弁護士の「個人受任」とは?副業との違いや働き方・実現方法をわかりやすく解説
- INDEX
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弁護士の「個人受任」とは?基礎知識と他の働き方との違いを解説
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どんな弁護士が個人受任しているのか?多様な働き方の実例
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個人受任の案件はどこから来る?主な獲得ルート
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個人受任のメリットとは?キャリアの選択肢が広がる理由
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デメリット・注意点|「自由で稼げる」だけではない現実
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個人受任は誰でもできる?向いている人・準備すべきこと
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個人受任を成功させるためのコツ
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個人受任を実現するには?現実的なキャリアルート
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まとめ
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弁護士の働き方は、近年ますます多様化しています。インハウスや業務委託、独立開業など、キャリアの選択肢は広がり続けており、「事務所に所属して案件をこなすだけ」という時代は変わりつつあります。
その中で、あらためて注目されているのが「個人受任」という働き方です。個人受任自体は新しいものではなく、これまでも多くの弁護士が行ってきました。収入や専門性、将来の独立を見据えたキャリアの一つとして、関心が高まっています。
一方で、個人受任は自由度が高い反面、責任やリスクも伴います。事務所との関係や利益相反の問題、案件管理や営業の負担など、事前に理解しておくべきポイントも少なくありません。
本記事では、個人受任に興味がある方に向けて、基本的な考え方から働き方の実態、メリット・注意点、実現方法までを整理して解説します。
弁護士の「個人受任」とは?基礎知識と他の働き方との違いを解説
まずは個人受任の基本的な考え方と、似て非なる働き方との違いを整理しておきましょう。
個人受任とは
個人受任とは、事務所から割り当てられた案件ではなく、弁護士が自分の名前で主体的に事件を受けることを指します。依頼者との関係構築から受任の判断、業務の遂行、報酬の管理までを自分で担う点が特徴です。
ただし、多くの場合、完全に自由に行えるわけではありません。所属事務所ごとにルールが定められており、事前の許可や報酬の分配などが求められるケースもあります。あくまで事務所との関係の中で認められる働き方である点を、まず押さえておく必要があります。
事務所事件・独立との違い
個人受任の位置づけを理解するためには、事務所事件や独立との違いを押さえておくことが重要です。
事務所事件は、案件の受任や顧客管理を事務所が主導し、弁護士は担当者として業務を行います。営業や報酬管理の負担は比較的少ない一方で、案件の選択や進め方には一定の制約があります。
独立開業の場合は、営業・集客・経理・事務管理を含めてすべてを自分で担う必要があります。自由度は最も高いですが、その分リスクや負担も大きく、収入が安定するまでには時間がかかることも少なくありません。
個人受任はその中間に位置します。事務所に所属しながら自分で案件を獲得・管理するため、事務所のサポートを受けつつ、裁量を持って動くことができます。完全独立に比べてリスクを抑えながら、自分のペースで経験を積める点が特徴です。
副業との違い
個人受任は副業と混同されることもありますが、その性質は異なります。
副業は執筆や講師、コンサルティングなど弁護士業務以外の活動も含まれますが、個人受任はあくまで弁護士として案件を受任する行為、つまり弁護士業務そのものです。
そのため、個人受任を行う場合、利益相反の問題や守秘義務、懲戒リスクが直接関わります。所属事務所の規定や許可の有無も重要であり、副業と同じ感覚で始めてしまうとトラブルにつながるおそれがあります。
個人受任の具体例
個人受任の内容はさまざまですが、実務では比較的取り組みやすい案件から始めるケースが多く見られます。
たとえば、企業法務の分野では、スタートアップや中小企業から依頼を受けて、契約書のレビューや利用規約の作成、日常的な法律相談に対応するケースがあります。継続的に相談を受ける関係からスタートし、その後、顧問契約に発展することも少なくありません。
