同じ「企業法務」でも事務所によって何が違うのか|弁護士が転職前に確認すべきポイント
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そもそも「企業法務」という言葉は幅が広い
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事務所によって企業法務はこう違う
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自分に合う事務所をどう見極めるか
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転職時に確認しておきたいポイント
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まとめ|「企業法務」の中身を見極めて納得のいく転職を
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「企業法務をやりたくて事務所に入ったのに、想像していた業務と違った」
「前の事務所と同じ企業法務のはずなのに、進め方も求められる役割もまったく違う」
企業法務を扱う事務所に身を置く弁護士のなかには、こうした違和感を抱えている方が少なくありません。
「企業法務」とひとくくりに言っても、その中身は事務所ごとに大きく異なります。扱う案件の規模やクライアントの属性、弁護士の立ち位置、案件の進め方など、ひとつの言葉で表せるほど単純な業務ではありません。
本コラムでは、同じ「企業法務」でも事務所によって何が違うのか、自分に合う環境を見極めるためにどこを確認すべきかを解説します。今の環境に違和感を抱いている方や、企業法務系の事務所への転職を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
そもそも「企業法務」という言葉は幅が広い
「企業法務」は、企業を相手とする法律業務全般を指す広い概念です。契約書レビュー、M&A、労務対応、スタートアップの資金調達支援、独占禁止法・下請法対応など、扱う領域は多岐にわたります。
どの分野にどの程度の比重を置くかは、事務所ごとにまったく異なります。M&Aや金融取引を主軸とする事務所もあれば、顧問先の日常相談を多く扱う事務所もあります。労務・紛争寄りの企業法務に強みを持つ事務所もあれば、外資系クライアント向けの英文契約を中心に据える事務所もあります。
つまり、求人票に「企業法務」と記載されていても、その言葉が指す中身は事務所ごとに大きく違います。「企業法務を扱っている」という言葉だけで判断するのは危険だといえます。
事務所によって企業法務はこう違う
同じ「企業法務」でも、事務所ごとに業務の中身は異なります。どのような点で違いが生まれるのか、主なポイントを見ていきましょう。
事務所の規模による違い
まず大きく影響するのが、事務所の規模です。規模によって、扱う案件の大きさだけでなく、案件の進め方やクライアントとの関わり方まで変わってきます。
・大手事務所や特定分野に特化したブティック型事務所
上場企業やグローバル企業を中心とした大型案件を扱うことが多いです。1件あたりの規模が大きいため、調査担当・ドラフト担当・交渉担当のように複数の弁護士がチームで分業して取り組むのが一般的です。クライアント側にも法務部や経営層がいることが多く、抽象的な指示から精緻なアウトプットを返すスタイルが求められます。担当する範囲は案件の一部分にとどまる代わりに、特定分野を深く掘り下げ、高度な専門性を磨きやすい環境です。
・中小規模の総合事務所
中堅企業から上場子会社まで幅広いクライアントを扱う傾向があります。1件あたりの案件規模は大手ほど大きくない一方、弁護士一人あたりの担当範囲は広くなりがちです。社長や法務担当者と直接やり取りすることも多く、法律論だけでなく、ビジネス上どう動くのが現実的かまで含めた説明力や調整力が求められます。契約書のレビューから労務、紛争まで横断的に経験を積めるため、専門性と総合力をバランスよく身につけやすい環境といえます。
・小規模事務所
小規模事務所やいわゆる街弁系の事務所でも、企業法務を扱っているケースは少なくありません。顧問先の中小企業や個人事業主からの日常相談が中心で、契約書のチェック、労務トラブル、債権回収、許認可など、相談内容は多岐にわたります。一人の弁護士が窓口対応から書面作成、相手方との交渉、フォローアップまで一貫して担当する形が主流で、案件全体を見渡す視点と総合的な対応力が鍛えられます。
