小話 ~多重会務者になろう~
- INDEX
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1.多重会務者とは何者なのか
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2.そもそも会務とは何か
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3.東京の会務への無関心
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4.多重会務者のメリット
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5.戦略的多重会務者のススメ
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記事提供ライター
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サイト運営会社:株式会社C&Rリーガル・エージェンシー社
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1.多重会務者とは何者なのか
2.そもそも会務とは何か
ところで、ほとんどの弁護士は、たまに委員会に出席するだけで会務を果たしたつもりになっています。そして、委員会など議論を行うだけで何の役にも立っていないと主張します。しかし、委員会は、活動方針の決定や、必要な決議を行うための場に過ぎません。筆者は、複数の委員会で、司会や趣旨説明のために毎回出席を強いられていますが、それ以上に委員会に上程する議案の準備に時間を取られています。無給なのに毎月数十時間が奪われており、いつ仕事をしているのか、自分でも不思議です。
3.東京の会務への無関心
東京に移った筆者は会務への温度差に驚きました。委員会に出席すると、多重会務者オーラを発している同類が、どなたか会務をお手伝いしていただける方はいらっしゃいませんか、とおそるおそる声がけし、皆が聞かない振りをしているのです。先輩方も、新人の顔を把握していないので、わかっているよね、と圧力をかけることができない様子です。結局いつも、ご協力いただける方はメールをください、と言って委員会は終わります。
東京に来たばかりの筆者は、多重会務はもうこりごり、けれど他人に負担を押し付けることは心苦しい、だから会務の総量を頭数で割った量をやや上回るだけ会務をしようと考えていました。東京は弁護士が多いので、皆でシェアすれば大した負担にはならないはずです。そこで、ある軽作業のボランティア募集にメールで参加の意思表示をしました。シャイな筆者は委員会では手を挙げられませんでしたが、同類は他にもたくさんいると思っていました。
いませんでした。
筆者は頼まれると断れない奴認定されてしまい、またも多重会務者へと転落しました。しかも、いつの間にか筆者の会務負担は地方都市時代よりも増えてしまいました。東京はおっかねえところです。
4.多重会務者のメリット
弁護士の知り合いが増えることも多重会務者のメリットです。一緒に会務を行えば、顔と名前が一致するだけでなく、事務処理能力やひととなりもおおよそ把握できます。ある先輩が、弁護士の最大の顧客は同業者だと話していましたが、会務を通じて、多くの弁護士から、この弁護士にならば安心して顧客を紹介できると思ってもらえれば、売上に結びつきます。もちろん、仕事に悩んだ際の相談相手が増えることもメリットです。同じ相談をするにも、そのための場をセッティングする心理的なハードルは高いですが、会務の後の懇親会でならば、軽い気持ちで質問できます。弁護士が懇親会を好むのは、持ち込まれた質問に関する議論を通じて、スキルアップが果たせるからでもあります。
会務の一番の問題は、適度な負担にとどめることが難しいことです。無給だからと手を抜くことは許されません。弁護士会の名前で下手を打ってしまえば、業界全体の信用が害されるからです。そのため、重要な会務は、能力人格共に信用できる弁護士にしか任せられません。
しかし、この問題はチャンスにも結び付きます。筆者ら泥沼の先住民の多くは、およそ積極性を持ち合わせていないので、元気よく泥沼に飛び込み委員会で率先して手を挙げて一定の能力を示せば、弁護士会の肩書も人脈も簡単に手に入ります。筆者ら泥沼の先住民としても、新たな身投げがあれば負担が分散するので、どうぞどうぞの精神でお迎えします。キャリア形成に資する上に人助けができるだなんて、もはや多重会務者にならない理由がありません。
5.戦略的多重会務者のススメ
記事提供ライター
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。
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