【79期向け】気になる修習中のお金まわり ~司法修習生給付金と修習専念資金の貸与、アルバイトの可否等を詳しく解説~
- INDEX
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司法修習生の修習給付金とは?制度の概要と歴史
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司法修習生給付金の内容と種類|基本給付金・住居給付金・移転給付金
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司法修習生給付金はいつ支給される?支給日スケジュールと注意点
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司法修習生給付金と税金・社会保険|確定申告は必要?
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司法修習中のアルバイトはできる?原則禁止と例外的に認められる業務
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修習専念資金の貸与制度とは?生活費が足りないときのセーフティネット
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司法修習期間の生活費・交友費の実情
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弁護士の初任給相場|修習後のキャリアと収入のリアル
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修習体験レポートのご案内|お金以外のリアルも紹介&就職サポートはリーガル・エージェンシー社へ
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79期司法修習を控えている皆さん、修習期間中のお金のことが気になっていませんか?
「給付金って実際いくらもらえるの?」
「本当に給付金だけで生活できる?」
「どうしてもお金が足りなくなったらアルバイトはできるの?」
こうした資金面の不安を抱えている方は多いはずです。
この記事では、司法修習生給付金の仕組みから具体的な金額、支給スケジュール、税金や社会保険の取り扱い、アルバイトの可否、そして不足時に頼れる修習専念資金の貸与制度まで、79期修習生の皆さんが本当に知りたい「修習のお金まわり」について、実情を交えながら徹底的に解説していきます。
司法修習生の修習給付金とは?制度の概要と歴史
司法修習を受ける皆さんにとって、「修習中のお金」は合格の喜びと同じくらい大きな関心事ですよね。まずは、給付金制度がどういう仕組みなのか、そしてなぜこの制度が生まれたのか、その背景を一緒に整理していきましょう。
■給付金の内容
司法修習生給付金制度は、法曹人材を確保するという観点から、最高裁判所が定めた「通常修習期間」に対して支給される生活保障の仕組みです。簡単に言えば、「修習に専念できるよう、国が最低限の生活費を支えますよ」という制度です。
この給付金には、大きく分けて3つの種類があります。
・基本給付金:全員がもらえる、生活の基盤となるお金
・住居給付金:賃貸住宅に住む人向けの家賃補助
・移転給付金:修習地への引越しが必要な人への引越し代補助
それぞれの条件に応じて組み合わせて受け取ることができるので、自分がどれに該当するのかをしっかり把握しておくことが大切です。
■なぜ給付金制度があるのか
司法修習生の給付金制度は、修習生が経済的な理由で修習に専念できなくなることを防ぐために設けられています。
司法修習では、裁判所・検察庁・弁護士会をローテーションしながら実務を学びます。平日は朝から夕方まで修習が入り、予習・復習もあるため、普通のアルバイトをする余裕はほとんどありません。それなのに「生活費は自分でなんとかしてください」と言われては、経済的に恵まれた人しか修習を続けられなくなってしまいます。
実は、司法修習生の経済的負担をめぐっては、長い議論の歴史があります。
・第65期以前:「給費制」により、国家公務員並みの給与が支給されていた時代
・第66期〜第70期:「貸与制」に移行。修習生は無利息で借りられるものの、生活費を全額自己負担しなければならず、修習終了後には返済義務が残る厳しい時代