一方、一般民事では、離婚や相続、債務整理といった比較的定型化された案件を、知人や既存の人脈からの紹介をきっかけに受任するケースが多く見られます。
どんな弁護士が個人受任しているのか?多様な働き方の実例
個人受任は一部の弁護士だけがするものではありません。キャリアの段階も動機もさまざまな弁護士が、それぞれの理由で個人受任をしています。
収入を補完したい人
事務所の給与だけでは物足りない、もう少し収入を上乗せしたいと考える弁護士が、個人受任を始めるケースは多くあります。
特に、事務所の業務をこなしながら「もう一本、自分の収入源を持ちたい」という意識が高まったタイミングで、個人受任に踏み出す人が多い印象です。
独立を見据えている人
将来的に独立を考えているものの、いきなり独立するのはリスクが大きい。そう考える弁護士が、事務所に所属しながら段階的に準備を進める手段として個人受任を選ぶことがあります。
顧客基盤を少しずつ作りながら、独立に向けた足場を固めていくイメージです。
専門分野を深めたい人
事務所の業務だけでは扱う機会が少ない分野に関心がある弁護士が、個人受任を通じてその分野の経験を積もうとするケースもあります。事務所の方針に縛られず、自分が興味を持てる案件を選べる点が、こうした弁護士にとっての魅力です。
ライフスタイル重視の人
育児や家庭の事情で稼働時間に制約がある中でも、実務には関わり続けたいと考える弁護士が、自分のペースで受任できる個人受任を選ぶことがあります。契約書のチェックや法律相談など、時間や場所に縛られにくい業務であれば、家事や育児の合間に自宅で対応するといった働き方も十分現実的です。
個人受任の案件はどこから来る?主な獲得ルート
「どうやって案件を取るのか」は、個人受任を検討するうえで多くの人が気になるポイントです。特別な営業手法があるというよりも、既存の人脈や関係性を起点に案件が広がっていくケースがほとんどです。
知人・紹介
個人受任の最も一般的な入口は、知人や紹介を通じた相談です。
たとえば、友人や知人から法律相談を受けたことをきっかけに、そのまま受任に至るケースや、修習同期や過去の同僚、他の弁護士から案件を紹介されるケースがあります。また、他の弁護士と共同受任の形で関与することも、個人受任の一つの形です。
こうした紹介ベースの案件は、一定の信頼関係を前提としているため、受任につながりやすい傾向があります。
他士業・ビジネスネットワーク
税理士や社労士、司法書士など、他士業からの紹介も重要なルートの一つです。
日常的に企業や個人の相談に接している士業は、法的対応が必要な場面で弁護士を紹介することが多く、継続的な案件につながる可能性があります。
経営者ネットワークや異業種交流会を通じた関係構築も、案件の入口になることがあります。
インターネット経由
近年では、インターネットを通じて案件を獲得するケースも増えています。
たとえば、法律相談や弁護士検索を目的としたポータルサイトに登録することで相談を受けたり、スキルマーケット型のオンラインサービスを通じて受任につながることもあります。
また、事務所のホームページとは別に、個人のホームページやSNSで情報発信を行い、そこから問い合わせにつなげている弁護士もいます。
もっとも、こうした手法は継続的な発信や工夫が必要であり、すぐに成果が出るとは限らない点には注意が必要です。
事務所・周囲からの派生案件
所属事務所や周囲の弁護士から案件を紹介されることもあります。
たとえば、事務所で対応しきれない案件を任されたり、代表弁護士や先輩弁護士から直接個人事件を回してもらうこともあります。困ったときにサポートを求めやすい環境でもあるため、個人受任を始めるきっかけとして最適です。
個人受任のメリットとは?キャリアの選択肢が広がる理由
個人受任には、自由度の高さや収入面の魅力など、さまざまなメリットがあります。
収入を増やせる
事務所の給与とは別に報酬を得られるのは、個人受任の大きな魅力のひとつです。
受任する案件の数や種類を自分でコントロールできるため、無理のない範囲で収入を上乗せしていくことができます。取り組みやすい案件を継続的に受けるだけでも、安定した収入源になることがあります。
また、成果がそのまま報酬に反映されるため、工夫や努力が収入に直結しやすいのも個人受任ならではです。
専門性を磨ける
個人受任では案件を自分で選べるため、興味のある分野に絞って経験を積むことができます。事務所の業務ではなかなか扱えない分野でも、個人受任を通じて実績を作っていくことが可能です。
特定の分野で強みを持ちたいと考えているなら、個人受任はその近道になりえます。
独立の準備になる
個人受任は、独立を見据えた準備としても有効です。
案件の獲得から受任判断、業務の遂行、報酬管理までを自分で行うことで、独立後に必要となる実務経験を積むことができます。さらに、継続的な案件や顧問先を確保できれば、個人受任だけで一定の収入が見込める状態を作ることも可能です。
事務所に所属しながらリスクを抑えて独立の準備ができる点は、個人受任ならではのメリットといえます。
働き方の自由度が上がる
個人受任では、案件の種類や量、スケジュールを自分で調整することができます。そのため、事務所の業務に加えて無理のない範囲で取り組むことができるほか、ライフスタイルに合わせた働き方を実現しやすい点も魅力です。
