業界トピックス

弁護士の個人受任はコンフリクトに要注意!

目次
  • 1.ウハウハのベテランアソシエイト

  • 2.個人受任積極主義と消極主義

  • 3.増えてきたノキ弁・共同事務所とコンフリクト(利益相反)の危険

  • 4.まとめ

  • 記事提供ライター

  • サイト運営会社:株式会社C&Rリーガル・エージェンシー社

1.ウハウハのベテランアソシエイト

筆者の新人時代、そろそろ20年選手というベテランの弁護士が、所属法律事務所でイソ弁、今でいうアソシエイトをしており、他の先輩方から、こいつはずるいやつなんだと新人たちに紹介されていました。

振り返ると著しいプライバシー侵害なのですが、そのベテラン弁護士は、年齢50歳くらい、年俸800万円の新婚でした。今も当時も、50歳くらいの20年選手で年俸800万円というのは、弁護士として決して高いとは言えない給与水準です。しかし、そのベテラン弁護士は、軽く1,000万円以上を個人受任で稼いでおり、とても良い暮らしぶりをしている上に、新婚でした。当時はよくわからずに、他の先輩たちがその先輩をいじっている様子を見ていましたが、今になって思い返すと、新婚という部分に強い怒りを覚えます。

ここでは、そのベテラン弁護士が、なぜ結婚できたのか、個人受任について考えます。

2.個人受任積極主義と消極主義

法律事務所によって、そこで勤務するイソ弁やアソシエイトによる個人受任への態度は大きく異なります。弁護士としての仕事の幅を広げるため、また、自分で仕事を獲得する営業力を身につけてもらうため、個人受任を積極的に推奨する法律事務所も多数存在しています。法律事務所によって割合は異なるのですが、個人受任で得た売上の0割から5割を、経費負担として所属法律事務所に収めることになります。0割以外の場合、イソ弁が個人事件を取ってきてくれれば、所属法律事務所の資金繰りも楽になるという側面もあるのでしょう。

逆に、個人受任に消極的、あるいは個人受任を禁止している法律事務所も多数存在しています。その理由は、単純に、個人事件に時間をかける余力がないまで事務所事件に注力して欲しいという場合もありますが、大規模な法律事務所になると、多数の顧問先を抱え、多数の依頼者がいるため、コンフリクトの発生可能性が高いという事情もあります。コンフリクトのネガティブチェックをするための許可制という法律事務所もありますが、ネガティブチェックに多大な労力が必要となるまでに巨大な法律事務所になると、端的に一律禁止という運用にも合理性があります。法律事務所によっては、類型的にコンフリクトが生じやすい労働事件は一律禁止、他は許可制、という運用がなされている場合もあります。

弁護士のキャリア形成支援サービス
 

3.増えてきたノキ弁・共同事務所とコンフリクト(利益相反)の危険

近年は、様々な理由から、自分の法律事務所を持つことができないが、勤務弁護士としても働けないという弁護士が、既存の法律事務所に、一定の経費を負担することを条件に在籍するという、いわゆるノキ弁が増えています。ノキ弁でなくとも、同じ境遇の弁護士同士が集まって、同じ屋号、同じ不動産物件、同じ固定電話番号で弁護士として稼働しながらも、実際には完全にバラバラに動いているという法律事務所も多数存在しています。ここでは、所属する弁護士が完全にバラバラに動いている法律事務所を、便宜的に、共同事務所と呼ぶことにします。

ノキ弁や共同事務所では、コンフリクトのチェック機能がありません。そのため、あらゆる事件について、多かれ少なかれ、コンフリクトの危険が伴います。ノキ弁が労働相談で受けてきた事件の相手方が、所属法律事務所の顧問先企業だった、ということはよくあることです。共同事務所の場合で、所属弁護士の注力分野がバラバラである場合には、他の所属弁護士が顧問弁護士となっている企業に対する集団訴訟を、別の所属弁護士が主導してしまったという事例も、実際にありました。

コンフリクトはイソ弁やアソシエイトの個人受任でも生じ得る問題なのですが、イソ弁やアソシエイトは、個人受任が許可制ではなかったとしても、所属法律事務所の顧問先や係属事件を自ら把握していることもありますし、そうでなくとも、ボス弁に事前に相談するように訓練を受けていることが通常です。法律事務所の規模が大きくなり、自発的なチェックでは不十分であると判断された場合には、許可制や一律禁止へと移行します。同じ個人受任であっても、イソ弁や共同事務所では、コンフリクトが見逃されるリスクが格段に高くなるというのが実情です。

4.まとめ

個人受任で潤えば結婚が近づくのですが、所属法律事務所の事務所事件とどのように両立させるのか、また、コンフリクトをどうやって避けるのかが問題です。収入源として期待する場合には、経費負担の割合も考える必要があります。法律事務所への就職・転職を考える際には、安心して個人受任ができるかどうかも判断材料となります。C&Rリーガル・エージェンシー社は、法律事務所に精通したプロフェッショナル・エージェンシーとして、個人受任の可否や経費負担割合といった表に出づらい勤務条件についても調査しています。就職・転職をお考えの際には、お気軽にご相談ください。
転職支援サービス無料登録フォーム

記事提供ライター

弁護士
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。

サイト運営会社:株式会社C&Rリーガル・エージェンシー社

弁護⼠、法務・知財領域に精通したプロフェッショナルエージェンシーです。長きに渡り蓄積した弁護士・法律事務所・企業の法務部門に関する情報や転職のノウハウを提供し、「弁護士や法務専門職を支える一生涯のパートナー」として共に歩んでまいります。
企業概要>
サービス紹介>

日本のリーガルを牽引する弁護士、法律事務所/企業法務部の姿、次世代を担う弁護士を徹底取材した『Attorney's MAGAZINE』を発行。
『Attorney's MAGAZINE Online』>

C&Rリーガル・エージェンシー社による求人紹介はこちら

専任のエージェントがあなたの転職活動をサポート

転職エージェントサービスに申し込む(無料)

C&Rリーガル・エージェンシー社による求人紹介はこちら

専任のエージェントがあなたの転職活動をサポート

転職エージェントサービスに申し込む(無料)

TOP