・第71期以降(現在):「給付金制度」が導入され、全修習生が返済不要の給付を受けられるように
貸与制の時代は、「借金を背負いながら修習する」という状況に置かれた修習生が多く、社会的にも大きな問題となりました。その反省を踏まえ、経済的事情で法曹の道を諦める人をなくすため、現在の給付金制度が整備されました。
つまり、この制度は単なる「お小遣い」ではありません。司法制度を支える未来の法曹人材を守るための、国としての投資なのです。
司法修習生給付金の内容と種類|基本給付金・住居給付金・移転給付金
ここからは、実際に支給される給付金の具体的な内容を見ていきましょう。
給付金は「基本給付金」「住居給付金」「移転給付金」の3種類で構成されています。
それぞれの金額と条件を正確に理解しておくことで、修習中の生活設計がぐっと立てやすくなります。
■基本給付金(月額13万5,000円)
「基本給付金」は、司法修習生全員が必ずもらえる、生活の柱となる給付金です。
・金額:月額13万5,000円(全員一律)
・支給対象:通常修習期間にある修習生全員
・条件:特になし(自宅・寮・賃貸を問わず、全員に支給される)
この13万5,000円が、修習生活における収入のベースになります。家賃を除いた食費・光熱費・通信費・交際費などは、基本的にこの金額でやりくりすることになるため、「意外と少ない」と感じる方も多いかもしれません。
実際、都市部で一人暮らしをしている修習生の中には、「毎月ギリギリ」という声も少なくありません。それでも、返済不要でこれだけの金額が確実に支給されることは、修習に専念する上で非常に大きな支えとなります。
■住居給付金(月額3万5,000円)
「住居給付金」は、修習のために賃貸住宅に住む必要がある修習生を対象とした、家賃補助の給付金です。
・金額:月額3万5,000円
・支給対象:賃貸アパート・マンションなどに居住する修習生
・対象外:自宅から通学する「通学修習」の場合
たとえば、地方から東京・大阪などの大都市圏に修習に来る場合、家賃は月7万円〜10万円程度かかることも珍しくありません。その場合、住居給付金3.5万円を差し引いても、残り3.5万円〜6.5万円は自己負担となります。
一方で、実家から通える距離に修習地がある「通学組」は、この住居給付金がもらえません。その代わり家賃負担がゼロなので、実質的には通学組のほうが経済的に有利になるケースが多いです。「実家通いが羨ましい」という声は、修習生の間でよく聞かれます。
また、導入修習や集合修習の期間中に司法研修所の寮に入る場合は、その期間は住居給付金の支給対象外となるので注意してください。
■移転給付金(約4万6,500円〜14万1,000円)
「移転給付金」は、修習地への転居が必要な修習生に対して、引越し代の一部を補助する給付金です。
金額は、転居の距離(鉄道距離)に応じて決まります。主な目安は以下の通りです。
・鉄道50km未満:4万6,500円
・鉄道500km〜1,000km未満:10万8,000円
・鉄道2,000km以上:14万1,000円
※これは代表例であり、実際の金額は最高裁の基準に従って細かく決定されます。
引越しには、運送費・敷金・礼金・家具家電の購入費など、想像以上にお金がかかります。移転給付金があるとはいえ、実費の一部しかカバーできないため、「引越し貧乏」になる修習生も少なくありません。特に、地方から都市部への引越しでは、初期費用だけで数十万円が飛んでいくこともあります。
なお、自宅から通学可能な修習生には移転給付金は支給されません。また、実務修習期間中に別の修習地に移動する際の交通費も、給付金制度上の支給対象外となるため、その点も覚えておきましょう。
司法修習生給付金はいつ支給される?支給日スケジュールと注意点
給付金がいくらもらえるかが分かったところで、次に気になるのは「いつ、どうやって振り込まれるの?」という点です。ここでは、実際の支給スケジュールと、見落としがちな重要な注意点を解説します。
■司法修習生給付金の支給日スケジュール
司法修習生給付金は、期ごとに設定される支給スケジュールに従って、通常月1回のペースで指定口座に振り込まれます。
ただし、支給日は「毎月○日」と固定されているわけではなく、期ごとに異なる日付が事前に告知されるため、毎年必ず最新の資料を確認する必要があります。
参考までに、78期の支給スケジュールは以下の通りでした。
| 回 | 給付期間 | 基本給付金 支給日 | 住居給付金 支給日 |
