業界トピックス
弁護士の就職と年齢の意外な関係
- 目次
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1.弁護士の就職に年齢は関係するのか
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2.中小規模の法律事務所は減っているのか
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3.中小規模の法律事務所が求める良い人とは
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4.年齢が高い場合の注意点
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5.中小規模の法律事務所の採用情報の探し方
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1.弁護士の就職に年齢は関係するのか
司法試験に合格したものの、社会人を経由していたり合格までに苦戦してしまったりして合格時の年齢が高い場合、就職活動の不安は大きいと思います。
たしかに、大規模法律事務所に就職する場合、年齢は若ければ若いほど有利です。しかし、中小規模の法律事務所に就職するためには、年齢は関係ないどころか、若すぎるよりもある程度の年齢に達している方が有利になることが多いです。
ここでは、筆者の経験を基に、中小規模の法律事務所の現状と、弁護士の就職と年齢の関係について説明します。あくまでも筆者個人の見解となりますのでご了承ください。
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2.中小規模の法律事務所は減っているのか
近年は法律事務所の大規模化が進んでいると言われています。実際に、司法試験の合格者数が減少傾向にある中で大規模事務所の採用人数は増加傾向にあるため、弁護士の就職者数に占める大規模事務所就職者数の割合は高くなってきています。そのため、中小規模の法律事務所は減少傾向にあると考えている人も多いのではないでしょうか。
日本弁護士連合会が公開している基礎的な統計情報(参照※1)によると、所属人数5人以下の法律事務所に所属している弁護士人数は、2018年が40,066人中25,514人、2019年が41,118人中26,250人、2020年が42,164人中26,319人となっています。この数字から読み取れることは、中小規模の法律事務所は決して減少傾向にあるわけではないということです。その理由としては、大規模事務所に就職したものの、その後独立したり中小規模の事務所に移籍したりする弁護士が多いことが考えられます。
中小規模の法律事務所で働く弁護士の数は減っていないのに、弁護士の就職先に占める大規模事務所の割合が高くなっていることに違和感を覚える方もいるでしょう。その原因は、大規模事務所は主として新人弁護士が就職することにより人数を増やしているのに対して、中小規模の法律事務所は、弁護士が独立開業することや、経験弁護士の転職によっても人数を増やしているからです。
3.中小規模の法律事務所が求める良い人とは
中小規模の法律事務所は、大規模法律事務所のように毎年新人弁護士の就職を受け入れるわけではありません。採用計画があるわけでもなく、良い人がいれば新人弁護士でも取りたいと考えている場合が大半です。
では、中小規模の法律事務所が求める良い人とはなんでしょうか。理想は、経験豊富で多くの顧客を抱えており、すぐにでも事務所の売上に貢献してくれる即戦力です。しかし、そんな都合の良い人は、自分で法律事務所を開いたり相応しい待遇を求めたりするでしょう。中小規模の法律事務所もそれをわかっているので、現実的な良い人として、わずかな教育コストで戦力に育ってくれる人を求めています。
弁護士が戦力となるためには、相談者や依頼者から信頼してもらえることが必要です。経験豊富で、相談者や依頼者の疑問にすぐに応えられることは信頼に繋がります。中小規模の法律事務所が積極的に転職を受け入れているのは、他の事務所で身に付けた経験に期待しているからです。
とはいえ、いくら経験豊富でも、見た目が頼りなければ相談者や依頼者は信頼してくれません。24歳で弁護士になって3年目の26歳が、40歳の新人弁護士の指導を担当して法律相談に連れていく場合、相談者は26歳と40歳のどちらを信頼するでしょうか。相談者や依頼者は年齢が高ければ経験も豊富だろうと期待して信頼するでしょう。
筆者は、大学院で経営学を学んでから司法試験の勉強を始めたため、合格時には30歳になっていました。しかし、就職活動を行うことなく、実務修習でお世話になった中小規模の法律事務所からスカウトを受けて就職しています。就職先からだけでなく色々な先輩弁護士や裁判官、検察官から貫禄があるから即戦力だとお世辞を言われていました。ところが、実際に弁護士になってみると、即戦力どころか、自分の若さが不利に働いていると感じました。弁護士になったばかりのころは自分で振り返っても挙動不審でしたが、ある程度経験を積んで落ち着いた対応ができるようになった後も、依頼者は本音ではもっと経験豊富な弁護士を求めているように感じていました。無条件で依頼者に安心してもらえていると感じるようになったのは40歳前後からです。
筆者の周囲では、中小規模の法律事務所の経営者弁護士は、できれば30歳以上が欲しい、35歳でも40歳でも構わないと話しています。司法試験合格時の年齢が高い場合、中小規模の法律事務所が探している良い人に該当する可能性が出てきます。
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4.年齢が高い場合の注意点
年齢が高いことには注意点が2つあります。1つは、年齢相応の貫禄あるいは風格が求められることです。受験勉強が長引いてしまった場合によく見られるのですが、自分は勉強以外の全てを捨てているので敢えて身だしなみには気を使いませんというのは社会人失格です。年齢相応の貫禄を身に付けるためには、相談者や相手方、裁判官が、自分の外見から弁護士としての力量を値踏みしていると意識することが出発点になります。弁護士は信用商売であるため、高いスーツや腕時計、靴を身に付けて、経済力があることを示すことも一つの方法でしょう。体を鍛えて精悍な印象を与えることも方法です。発言の前に都度熟考して整理された内容の発言を心がけることも方法です。自分が格好良いと感じる年の近い先輩弁護士を観察して真似ることも方法です。
もう1つの注意点は、年齢相応の待遇を求めないことです。実年齢が高くとも、あくまでも合格したての新人です。同世代の弁護士と同等の待遇はもちろん、同世代の社会人と同じ待遇を求めることも烏滸がましいという謙虚な気持ちが必要です。弁護士の待遇は実力主義・成果主義なので、早くに年齢相応の戦力になれれば待遇も年齢相応になっていきます。
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5.中小規模の法律事務所の採用情報の探し方
筆者の経験上、大規模法律事務所に就職するためには年齢が若い方が有利で、中小規模の法律事務所に就職するためには、むしろある程度の年齢に達している方が有利だと言えます。しかし、大規模法律事務所は説明会を開催するなど採用情報を積極的に開示しているのに対して、中小規模の法律事務所は、良い人がいれば採用するというのんびりした態度なので、採用情報が表に出てきません。これが、弁護士の就職でも年齢が若い方が有利だという認識につながっているように思えます。
筆者の周囲には大規模法律事務所に就職した弁護士だけでなく、中小規模の法律事務所に就職した弁護士も沢山います。彼らは、大学や法科大学院のOBや就職課を頼ったり、司法修習の指導教官や同期の修習生を頼ったり、親族や知人を頼ったり、人伝で中小規模の法律事務所に辿り着いています。中小規模の法律事務所に就職するためには、可能な限りチャンネルを増やすことが重要だと言えます。
筆者は、このチャンネルの中にエージェント(キャリアアドバイザー)を加えることが得策であると考えています。C&Rリーガル・エージェンシー社は、弁護士業界に特化した就職/転職エージェントとして15年の歴史を持ち、弁護士業界に広いネットワークを有しています。ひまわり求人には掲載されていない非公開求人も多数抱えており、その中には、良い人がいれば採用したいという中小規模の法律事務所も含まれています。就職/転職エージェントをチャンネルに加えれば、自分を評価してくれる法律事務所を見つけるための心強いサポートをしてくれるでしょう。
記事提供ライター
弁護士
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。
【参照】
※1:日本弁護士連合会が公開している基礎的な統計情報
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