キャリアの方向性に応じて働き方を柔軟に選べることは、個人受任ならではのメリットといえます。
デメリット・注意点|「自由で稼げる」だけではない現実
個人受任には多くのメリットがある一方で、見落とされがちなリスクや負担も存在します。
営業・案件獲得の難しさ
個人で案件を受任するためには、自ら案件を獲得する必要があります。
事務所事件とは異なり、待っていれば案件が来るわけではなく、人脈づくりや関係構築を通じて相談の機会を増やしていかなければなりません。特に始めたばかりの段階では、思うように案件が増えないこともあります。
安定的に案件を確保するためには、紹介やネットワークを通じた信頼関係の積み重ねが不可欠です。
コンフリクト・懲戒リスク
個人受任では、利益相反や守秘義務といったリスクを自ら管理する必要があります。
事務所事件であればチェック体制が整っていることも多いですが、個人受任では自分自身で判断しなければならない場面も増えます。
判断を誤ると、トラブルや懲戒につながる可能性もあるため、慎重な対応が求められます。
個人受任のコンフリクトに関しては、こちらの記事もご参照ください。
事務所ルールとの関係
個人受任は、所属事務所のルールのもとで行う必要があります。
事前の許可が必要な場合や、報酬の分配が定められている場合もあり、無断で個人受任を行うとトラブルにつながるおそれがあります。
事務所との関係を良好に保つためにも、ルールの確認と事前の相談は不可欠です。
管理業務の負担
個人受任では、案件処理だけでなく、付随する事務作業も自分で対応する必要があります。
たとえば、請求書の発行や入金管理、契約書の作成、スケジュール管理など、細かな業務も発生します。
事務所のサポートを受けられるかどうかによって、負担の大きさは大きく変わる点にも注意が必要です。たとえば、事務員を個人事件でも活用できる場合には、事務作業の負担を軽減することができますが、すべて自分で対応する必要がある場合には、その分の手間も見込んでおく必要があります。
時間管理の難しさ
事務所業務と個人受任を並行して行う場合、時間の使い方が重要になります。
案件が増えるほど対応に追われやすくなり、本業とのバランスが崩れてしまうこともあります。
無理のない範囲で受任することや、優先順位を意識したスケジュール管理が求められます。
案件選びの重要性
個人受任では、どの案件を受けるかの判断も自分で行う必要があります。見通しが立ちにくい案件や、対応に多くの時間と労力を要する案件を安易に受任してしまうと、トラブルや負担の増大につながるおそれがあります。
事務所によっては、個人事件についてパートナーが判断に関与する仕組みを設けている場合もあります。
これは制限というよりも、リスク管理や身の守り方を教えるという意味合いが強く、こうした環境は個人受任を安全に続けるうえで大きな安心感につながります。
個人受任は誰でもできる?向いている人・準備すべきこと
個人受任は特別な弁護士だけが行うものではありませんが、向き不向きがあるのも事実です。また、実際に始めるにあたっては、事前に確認しておくべきポイントもあります。
ここでは、どのような弁護士が個人受任に向いているのか、そして始める前に準備しておきたい点を整理します。
向いている人
個人受任に向いているのは、単に実務能力があるだけでなく、主体的に案件を動かせる素養を持っている人です。
まず重要なのが、人脈や関係構築への姿勢です。既存のつながりがある人はもちろん、新たな関係を積極的に築いていける人は、案件獲得の面で有利です。営業的な動きを継続できるかどうかも、長く続けるうえで大きな差になります。
また、案件の進行・スケジュール・収支をすべて自分で管理する必要があるため、自己管理能力も欠かせません。特定の分野への関心や専門性を深めたいという意欲があれば、個人受任を通じてその強みをさらに伸ばしやすくなります。
見落とされがちですが、所属環境も大きく影響します。個人事件でも所属事務所の事務員のサポートを受けられる、経験豊富な弁護士に相談できるといった環境があれば、個人受任のハードルはぐっと下がります。一人で完結する仕事に見えて、実際には周囲のサポートをどう活かせるかで難易度が大きく変わるのが個人受任です。
向いていない人
一方で、個人受任にあまり向いていないケースもあります。
営業や人との関係構築に強い抵抗がある場合、案件獲得の段階でつまずきやすくなります。
すでに事務所業務で手一杯の状態であれば、無理に個人受任を増やすことで負担が過大になるおそれもあります。
また、案件の受任判断やクライアント対応の経験が十分でない場合、トラブルのリスクも高まります。
今すぐ個人受任を始めるのが難しい状況であれば、まずは現在の業務の中で主担当として動く機会を増やし、クライアント対応や判断経験を意識的に積んでいくことが先決です。
まず確認すべきこと
個人受任を始める前に、まず「自分一人で完結できる業務領域があるか」を確認しておきましょう。どのレベルの案件なら単独で対応できるかを把握しておくことが、スムーズなスタートにつながります。
