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小話 ~弁護士とバッジの色~

目次
  • 1.ドラマを見ていたら

  • 2.弁護士バッジに関する基礎知識

  • 3.いぶし銀になりたい

  • 4.ボス弁の金言

  • 5.弁護士と弁護士バッジ

  • 6.筆者と弁護士バッジ

1.ドラマを見ていたら

ドラマに弁護士が登場するといつも金色のバッジを身に付けています。そのため、金バッジから弁護士を連想する人も多いと思います。

ところが、先日、あるドラマを見ていたら、新人弁護士のバッジは金色、ベテラン弁護士のバッジは銀色をしていました。筆者は、細かいところまできちんとこだわっているドラマだと感心しました。

今回は、筆者のバッジの色にまつわる思い出話となります。

2.弁護士バッジに関する基礎知識

弁護士バッジの正式名称は「記章」と言います。日本弁護士連合会会則29条2項本文には、「弁護士は、その職務を行う場合には、本会の制定した記章を携帯しなければならない。」と書いてあり、それが根拠です。

日本弁護士連合会の弁護士記章規則には記章の形状及び制式が定められていますが、バッジの材質は定められていません。筆者のバッジを改めて確認したところ、登録番号の他、「日本弁護士連合会員章」「純銀」「造幣局製」という刻印がありました。記章は純銀製で造幣局が作っているようです。

弁護士記章規則第3条第3項には、「弁護士から特に金製弁護士記章の交付の申出があるときは、連合会は、先に交付した弁護士記章と引換えに、これを、所属弁護士会を通じて、弁護士に交付することができる。」とあり、例外的に、希望して追加料金を支払えば、金製のバッジに交換することも可能です。しかし、金製のバッジにする弁護士は非常にレアなので、多くの場合、弁護士のバッジは純銀製に金メッキが施されたものです。

3.いぶし銀になりたい

弁護士業界では、バッジを使い込み、金メッキがはがれて純銀の下地が露出することをいぶし銀と呼びます。綺麗な銀色ではなく、細かな傷が乱反射して鈍く光る銀色であることがポイントです。

新人弁護士は、早くいぶし銀になりたいので、小銭入れにバッジを入れて痛めつけます。そんなことでいぶし銀になれるわけがないと思われるでしょうが、弁護士目線では金色のバッジはピカピカの一年生の証ですから、新人が、せめて見た目だけでも舐められたくないと思うのは無理からぬことでしょう。筆者もそんな新人でした。

4.ボス弁の金言

筆者が新人時代にお世話になったボス弁は、弁護士歴20年を超えるのに、それはそれは綺麗な金色のバッジを持っていました。金製ではなく金メッキがはげていませんでした。

筆者は、そんなボス弁に金メッキをはがそうとしているところを見とがめられ、こう言われました。もし相手方が、ボス弁のバッジを見て合格が遅い新人だと油断したならば、勝率が高くなる。わざわざ有利になれる可能性を手放すなど理解できない。

筆者は、ボス弁の飽くなき勝利への執念に感銘を受けました。油断されればプライドは傷つきますが、戦いはむしろ有利になります。ちっぽけなプライドを満たすためにわざわざ有利を手放そうとしていた自分を大いに恥じました。

その直後、ボス弁と筆者のやり取りを聞いていた事務員さんが、ボス弁は過去にバッジを紛失して、再発行にあたって始末書(弁護士記章規則第7条第2項)を書くことになったので、二度と紛失しないために必要なとき以外大切に保管しているだけだと教えてくれました。

本音がどうであれ、筆者はボス弁の金言を受けて、金色のバッジは決して恥ずかしいものではないと考えるようになりました。むしろ、金メッキがはがれないようにバッジを大切に扱おうと心に誓いました。

5.弁護士と弁護士バッジ

ところで、ドラマの中の弁護士はいつもバッジをつけていますが、実際の弁護士は、いつもバッジをつけているわけではありません。弁護士たるもの、弁護士会の会則を把握し、これに従うことは当然の責務です(弁護士法22条)。そういうわけで、先に掲げた日本弁護士連合会会則29条2項をよく見てみましょう。「弁護士は、その職務を行う場合には、本会の制定した記章を携帯しなければならない。」つまり、弁護士は、職務を行う際にも、バッジを携帯していれば足り、着用する必要はないのです。

弁護士が職務を行う中でバッジを必要とするのは、裁判所に入るときです。裁判傍聴をしたことがある方は知っていると思いますが、東京地方裁判所の入口は一般と弁護士で分かれており、一般の入口を通ると荷物検査を受ける必要があります。弁護士の入口では荷物検査がない代わりにバッジを示す必要があります。

6.筆者と弁護士バッジ

筆者は、ある出版社からいただいたケースにバッジを固定して、裁判所に入る時だけ、ぱかっとケースの蓋を開いてバッジを見せています。かなり恥ずかしいのですが、金メッキを保つために恥ずかしさに耐えています。一旦裁判所に入ってしまえば、法廷ではバッジを示す必要はありません。

ここまで書いていてようやく気づいたのですが、法廷で相手方と向き合う際には、筆者のバッジはカバンの中のケースに大切にしまわれています。相手方に油断してもらうための金メッキを見せつける機会がありません。

なんかもう弁護士バッジの色などどうでもよくなってきました。ただ、せっかくここまで頑張ってきたのですから、筆者の死後に弁護士会に返還される(弁護士記章規則第5条第1項本文第7号)まで金メッキがはがれないように保ち、せめて弁護士会の受付で驚いてもらおうと考えています。筆者の心はステイゴールドです。

記事提供ライター

弁護士
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。

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