| 第1回 | 令和7年3月19日~4月18日 | 令和7年4月15日 | 令和7年5月15日 |
| 第2回 | 4月19日~5月18日 | 5月15日 | 6月16日 |
| 第3回 | 5月19日~6月18日 | 6月16日 | 7月15日 |
| 第4回 | 6月19日~7月18日 | 7月15日 | 8月15日 |
| 第5回 | 7月19日~8月18日 | 8月15日 | 9月16日 |
| 第6回 | 8月19日~9月18日 | 9月16日 | 10月15日 |
| 第7回 | 9月19日~10月18日 | 10月15日 | 11月17日 |
| 第8回 | 10月19日~11月18日 | 11月17日 | 12月15日 |
| 第9回 | 11月19日~12月18日 | 12月15日 | 令和8年1月15日 |
| 第10回 | 12月19日~令和8年1月18日 | 令和8年1月15日 | 2月17日 |
| 第11回 | 1月19日~2月18日 | 2月16日 | 3月17日 |
| 第12回 | 2月19日~3月18日 | 3月17日 | 4月15日 |
| 第13回 | 3月19日~修習終了日(※) | 4月15日 | 5月15日 |
ご覧の通り、基本給付金と住居給付金では支給日が1か月ずれています。これは制度上の仕組みなので、「住居給付金がまだ振り込まれない…」と焦らなくても大丈夫です。
司法修習は、導入修習・集合修習・実務修習・選択修習など複数の段階に分かれているため、給付金の支給期間・締切もそれに合わせて設定されます。特に修習開始直後は、提出書類が山のようにあり、慣れない手続きに追われることになります。書類の提出が遅れると支給が翌月にずれ込む可能性があるため、注意が必要です。
■届出期限に特に注意|住居給付金・移転給付金は“1日遅れ”でも不支給に
住居給付金と移転給付金は、届出期限が極めて厳格に運用されています。期限を1日でも過ぎると、その給付期間分が原則として不支給になります。
特に修習開始直後は引越しや入居が重なり、提出漏れが起きやすい時期です。
【届出期限の具体的なルール】
・住居届の期限:要件具備日から7日以内(初日不算入・必着)
・移転届の期限:修習開始日から7日以内(初日不算入・必着)
・判定基準:郵送は「到着日」で判断される(消印は無関係)
・遅れた場合の影響:該当給付期間分は原則として不支給
届出が遅れたことで、給付そのものが消滅するだけでなく、提出後に支給される場合でも実際の振込が1〜2か月遅れることもあります。修習中は出費が重なる時期のため、この遅れは生活に大きく影響します。
また、賃貸借契約書がまだ手元にない場合でも、まず住居届だけ先に提出し、契約書は後日添付する方法が認められています。期限を守るためには、このように柔軟な方法を利用することが重要です。
司法修習生給付金と税金・社会保険|確定申告は必要?
給付金を受け取るようになると、税金や社会保険の扱いが変わる場合があります。特に、基本給付金・住居給付金は課税対象となるため、確定申告が必要になるケースがある点には注意が必要です。
また、健康保険・年金の区分も、「今どの保険に入っているか」「これまでの就労状況はどうだったか」によって人それぞれ異なるため、必要な手続きも変わってきます。
「税金の話は難しくて苦手」という方も多いと思いますが、ここで最低限押さえておくべきポイントを、できるだけ分かりやすく整理していきます。
■所得税・住民税|基本給付金・住居給付金は「雑所得」扱いで課税対象
まず知っておいてほしいのは、基本給付金と住居給付金は、税法上「雑所得」に該当し、確定申告が必要ということです。
一方で、移転給付金(引越し補助)は非課税扱いで、確定申告の対象外です。
整理すると、以下のようになります。
| 給付金の種類 | 税法上の扱い | 確定申告 | 源泉徴収 | 必要経費控除 | 住民税 |
| 基本給付金 | 雑所得 | 必要 | なし | なし | 課税対象 |
| 住居給付金 | 雑所得 | 必要 | なし | なし | 課税対象 |
| 移転給付金 | 非課税 | 不要 | なし | 不要 | 非課税 |
「確定申告なんてやったことない」という方も多いと思いますが、修習終了後の翌年2月〜3月に、税務署で手続きを行うことになります。
ちなみに、司法研修所は給付金について「支払通知書」を発行しません。税務申告などで収入証明が必要な場合は、「支給日等一覧表」と「銀行口座の通帳記録」を証拠として使用します。