事務所の規模に優劣があるわけではなく、自分がどのような経験を積みたいかによって、適した事務所は異なります。
クライアントの属性による違い
クライアントの属性によって、弁護士に求められる役割は大きく変わります。
・大企業がクライアントの場合
社内に法務部があり、体制も整っているケースがほとんどです。弁護士は「外部の専門家」として関与する立場となり、依頼内容も比較的整理された形で持ち込まれます。アウトプットには高い完成度と正確性が求められ、やり取りの相手も法務担当者や経営層など、法的知識を持つ方が中心となります。
・中小企業がクライアントの場合
法務部がない、または法務担当者が一人で兼務しているケースが珍しくありません。弁護士が実質的な法務の相談窓口となり、社長や事業担当者と直接やり取りすることも多くなります。法律論だけでなく、ビジネスの現実を踏まえた実務的な判断が求められる場面が増えます。
・ベンチャー・スタートアップがクライアントの場合
法務体制そのものをこれから整えていく段階であることが多く、スピードと柔軟性が重視されます。前例のない論点について、限られた時間と情報のなかで、現時点での最適解を提示できるかが問われます。法務以外の相談も自然と集まりやすい傾向があります。
また、日系か外資系かによっても業務の性質は変わります。
・日系企業の海外進出を支援する場面
日本企業が事業の主体となり、進出先の現地法を取り扱うケースが出てきます。
・外資系企業の日本進出を支援する場面
本国の事業を日本でローカライズするにあたって日本法上どう整理するかが中心となります。
英語の使い方も、対外交渉で使うのか社内コミュニケーションで使うのかなど、事務所によって異なります。
扱う案件の傾向の違い
「企業法務」のなかで、どのような案件を多く扱うかも事務所によって異なります。
契約書レビューを中心とする事務所、M&Aや組織再編といったトランザクション案件を主軸にする事務所、労務・紛争寄りの企業法務を扱う事務所、スタートアップ支援や資金調達に強い事務所、外資系案件・英文契約をメインとする事務所など、傾向はさまざまです。
同じ「契約書レビュー」でも、中身は事務所ごとに違います。大量の契約書をスピード重視で処理する業務と、影響範囲の大きい契約を時間をかけて精緻に検討する業務とでは、求められる資質も働き方もまったく異なります。「契約書レビューが中心です」という説明だけで判断するのは難しいでしょう。
自分に合う事務所をどう見極めるか
「企業法務」と一口に言っても、その中身は事務所によって大きく異なります。それを踏まえたうえで、自分に合う事務所をどう見極めればよいのでしょうか。ここでは、判断の手がかりとなる3つの観点を整理します。
①自分が「企業法務」のどこに惹かれているかを言語化する
最初のポイントは、自分が企業法務のどの部分に魅力を感じているのかを言語化することです。
たとえば「大型M&Aのような社会的にインパクトの大きい案件に関わりたい」のと、「経営者の隣に立って、ビジネスの一歩先を一緒に考えたい」のとでは、向いている事務所はまったく違います。「英文契約を扱える事務所がいい」と思っていても、外資系企業が日本でビジネスを展開する際の支援をしたいのか、日系企業の海外進出を法的にサポートしたいのかで、選ぶべき事務所は変わってきます。
「企業法務をやりたい」という気持ちだけで動くと、転職先でまたミスマッチが生じる可能性があります。求人票を見比べる前に、自分の関心を具体的に言葉にしてみましょう。
②事務所タイプ別に向いている人の傾向を知る
自分の志向が見えてきたら、事務所タイプとの相性を確認しておくとよいでしょう。あくまで傾向の話ですが、目安として参考にしてみてください。
大手・専門ブティック型の事務所が合いやすいのは、次のようなタイプです。
・精緻にロジックを積み上げていく作業が好きな方
・チームで動くことに抵抗がない方
・特定分野を深く掘り下げたい方
・クライアントとの直接対応よりも専門性で勝負したい方
中小・総合事務所が合いやすいのは、次のようなタイプです。
・クライアントと近い距離で関わりたい方
・説明や調整の場面を苦にしない方
・案件全体を見渡せる裁量を持ちたい方
・将来的にインハウスへの転身や独立も視野に入れている方
もちろん、これらに当てはまらないからといって不向きとは限りません。同じ事務所のなかでも、扱う案件やパートナー弁護士のスタイルによって雰囲気は変わります。あくまで出発点として捉えてください。
③違和感の中身を分解してみる
