【弁護士向け】キャリアに活かせる「自己分析」の方法とは|弁護士に特化したエージェントがオススメする自己分析手法を実例を踏まえて解説
- INDEX
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自己分析とは何か
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なぜ自己分析が必要なのか
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自己分析のタイミング
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自己分析の方法
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「どんな案件に心が動くのか」を見つける
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まとめ
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「自分のキャリア、ちゃんと言語化できますか?」
この質問に即答できる弁護士は、実は多くありません。
順調に働いている人ほど、「今のままでいいのか」を立ち止まって考える機会がないからです。
しかし、5年後・10年後を見据えたとき、「なんとなく選んできた」積み重ねと、「自分の軸で選んできた」積み重ねでは、キャリアの質がまったく変わります。
自己分析は、転職活動のためだけの作業ではありません。
むしろ、今のキャリアに迷いがない人こそ、未来の選択を誤らないために必要な「思考の整理」です。
自己分析とは何か
自己分析とは、過去の経験・価値観・感情・行動の傾向を丁寧に整理し、「自分はどんな働き方を望むのか」「どんな環境で力を発揮するのか」という「自分の取扱説明書」を作る作業です。
転職や就職活動の場面だけでなく、
・部署異動
・分野転換
・キャリアの岐路
・生活の変化
といった人生の分岐点で役に立つため、本来は「いつでも」「日常的に」行ってよいものです。
「就活生っぽい」「転職を考えている人がやるもの」と思われがちですが、それは大きな誤解。むしろ、順調に働いている今だからこそ、客観的に自分を見つめ直せるのです。
なぜ自己分析が必要なのか
ここでは、なぜ自己分析が必要なのか、2つの視点で解説します。
■「なんとなく違和感」の正体を言語化する
自己分析では、まず自分のキャリアの軸が整理されます。
人は「自分のことは自分が一番よく分かっている」と思いがちですが、実際には曖昧なまま判断している部分が非常に多いものです。
たとえば、
「なんとなく今の仕事が合っていない気がする」
「思い描いていたキャリアと少し違う」
「転職したいわけじゃないけど、今の環境がベストか分からない」
こうした「漠然とした違和感」は、自己分析で過去の経験や価値観を整理することで、原因が見えてきます。原因が見えれば、自然と進むべき方向も定まっていくでしょう。
■転職活動の「下地」にもなる
さらにもう1つ、自己分析は「転職活動の下地」になります。
・自己PR
・職務経歴書の作成
・求人選定
・面接の受け答え
・内定承諾
すべて「自分の軸」があるかどうかでクオリティが大きく変わります。
軸がある人は、応募先に合わせて表現を工夫しつつも、ぶれずに「自分が大事にしたいこと」を基準に判断できます。
結果として、選択の後悔が少なくなります。
逆に軸がないと、「条件がいいから」「なんとなく有名だから」という理由で選んでしまい、入社後にミスマッチが起きやすくなります。
自己分析のタイミング
自己分析は、「さあ転職しよう」と決めた瞬間だけにやるものではありません。むしろ、日常の中で少しずつやっておくこと、そして節目のタイミングでしっかり時間を取ることの両方が大切です。
自己分析が役に立つ場面は、大きく3つあります。
① 実は「いつでもいい」――日常の中で少しずつやる自己分析
一番もったいないのは、「まとまった時間がないから、自己分析はまた今度でいいか」と先延ばしにしてしまうことです。
自己分析の入り口はもっと軽くてよくて、たとえばその日あった出来事に対して、
・今日は何をしているときに一番集中できたか
・どんな場面でストレスを強く感じたか
・どの瞬間に「これはちょっと違うかも」とモヤッとしたか
を、ほんの数行メモしてみるだけでも十分「自己分析」になります。
こうした「日常メモ」が、いざ本格的に自己分析するときに大いに役立つのです。
② キャリアを見つめなおしたくなったとき
