で、弁護士よりも経済的に安定しています。

4.独立弁護士の年収

独立弁護士の年収は一概には言えません。個人差がある上に、同一人でも、年によってばらばらだからです。

勤務弁護士と独立弁護士の最大の違いは売上と経費という概念です。勤務弁護士も、形式的には個人事業主であることが多く、弁護士会費や交通費を経費として計上できますが、独立弁護士のように、売上に追われることもなければ、事務所賃料や人件費を負担する必要もありません。そして、独立弁護士の年収は、売上(税法上の収入)から経費を差し引いた所得として計算されます。

同じ年収1,000万円でも、事務所を借りて事務員を雇い、売上2,000万円、経費1,000万円という弁護士もいれば、自宅を事務所として事務員を雇わず、売上1,200万円、経費200万円という弁護士もいます。仮に売上が150%から50%の間で変動するとした場合、前者が売上3,000万円の年は年収2,000万円です。しかし、売上1,000万円に落ち込むと年収は0円になってしまいます。後者が売上1,800万円の年は年収1,600万円ですが、売上600万円の年でも年収400万円をなんとか維持できます。

勤務弁護士を雇えば受けられる仕事の量が増えて、売上は伸びていきます。しかし、売上が悪い年も、勤務弁護士に給与を支払わなければなりません。売上か安定か、どちらを求めるかは人それぞれです。そもそも、年収よりもワークライフバランスや自由な働き方を求めている独立弁護士も多いです。

5.まとめ

弁護士の年収は、所属先によってその金額にばらつきがあり、独立した場合には、同一人でも年によって大きくばらつきます。しかし、均して考えれば、弁護士の年収は若手でも600万円台、全体では1,100万円台と、高い水準にあると言えるでしょう。

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記事提供ライター

弁護士
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。

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