すでに事務所に所属していて違和感を抱えている方は、転職を考える前に、その違和感の中身を分解してみることが大切です。
業務量が物足りないのか、求められるレベルが高すぎてしんどいのか、チームの進め方が合わないのか、クライアントとの距離感に違和感があるのか。原因によって、選ぶべき次の事務所は変わってきます。「とにかく今の事務所を出たい」という気持ちだけで動くと、転職先でも同じ違和感を抱えるおそれがあります。
違和感の原因を一人で見極めるのは難しいときもあります。そんなときは、転職エージェントとの面談を活用して、自分の状況を客観的に整理してみるのもひとつの方法です。
転職時に確認しておきたいポイント
企業法務系の事務所への転職を検討する際には、求人票の情報だけで判断せず、実態を確認することが欠かせません。ここでは、確認しておきたいポイントを整理します。
求人票の「企業法務」を鵜呑みにしない
求人票に記載される「企業法務」という言葉は、企業が関わるあらゆる法律業務を含む幅広い表現であり、その中身は事務所ごとに大きく異なります。実際の業務内容、役割、業務比率については、面接で具体的に確認することが必須です。
特に確認しておきたいのが、業務の中身と量です。事務所全体の業務のなかで企業法務がどの程度の割合を占めているのか、時間的な割合と件数的な割合の両面から把握しておきましょう。
「企業法務を扱っている」と説明されていても、実態としてはボス弁が一人で抱えており、アソシエイトには年に数件しか回ってこないというケースもあります。自分が望む中身・量と一致しているかを、応募前に見極めておきましょう。
事務所の今後の方向性も確認する
入所時点で扱っている業務内容と、数年後に扱う業務内容は、必ずしも一致するとは限りません。事務所が今後どの方向に力を入れていくかによって、自分が積める経験は大きく変わります。長く働くことを考えるなら、現状だけでなく、事務所の将来像も確認しておきましょう。
具体的には、次のようなポイントを押さえておくと、入所後のイメージが描きやすくなります。
・今後強化していきたい分野はどこか
・最近どのような案件が増えているのか
・若手・中堅のキャリアパスはどう描かれているのか
たとえば、自分はM&Aの経験を積みたいと考えていても、事務所側がその分野を縮小しようとしていたら、入所後に思うような経験を積むのは難しくなります。逆に、これから注力していく分野と自分の関心が一致していれば、思い描くキャリアを実現しやすくなります。
ただし、こうした情報は事務所のWebサイトや求人票には載っていないことがほとんどです。面接の場で踏み込んで質問するか、事務所の内情を知る転職エージェントから情報を得るのが現実的な方法となります。
外からは見えない情報をどう集めるか
事務所の内部事情や過去にその事務所へ転職した弁護士の声、面接で重視されるポイントなど、求人票や事務所のWebサイトには載っていない情報こそ、転職の精度を左右します。しかし、こうした情報を個人で集めるのは難しいのが実情です。
情報を集める手段としては、大きく2つあります。
ひとつは面接の場で踏み込んで質問すること、もうひとつは、事務所の内情を把握している転職エージェントを活用することです。特に弁護士や法律事務所の事情に詳しい転職エージェントであれば、求人票だけでは見えない実情を踏まえて、事務所ごとの企業法務の実態を具体的に伝えることができます。
まとめ|「企業法務」の中身を見極めて納得のいく転職を
「企業法務」という言葉は、外から見るとひとつのカテゴリーに見えますが、実際には事務所ごとに中身が大きく異なります。扱う規模やクライアントの属性、案件の傾向、進め方、クライアントとの関わり方など、同じ「企業法務」のなかにいくつもの世界が存在します。
今の環境に違和感を抱いている方も、これから企業法務系の事務所を目指す方も、まずは自分が何を求めているのかを整理することが、納得のいくキャリア選択につながります。そのうえで、求人票の言葉を鵜呑みにせず、中身を見極めることが転職の精度を高める近道です。
C&Rリーガル・エージェンシー社は、弁護士・法務領域に特化した転職エージェントとして、これまで多くの弁護士・法務人材の転職を支援してきました。その支援実績を通じて、事務所ごとの企業法務の内容やクライアントの傾向、案件の進め方、若手・中堅弁護士のキャリアパスなど、求人票だけではわかりにくい情報も把握しています。
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