転職ノウハウ
外資系法律事務所の特色と転職活動のポイント
- 目次
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1.外資系法律事務所とは
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2.国内法律事務所との違い
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3.外資系法律事務所の転職に成功するために必要な要素
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4.まとめ
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1.外資系法律事務所とは
外資系法律事務所とは、海外の法律事務所が日本に進出し業務を行っている法律事務所を意味します。
2003年の「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(通称「外弁法」)」改正によって、外国弁護士が日本弁護士を雇用することが認められ、また、外国弁護士が日本弁護士と共同事業を行う場合の対象範囲制限が撤廃されたことで、日本国内の外資系法律事務所の数は急増しました。
日本にある主な外資系法律事務所
日本にある主な外資系法律事務所は、主にアメリカ系、イギリス系、中国系に分かれます。
アメリカ系の法律事務所として有名なものは、ベーカー&マッケンジー法律事務所外国法共同事業、モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所、ホワイト&ケース法律事務所、外国共同事業ジョーンズ・デイ法律事務所、スクワイヤ外国法共同事業法律事務所などです。
イギリス系の法律事務所として有名なのは、外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ、クリフォードチャンス法律事務所外国法共同事業、フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所、アレン・アンド・オーヴェリー外国法共同事業法律事務所などです。中国系は少数にとどまり、代表的なものにKing & Wood Mallesons 法律事務所外国法共同事業があります。
外資系法律事務所は、世界各国に法律事務所を構えていますが、日本拠点はそれほど大規模なものではないところがほとんどです。100名を超える弁護士が所属しているのはベーカー&マッケンジー法律事務所外国法共同事業、モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所くらいで、他は30~40名前後の規模のところが多くなっています。10名に満たない少数の外資系法律事務所もあります。
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2.国内法律事務所との違い
(1)扱う法律・業務分野の違い
一番の特徴は、日本の法律だけでなく各国の法律を適用し、グローバルな法的サービスを提供する点にあります。取扱分野は基本的に企業法務になりますが、総合商社的といわれる日本の四大(五大)法律事務所と異なり、外資系法律事務所は「独禁法に強い」「リティゲーション(訴訟)に強い」「(ファイナンスの中でも)デリバティブに強い」といったように、それぞれ独自の特徴を有する傾向にあります。
クライアントとなる企業も、日本に拠点や子会社を有する外国企業(インバウンド企業)、外国に拠点や子会社を有する日本企業(アウトバウンド業務)のように国際的な事業活動をしているところが多いです。
(2)使用する言語の違い
外資系法律事務所においては、基本的に事務所内の共通言語は英語になります(中国系の法律事務所も共通言語は英語です)。特に、所属弁護士数に占める外国人弁護士の割合が高い法律事務所ほど、英語の書類を読み書きすることだけでなく日常のコミュニケーションも英語で行われるのが一般的です。
特にシニアアソシエイト以上の立場では、英語で議論や交渉ができて当たり前と考えてください。
(3)働き方の違い
働き方は法律事務所のカラーにもよりますが、基本的には日本の企業法務系法律事務所と同様、多忙です。特に、外国企業がクライアントの場合や、本国の法律事務所とやりとりをする場合などは、現地時間に合わせるため、日本時間の深夜や早朝にミーティングが行われることも多く、変則的な働き方になります。
年収は、大手はかなり高額であり、日本の四大(五大)法律事務所よりも高額といわれるところもあります。小規模のところはそれほど高額ではありませんが、それでも同程度の規模の国内法律事務所と比較すれば高額なところが多いといえます。
報酬体系は法律事務所によって様々で、年功序列型(ロックステップシステム)のところもあれば、若手のうちから「固定給部分+インセンティブ報酬」にしているところもあります。
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(4)本国事務所があることによる違い
外国法律事務所の傘下に入っているということは、本国の法律事務所の意向を色濃く受けるということでもあります。日本人弁護士がパートナー弁護士になりやすいかどうかは法律事務所によって相当違いがありますし、弁護士採用においても、日本事務所のパートナー弁護士の判断のみで採用できるところもあれば、日本事務所が内定を出しても本国事務所の意向であっさり不採用になってしまうようなところもあります。
また、本国と日本との関係などの国際情勢にも影響を受けます。例えば、日本と中国の外交関係が悪化し、日本企業の多くが中国から撤退していたような時期には、中国系の外資系法律事務所でも撤退再編のような仕事が多かったそうです。
場合によっては、本国事務所の意向で日本からの撤退が決まる場合もあります。外資系法律事務所は日本に比べて経営スピードが速い点も特色のひとつですので、撤退が決まると早期に大量リストラが行われる場合もあります。
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3.外資系法律事務所の転職に成功するために必要な要素
(1)企業法務系法律事務所での経験
外資系法律事務所は、「法律事務所において企業法務案件を経験していること」を重視する傾向にあり、インハウスローヤーから外資系法律事務所への転職が成功するケースは極めて少ないのが実情です。「法律事務所」においてトレーニングを受けてきたかに着目するため、インハウスローヤーとして客観的に見て良い経験を積んできたと思われる場合でも採用につながらないケースが多いのです。外資系法律事務所への転職を考えている方は、まず企業法務系の国内法律事務所で経験を積みましょう。
また、外資系法律事務所は実力主義が顕著です。かつては、四大(五大)法律事務所のような大手の法律事務所や、大手ほどの規模はないけれども古くから国内で企業法務を担ってきたよう法律事務所からの転職のみを受け入れるような外資系法律事務所も少なくありませんでした。しかし最近では、地方も含めた小規模の企業法務系事務所からの転職事例も増えてきており、どこで働いていたかよりも何をしてきたかをきちんと評価してくれる傾向がみられます。2~3年目の若手弁護士の場合は、過去の実績よりも伸びしろを評価して採用してもらえることも少なくありません。実力があれば、過去の転職回数は気にしない点も外資系法律事務所の特徴のひとつです。
(2)高い英語力
国内法律事務所との違いのところでも説明しましたが、外資系法律事務所においては、英語が共通言語になります。英文レビュードラフトの作業などはほとんどの国内企業法務系事務所でも行っていると思いますが、外資系法律事務所の場合は、所内に多数の外国弁護士がいたり、クライアントが外国企業だったりするため、日常のコミュニケーションすべてが英語のところが多いです。
このため、日常会話レベルではなく、ビジネス英語レベルの実力が必須になります。若手弁護士の場合、最初は読み書き程度ができればよいとしているところもありますが、入所してからは英語漬けの日々を送ることになるという覚悟は必要でしょう。採用の段階から英語力を求める外資系法律事務所の場合、ひとつの目安として事前TOEIC800以上は取得しておきたいです。TOEIC対策についてはこちらの記事もご参照ください。
また、採用の過程で本国事務所のカウンセルと英語で面接をするというケースも多いです。ここで緊張しすぎないように、日頃から英会話の経験を積んでおくとよいでしょう。
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4.まとめ
外資系法律事務所は、2020年2月ごろより発生した世界的なコロナウイルスの感染拡大によっても採用が鈍っておらず、高い採用力を維持しています。C&Rリーガル・エージェンシー社は、外資系法律事務所への転職にも多数の実績を有しております。企業法務経験や英語力など、ご自身がお持ちのスキルに応じた転職活動のアドバイスをさせていただくことができますので、ぜひ一度ご相談ください。
記事提供ライター
社会人経験後、法科大学院を経て司法試験合格(弁護士登録)。約7年の実務経験を経て、現在は子育て中心の生活をしながら、司法試験受験指導、法務翻訳、法律ライターなど、法的知識を活かして幅広く活動している。