手続きの詳細は、お住まいの地域の税務署や市区町村の窓口で確認しましょう。「司法修習生の給付金について確定申告したい」と伝えれば、丁寧に教えてくれるはずです。
■健康保険|国民健康保険に変わる場合がある
健康保険については、現在どの保険に加入しているかによって、修習開始後の取扱いが変わります。
| 現在の加入状況 | 修習開始後の扱い | 手続きの要否 |
| 国民健康保険(学生・自営業など) | 国保のまま継続 | 不要 |
| 会社員として勤務先の健康保険 | 退職後→国保へ加入 | 必要 |
| 家族の扶養(会社員家族の健康保険組合) | 扶養認定から外れる→国保へ加入 | 必要 |
特に、親の扶養に入っていた方は、手続きが必要になる可能性が高いです。
また、勤務先の健康保険に加入していた方も、退職後に「国民健康保険」へ加入するのが一般的です。
条件を満たせば「任意継続被保険者制度」により、退職前の健康保険を最大2年間継続することも可能ですが、任意継続は保険料が全額自己負担になるなど、制度・コスト面で国民健康保険の方が有利なケースが多いため、国保への切り替えを選ぶ方が一般的です。
修習開始前に、加入している健康保険組合や市区町村の窓口に問い合わせて、具体的な手続きを確認しておくとスムーズです。
■年金|ほとんどの修習生が「第1号被保険者」へ変更
年金についても、現在の立場によって手続きが変わります。
| 現在の区分 | 修習開始後 | 手続きの必要性 |
| 第1号被保険者(自営業・学生など) | 第1号のまま | 不要 |
| 第2号(会社員:厚生年金) | 退職する → 第1号へ | 必要 |
| 第3号(会社員配偶者の扶養) | 扶養から外れる → 第1号へ | 必要 |
多くの修習生は、修習開始後に「第1号被保険者」となり、国民年金保険料を自分で納めることになります。
年金区分を誤ると未納扱いになる可能性もあるため、年金事務所や勤務先(退職予定のある方)へ必ず確認しましょう。
■扶養控除の取り扱い|基本給付金の収入により扶養から外れる
現在、親などの扶養に入っている場合は、基本給付金・住居給付金の収入により、扶養から外れるのが原則です。
扶養者が会社員の場合は、扶養者の勤務先へ「扶養控除等(異動)申告書」の提出が必要になります。
「扶養から外れる」ということは、親の税金が増える可能性があるということでもあります。修習開始前に、親御さんとしっかり話し合っておくことをおすすめします。
司法修習中のアルバイトはできる?原則禁止と例外的に認められる業務
「給付金だけじゃ生活が厳しい……バイトしてもいい?」
この疑問を持つ修習生は多いのですが、結論から言うと、司法修習生は「修習に専念すべき義務」があるため、アルバイト(兼業)・兼職・兼学は原則として禁止されています。
無許可で行った場合、罷免・修習停止などの処分の対象となるため、絶対に勝手にやらないようにしてください。
ただし、例外的に認められるケースもあります。その場合でも、区分に応じて最高裁または司法研修所の許可が必須です。許可を受ける際は、専用のフォームから必要書類を添付して申請することになります。
| 区分 | 内容 | 無許可の場合 | 許可権者 |
| 兼職 | 会社等に在籍し続けること、地方公務員の職務等 | 罷免・修習停止・戒告等 | 最高裁判所 |
| 兼業 | アルバイト(答案添削・講師等)、不動産賃貸、自営以外の経済活動 | 同上 | 内容により最高裁or司法研修所 |
| 兼学 | 大学・大学院に在籍(休学含む) | 同上 | 司法研修所 |
| 公務員就任 | 公務員に就くこと | 禁止 | 最高裁判所 |
「ちょっとだけなら」と軽い気持ちで無許可でバイトをすると、後から大きな問題になりかねません。どうしても経済的に厳しい場合は、次の章で説明する「修習専念資金の貸与制度」の利用を検討してください。
修習専念資金の貸与制度とは?生活費が足りないときのセーフティネット
「給付金だけじゃ生活できない。でもバイトもできない。いったいどうすれば?!」
そんなときのために用意されているのが、修習専念資金の貸与制度です。
これは、修習に専念するために必要な資金を、最高裁が無利息で貸与してくれる制度です。給付金(基本給付金・住居給付金)と併用できるため、経済的に厳しい修習生にとっては大きなセーフティネットとなります。
最高裁に対して「貸与申請書」を提出することで利用できます。
■貸与額