あわせて、主担当として案件を動かした経験や、クライアントと直接やり取りした経験がどの程度あるかも確認しておきたいところです。個人受任ではこうした経験がそのまま実務に活きてきます。
分野の決め方
扱う分野はある程度絞っておくのが得策です。これまでの実務経験と自分の関心を掛け合わせながら、まずは1〜2分野に軸を定めてみましょう。
そのうえで、「どんな人の、どんな悩みを解決できるか」を言語化し、周囲の人や他士業に伝えておきましょう。自分の得意領域が相手に伝わることで、的確な相談や紹介につながりやすくなります。
個人受任を成功させるためのコツ
案件を受けるだけでなく、それを継続していくことが個人受任では重要です。長く続けるために意識しておきたいポイントを整理します。
紹介される人になる
個人受任の多くは、知人や他士業からの紹介をきっかけに始まります。だからこそ、目の前の案件に丁寧に向き合い、「また頼みたい」「知り合いにも紹介したい」と思ってもらえることが何より大切です。一つひとつの対応の積み重ねが、次の案件を呼び込みます。
コミュニティに入る
案件は待っているだけで増えるものではなく、人との関係性の中で生まれることが多くあります。
そのため、異業種交流会や士業ネットワークなどに参加し、日常的に接点を持つことが重要です。税理士や社労士など他士業とのつながりができると、継続的に案件を紹介してもらえるようになることもあります。
無理に営業をする必要はありませんが、「顔が見える関係」を築くことが結果的に案件獲得につながります。
専門性を明確にする
「何でも対応する」よりも、「この分野なら任せられる」と認識される方が受任につながりやすくなります。
これまでの経験や関心を踏まえ、自分の強みとなる分野を整理しておくことが重要です。特定の分野において継続的に案件を受けることで、専門性もさらに深まっていきます。
小さく始める
個人受任を行う際には、最初から案件を増やしすぎないことが重要です。
対応可能な範囲を超えて受任してしまうと、業務の質が下がり、クライアントからの信頼や評判を損なうだけでなく、本業である事務所事件にもしわ寄せが及ぶおそれがあります。
まずは無理のない範囲で始め、徐々に広げていくことが現実的です。
無理な案件を受けない
個人受任では、案件を受けるかどうかの判断も自分で行う必要があります。
見通しが立ちにくい案件や、対応に大きな負担がかかる案件を安易に受任してしまうと、トラブルや過度な負担につながるおそれがあります。
長く続けていくためには、案件を選ぶ視点を持つことが重要です。
事務所との連携
個人受任はあくまで本業と並行して行うものです。事務所の業務に支障が出ないよう、案件量や稼働のバランスは常に意識しておく必要があります。
事前に所属事務所のルールを確認し、必要に応じて相談しておくことで、余計なトラブルも防げます。
個人受任を実現するには?現実的なキャリアルート
個人受任は思い立ってすぐ始められるものではなく、環境やキャリアの積み重ねの中で実現していくものです。どんな選択肢があるのかを把握することが、最初の一歩になります。
個人受任可能な事務所へ転職
個人受任を左右する大きな要因のひとつが、所属事務所の方針です。事務所によっては個人受任が認められていなかったり、厳しい制限が設けられている場合もあります。
一方、個人受任を前提とした制度が整っている事務所であれば、ルールの範囲内で案件を受けながら経験を積むことができます。パートナーに個人事件の相談ができる体制があれば、リスク管理の面でも安心して取り組めます。
業務委託・柔軟勤務の案件
事務所勤務にこだわらず、業務委託や柔軟な勤務形態を選ぶことで、個人受任と両立しやすい環境をつくることもできます。週数回勤務や業務委託という形で一定の収入を確保しながら、個人受任に取り組む余地を持つというイメージです。
弁護士転職.jpでは、週1日からの業務委託求人や個人受任OKの求人も取り扱っており、こうした柔軟な働き方を実現するための選択肢を探すことができます。
エージェントを活用する
個人受任を見据えるなら、自分に合った環境を見極めることが重要です。とはいえ、個人受任が可能な事務所や柔軟な働き方ができる求人は、表に出ている情報だけでは判断しにくいことも多いです。エージェントを活用することで、条件に合った選択肢を効率よく整理することができます。
「まだ自分には早いかもしれない」と感じている場合でも、今不足している経験や段階的なキャリアの進め方を客観的に整理する機会として活用できます。
まとめ
個人受任は、一部の特別な弁護士だけの働き方ではなく、多くの弁護士にとって現実的な選択肢のひとつです。向き不向きだけで判断するものでもありません。正しい準備と適切な環境選びがあれば、誰でも現実的なキャリアの選択肢として考えられます。
自由度が高い分、営業・リスク管理・環境選びなど考慮すべき点も多くあります。自身のキャリアや現在の環境を踏まえながら、段階的に検討していくのが現実的です。
準備と環境が整えば、個人受任は収入・専門性・働き方の幅を広げる有効な手段になります。キャリアの選択肢のひとつとして、ぜひ検討してみてください。