次が、いわゆる「キャリアを見つめなおしたい時期」です。これは、転職を決めた瞬間だけを指しているわけではありません。
・今の事務所・会社でこのまま進んでいくべきか、ふと不安になる
・業務には慣れてきたけれど、「本当にここでいいのかな」と感じる
・昇進や異動、担当領域の変更などの話が出てきて、「この先」を考えざるをえない
・ライフイベント(結婚・出産・介護など)とのバランスを意識し始めた
こうしたタイミングは、「価値観がアップデートされつつあるサイン」です。
この時期にじっくり自己分析に向き合うと、単に「不満を解消したい」だけでなく、
・自分が何にやりがいを感じているのか
・何に対して「違和感」覚えているのか
・この先10年をどう過ごしたいと思っているのか
といった、より長期的な視点でキャリアを考えられるようになります。
③ 転職活動の準備~選考中
3つ目は、いよいよ 転職活動を本格的に考え始めたタイミングです。
多くの人は、職務経歴書を書き始めてから慌てて自己PRを考えたり、エージェントに「どんな求人が合うと思いますか?」と聞いたりしますが、本来はその少し手前、
「転職しようか迷っている段階」から自己分析を始めておくのがおすすめです。
・職務経歴書を書く前に、自分の経験をできるだけ細かく棚卸しする
・応募先を選ぶ時に、「なんとなく条件が良さそう」ではなく、自分の軸と照らして見る
・面接後に、「聞かれたこと」「うまく答えられなかったこと」に加え、面接官の反応(相手からどう見られたか)や、自分が応募先に抱いた印象(カルチャーフィット)も自己分析の材料として振り返る
こうして、「自己分析→応募・面接→フィードバック→もう一度自己分析」というサイクルを回せると、回数を重ねるごとに
・自分の言葉で話せるエピソードが増える
・「ここは違う」「ここは合いそう」という感覚が研ぎ澄まされる
・内定の有無にかかわらず、「次に活きる学び」が毎回残る
という状態になっていきます。
自己分析の方法
自己分析は、書き出す/深掘りする/分類するの3ステップが基本です。
自己分析を深めるための手順は複雑ではありません。大切なのは、「手を動かすこと」と「深掘りを恐れないこと」です。
① 自分史を書き出す
自分が生まれてからできるだけ長いスパンで「どんな出来事があったか」を書き出します。
・学生時代の出来事
・アルバイト経験
・サークルや部活
・就職後の経験
・プライベートでの挑戦
など、仕事に関係なさそうなことほど「価値観の源泉」が隠れています。
あるいは、「楽しかったこと」「つらかったこと」「頑張ったこと」など、喜怒哀楽のテーマごとにできごとを書きだしていってもよいでしょう。
② 出来事を深掘りする
書き出した出来事ごとに、次を丁寧に考えます。
・何が起きたか
・どう感じたか
・なぜそう感じたか
・どう行動したか
これは、ひたすら「なぜ」を繰り返す作業です。
このプロセスで、自分の行動パターン・思考の癖・価値観の傾向が浮かび上がります。
飾る必要は一切ありません。ありのまま書くほど「自分の核」が見えます。
③ 職務経歴を細分化する
ここがキャリアの自己分析において最重要です。
仕事を「ざっくり振り返る」のではなく、粒度を細かくして棚卸しします。
・どんな役割を担ったか
・何が成果だったのか
・評価された点/されなかった点
・自分なりの工夫
・しんどかった理由
ここから、あなたが大切にしている価値観や働き方が見えてきます。
たとえば、次のような具合です。
・ どんな役割を担ったか
リーダーとしてチームをまとめる役割を任された。
・何が成果だったのか
チームの進行がスムーズになり、業務が予定より早く進んだ。
・評価された点/されなかった点
調整力は評価されたが、意思決定のスピードに課題があると言われた。
・自分なりの工夫
タスクの見える化や、こまめな情報共有でメンバーを動かしやすくした。
・しんどかった理由
管理と自分の担当業務の両立で負荷が大きかった。
→以上から、「リーダーシップを発揮できる環境が合っているが、過度な業務負荷は避けたい」ということがわかった。
④ 好き・嫌いで分類する
深掘りした経験を好き/嫌いで分けます。理由も必ずセットで書くと、後のステップが格段に楽になります。
⑤ 業務をさらに細分化して「なぜ」を探る
契約書審査を例にすると、
受付→情報収集→条項理解→リスク洗い出し→修正案検討→交渉→締結→保管→履行管理
というように、業務は分解できます。
このそれぞれについて、
「なぜ好き/嫌いなのか」
「なぜ得意/不得意なのか」
を言語化します。
すると、「得意だから好き」ではなく「夢中になれるから強みになる」という感覚が得られます。
不得意でも夢中になれるものは、将来の強みに変わります。
⑥ 自分はどう働きたいのか?