修習専念資金は「貸与単位期間」ごとに貸し付けられ、金額は以下のとおりです。
| 区分 | 金額 |
| 基本額(標準) | 月額10万円 |
| 扶養加算あり | 月額12万5,000円 |
※修習生自身が扶養親族を有し、加算を希望する場合に限り増額可能。
たとえば、基本給付金13.5万円+住居給付金3.5万円+貸与10万円=月27万円となり、かなり生活に余裕が出ます。
ただし、「貸与」ですので、修習終了後には返還する義務があることを忘れないでください。
■保証人
貸付を受けるには、以下のいずれかを保証人として選ぶ必要があります。
・自然人2名(人的保証)
・最高裁指定の金融機関(機関保証)
人的保証の場合、親族などにお願いすることになりますが、機関保証を選べば知人に頼む必要はありません。ただし、機関保証には別途保証料がかかる点には注意してください。
■返還方法
返還は、修習終了後5年間据え置き→その後10年間の年賦返還が原則です。なお、繰上返還も可能です。
つまり、修習が終わってから5年間は返さなくてOK。その後、10年かけてゆっくり返していく形になります。弁護士として働き始めれば収入も安定するため、無理なく返していける設計になっています。
また、状況によっては返還の猶予や免除が認められることもあります。
・猶予:災害・傷病・失業等で返還が困難なとき
・免除:死亡や障害により返還が不可能になったとき(全部または一部)
■期限の利益喪失
次のような場合には、それまでの返還スケジュールにかかわらず、残額を一括返還しなければならないことがあるので注意してください。
・返還を遅滞した場合
・返還書類(返還明細書)を期限までに提出しなかった場合
・提出書類に虚偽があり、貸付を不正に受けたことが判明した場合
「返さなきゃいけない」という意識が薄れると、後で大変なことになります。貸与を受ける場合は、返還計画をしっかり立てておきましょう。
司法修習期間の生活費・交友費の実情
制度の説明が続きましたが、ここからは「実際のところ、修習生のお金事情ってどうなの?」というリアルな部分をお話しします。
給付金制度が整っているとはいえ、実際の生活はかなりカツカツになるケースが多いのが現実です。
ここでは、実際に修習生の間でよく耳にする"お金の悩み"を、具体的にまとめていきます。これから修習を迎える皆さんにとって、心の準備をしておくためにも、ぜひ知っておいてほしい内容です。
■家賃が一番の負担
修習生活で最も大きな負担となるのが、間違いなく家賃です。
住居給付金は最大月3.5万円ですが、それを超える部分はすべて自己負担となります。特に、地方から東京・大阪・名古屋などの都心部に来た修習生にとっては、この負担が本当に重くのしかかります。
都心部では、1Kのアパートでも家賃7万円〜10万円程度が相場です。住居給付金3.5万円を差し引いても、残り3.5万円〜6.5万円は自分で払わなければなりません。基本給付金が13.5万円ですから、家賃だけで給付金の半分近くが消えてしまう計算になります。
さらに、引越し直後には家具・家電の購入費もかかります。冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ・ベッド・カーテン…と揃えていくと、あっという間に10万円〜20万円の出費です。初期費用は本当に想像以上にかかります。
一方で、実家から通える「通学組」は家賃がかからないため、経済的には非常に有利です。「実家通いが羨ましい」という声は、修習生の間で本当によく聞かれます。
親の援助を受けている修習生も一定数おり、家計状況による格差がどうしても出やすいポイントでもあります。
■飲み会・交友費が重い
意外かもしれませんが、修習期間は想像以上に交友関係が広がる時期です。
司法試験という長く厳しい戦いを終えた解放感もあって、同期や先輩との飲み会が頻繁に開催されます。
1回の飲み会で3,000円〜5,000円。これが週に何度もあると、月に数万円が飲み会だけで消えていきます。「断りたいけど、せっかくの繋がりだし……」と思うと、なかなか断れないのが実情です。
また、修習地ごとのイベントや懇親会、修習仲間との旅行など、出費の機会は本当に多いです。給付金では賄いきれず、貯金を切り崩す修習生も少なくありません。
「交友費を節約しすぎて人間関係を築けなかった」というのも後悔の種になりますし、「飲み会に行きすぎて生活が苦しくなった」というのも避けたいところ。このバランスが、修習生にとっては意外と難しい課題だったりします。
