転職ノウハウ

食事会(会食)形式の面接への備え方

目次
  • 1.はじめに

  • 2.食事会(会食)形式の面接とは

  • 3.最低限の心得

  • 4.弁護士業界で聞いた怖い話

  • 5.おわりに

1.はじめに

法律事務所への就職活動や転職活動をしていると、次回面接は食事会(会食)形式になると伝えられることがあります。ところが、対策を調べようとしても、情報が少なく、対応に困るのではないでしょうか。ここでは、そもそも食事会(会食)形式の面接とは何なのか、何が目的で何を見られているのか、どのように備えれば良いのか、について筆者が他の弁護士から聞いた限りを紹介します。

2.食事会(会食)形式の面接とは

ひとくちに食事会(会食)形式の面接といっても様々なパターンがあります。オーソドックスなのは、応募側の参加は自分一人というパターンです。二次面接以降であれば、採用選考は前向きに進んでおり、相性や人生観、仕事観を共有できるかを問われていると考えて良いでしょう。一次面接からいきなりという場合には、採用側が多忙で面接の時間を惜しんでいる場合も、話好きお酒好きで誰とでも食事をしたがるだけという場合もあります。応募者が法律事務所から遠方に居住している場合には、移動を労うためにご馳走しようと考える場合もあります。

特に司法修習生の就職活動では、複数の応募者が一斉に集められ、応募先法律事務所との食事会をするパターンもあります。採用側の目的は様々ですが、少しでも気楽な状態で本音を引き出したいと考えていることが通常です。この他にも、忙しいので面接のための時間を作れず、食事の時間を面接にあてている場合もあります。応募者の誰もが自己アピールをしたがっている中で、他人の発言を遮らず、しかし自分の意見をしっかり伝えることができるかが見られている場合もあります。もちろん、複数の理由が合わさっている場合もあります。

時には、面接終了後に食事に誘われる場合や、食事会(会食)形式だと伝えられていないのに、突然、食事をしながら面接しようと誘われる場合もあります。このパターンは採用側の目的が最もわかりにくく、気に入ったから食事に誘ったという場合に限らず、誘いを受けるかどうかが試されている場合、もっと単純に面接担当の弁護士が予定外にお腹が空いただけという場合もあります。

このように、食事会(会食)形式の面接には様々なパターンがあり、問われていることも時々によって異なるので、一律に対策を語ることはできません。

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3.最低限の心得

食事会(会食)形式の面接への対策は非常に困難なのですが、それでも、最低限抑えておくべき一般的な心得はあります。

どのようなパターンであれ、採用側は、少しでもリラックスした雰囲気を作り出し、その中で応募側の本音を引き出すために食事会(会食)を設定しています。そのため、用意した自己紹介を暗唱したり、聞かれたことに過不足なく答えたりするだけでなく、疑問点があれば遠慮なく質問することが求められています。

とはいえ、リラックスしすぎることも禁物です。お店の形式にもよりますが、小皿を配ったり、調味料を回したり、場合によっては取り分けを行ったり、自分はゲストではなく、むしろホストになったつもりで緊張することも求められます。

難しいテーブルマナーは必要ないものの、社会人としての常識も必要になります。例えば、好きなものを注文して良いと言われても、採用側がどのような価格帯で注文しているか見極めて、それと同価格帯以下の注文をすることは一般常識です。もっとも、このお店ではこれがお勧めだよ、と言われた場合には、少々高いものでも遠慮せずにご馳走になるべきです。口の中に食べ物を入れたまま話さない、店員に対して命令口調にならないなど、人として当然の礼儀が必要となることは言うまでもありません。

お酒を伴う飲食の場合、前後不覚に陥るまで飲まないことは当然ですが、自分の本来の飲酒ペースの方が速くとも、採用側のペース以下に抑えて、採用側の飲み物が少なくなったら、お注ぎしたり、次は何を飲むか尋ねて店員を呼んだり、そのついでに自分も飲み物を補充するなど、ある程度の場慣れもしていることが望ましいです。

食事会(会食)終了後、その日のうちでなくとも、翌朝にはお礼のメールを送るべきです。内容は簡単なもので構いません。どうすれば心を動かせるか思い悩んでタイミングを逸するよりも、すぐにお礼ができるかどうかがより重要です。就職/転職エージェントを利用しており直接お礼の連絡ができない場合にも、エージェント経由でお礼を伝えるようにしましょう。

以上に記載したことは、いずれも、弁護士の就職/転職活動に限らない、社会一般の就職/転職活動の心得です。弁護士も社会人なのですから、一般常識が身についていることが当然の前提となります。

4.弁護士業界で聞いた怖い話

弁護士は良くも悪くも独特な価値観の持ち主が多く、価値観が出やすい食事会(会食)形式の面接では、特に色々と覚悟をしておく必要があります。以下、筆者が実際に聞いたことがある、応募者にとっては怖い話を紹介します。

ある弁護士は、食事をご馳走した応募者が美味しそうに食べるかどうかも判断材料にしています。依頼者や顧問先等から食事をご馳走になった際に、美味しそうに食べて欲しいからだそうです。なるほど一理あると感心しましたが、判断される側にしてみれば、緊張のあまり味を感じないことが多いのではないでしょうか。リラックスさせることが食事会(会食)形式の面接の目的である以上、美味しいものを美味しいと感じられる余裕も求められるのでしょう。

ある法律事務所では、採用がほぼ決まった段階で、事務員を含めた事務所全体の食事会(会食)に招き、全員の第一印象で最終判断をするそうです。選考の最終段階で全体の食事会(会食)に招かれれば、自分は法律事務所の一員として受け入れられたと油断してしまいそうですが、内定をもらうまでは油断は許されません。

筆者の周囲では、多くの弁護士が、お酒を飲む人が欲しいと言います。弁護士にとって、お酒の席は貴重な営業の場です。将来のパートナー候補として営業能力を求める場合には、お酒の席への対応を採用条件とすることにも合理性があるのです。もちろん、体質的にお酒を受けつけない人が無理をする必要はありません。それでも、自分は一滴も飲まないのにお酒の席に参加して、酔っていないはずなのに一緒に盛り上がってくれる弁護士もいます。お酒の席に誘われれば応じることが望ましく、遅い時間帯に面接が設定されれば、帰りが遅くなることも想定しておくべきでしょう。

筆者が知る中には、人間は酔った時に本性が現れると考えて、それを見極めたいと考えている弁護士もいます。この弁護士は、応募側は酔わないように心がけていることを承知の上で、それでも酔わせようとします。この場合、酔わずに乗り切れることが一番であるものの、酔ってしまっても盛り上がればそれで良いし、酔った姿を嫌われれば縁がなかったと割り切るしかないでしょう。

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5.おわりに

食事会(会食)形式の面接には様々なパターンがあり、採用側には様々な目的があります。さらに、採用側の弁護士の価値観によっては、思わぬところが判断材料にされることもあります。求職者の立場からこれに備えるには、一般常識を身に付けることに加えて、応募先の法律事務所が何を試したいのか、ひいてはどのような人材を求めているのかを知ることが求められます。C&Rリーガル・エージェンシー社は、弁護士業界に特化した就職/転職エージェントとして15年の歴史を持ち、数多くの弁護士のキャラクターを熟知しています。同社に相談することで、対応が難しい食事会(会食)形式の面接を、他の候補者よりも有利に進めることができるでしょう。

記事提供ライター

弁護士
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。

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