ここまでの整理をもとに、
・得意なことを仕事にしたいのか
・夢中になれることを軸にしたいのか
・成果を出しやすい環境を優先したいのか
・ワークライフバランスを重視したいのか
「働き方の価値観」を言語化します。
⑦ 将来像を描く
5年後・10年後の理想像を明文化します。
現状とのギャップがあるなら、「どうすれば近づけるのか」を考えることが、行動計画につながります。
⑧ キャリア軸が明確になる
以上のプロセスで見えてくるのが、あなたのキャリアの中心となる「軸」です。
1つではなくて構いません。複数あっても最終的に「選ぶ基準」として機能すればOKです。
「どんな案件に心が動くのか」を見つける
弁護士の働き方は、扱う分野・事務所文化・顧客層・案件の濃さで全く変わります。一般民事と企業法務では求められる能力も忙しさも違い、刑事と家事でも「やりがいの源泉」が違います。
そのため、「どんな案件に心が動くのか」「どんな文化が自分に合うのか」を自己分析で把握しておかないと、入所後のギャップが大きくなります。
■分野だけでなく「案件の濃さ」も見る
たとえば、
・1つの案件に深く長く関わりたい
M&A、訴訟、事業再生など
・多様な案件を広く浅く経験したい
スタートアップ支援、一般企業法務など
・定型業務が中心でも安定していたい
契約書レビュー、労務相談など
どのタイプが自分に合うのかは、過去の経験を振り返ることで見えてきます。
修習中の起案や実務修習で「どの分野で時間を忘れて没頭したか」「逆にどの分野で苦痛を感じたか」を丁寧に振り返ると、ヒントが得られます。
■事務所文化との相性も見逃せない
また、弁護士の働き方は事務所文化に大きく左右されます。
・チームで協働するスタイルが好きか、一人で完結するスタイルが好きか
・指導を受けながら成長したいか、自分で試行錯誤しながら進みたいか
・専門性を深めるか、幅広い分野を経験するか
こうした「働き方の好み」は、自己分析で言語化しておくと、事務所選びの軸になります。
まとめ
自己分析は、「転職迷子のための作業」ではありません。
むしろ、順調に働いている今こそやるべき「未来への投資」です。
一度取り組んで終わりにするのではなく、定期的に見直していくことがより効果的です。
業務内容は数年たつとすぐに記憶から抜けてしまいますし、価値観も自然と変化していきます。そのため、日々の中で気づいたことを軽くメモしておき、年に一度まとめて棚卸しするという「二段階」で取り組むのがおすすめです。
自己分析を重ねていくことで、日々の意思決定がしやすくなるというメリットもあります。
自分が何を大切にしたいのかが明確になるため、業務での判断はもちろん、キャリアの選択やプライベートの過ごし方まで迷いが減ります。また、思考整理や言語化の“癖”がつくことで、自分の考えを相手に伝えやすくなり、コミュニケーションがスムーズになります。
とはいえ、自分の強みをうまく言語化できなかったり、考えが堂々巡りになったりと、一人で自己分析に取り組むことに限界を感じる瞬間も少なくありません。
特に、弁護士のキャリアは業界特有の視点も絡むため、客観的なフィードバックや第三者の視点が効果的です。
C&Rリーガル・エージェンシー社では、弁護士・修習生のキャリア支援に特化したキャリアアドバイザーが、あなたの自己分析の壁打ちから、キャリアの方向性整理、求人紹介、面接対策まで丁寧にサポートします。
自己分析に行き詰まったとき、誰かに話したくなったときは、ぜひ一度ご相談ください。