■修習で必要なものは意外と少ない
「修習に入ったら、教材とかスーツとか、いろいろ買わなきゃいけないのでは?」と心配している方もいるかもしれません。
しかし実は、修習のために新たに購入が必要な物は、思っているほど多くありません。
・スーツやビジネスカバン:最低限1〜2着あればOK。毎日違うスーツを着る必要はない
・実務書:いわゆる「白表紙」と呼ばれる基本教材で十分。高額な専門書を買い揃える必要はない
・その他の備品:ノート・筆記用具など、学生時代のものがあれば事足りる
つまり、「修習のための教材購入でお金がかかる」というより、日々の生活費・家賃・交通費・交際費のほうが圧倒的に大きな支出になる、というのが実態です。
むしろ、修習開始前の引越し費用や家具家電の初期投資のほうが、よほど大きな出費になると考えておいたほうが良いでしょう。
■就活の交通費にも注意
見落としがちなのが、就職活動の交通費です。特に、地方で修習をしながら東京や大阪などの大都市圏での就職を希望する場合、面接のたびに新幹線や飛行機で移動する必要が出てきます。
たとえば、私自身は岐阜で修習をしていましたが、東京での就職を希望していました。面接のたびに新幹線を使って上京するのは、金銭的にも体力的にも本当にきつかったのを覚えています。
修習地と希望就職先が遠い場合には、できれば地方修習前に就職先を決めておくことを強くおすすめします。「就活の交通費だけで数十万円が飛んでいく」ということも、決して珍しくありません。
弁護士の初任給相場|修習後のキャリアと収入のリアル
ここまで、修習期間中の厳しいお金の話ばかりしてきましたが、最後に明るい話題をお届けします。
弁護士の初任給は、他の職種と比較しても非常に高い水準となります。
当社が実施した最新の修習生レポートによると、第77期の弁護士初任給の平均は783万円、中央値は600〜699万円という結果が出ています。修習生にとって、これは大きな魅力の一つといえるでしょう。
もちろん、弁護士は就職先によって働き方もキャリアの方向性も大きく異なります。大手法律事務所・中堅事務所・小規模事務所・企業内弁護士・公務員など、選択肢は多岐にわたります。
それでも、いずれの進路を選んでも、初任給としては十分に高額なラインであることは確かです。
また、弁護士になる年齢も人それぞれです。ストレート合格で20代前半の方もいれば、社会人経験を経て30代後半・40代で司法試験に合格する方もいます。同じ「初任給」でも、個々の背景は本当に多様です。
とはいえ、この水準の給与を「初めての社会人年収」として受け取れる職業は、そう多くありません。
修習期間中は金銭面で苦しい思いをすることもあるでしょう。給付金だけでは生活が厳しく、貯金を切り崩したり、親の援助を受けたりする方もいるかもしれません。
でも、修習を終えて弁護士になれば、一気に安定した収入を得られるという事実は、大きな希望であり、モチベーションになるはずです。
修習体験レポートのご案内|お金以外のリアルも紹介&就職サポートはリーガル・エージェンシー社へ
司法修習の実態は、給付金や生活費といった「お金の話」だけでは分からない部分がたくさんあります。
C&Rリーガル・エージェンシー社では、司法修習生・若手弁護士のリアルな声をまとめた「修習体験レポート」を多数掲載しています。
・修習地ごとの雰囲気の違い
・実務修習での学び
・集合修習の過ごし方
・就職活動のタイミングと進め方
・若手弁護士の日常
こうした「お金以外のリアル」も、ぜひチェックしてみてください。
体験レポートはこちらから
https://www.bengoshitenshoku.jp/shushoku
また、C&Rリーガル・エージェンシー社では、司法修習生・若手弁護士に特化した就職・転職支援サービスも提供しています。
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・修習前に内定を取っておきたい
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・年収・働き方の比較を客観的に知りたい
そんな方は、ぜひ一度プロのキャリアコンサルタントにご相談ください。修習中の不安を少しでも減らし、あなたのキャリアの可能性を最大化するお手伝いをさせていただきます。
修習期間は大変ですが、楽しいこともたくさんあります。そして、その先には必ず明るい未来が待っています。
この記事が、皆さんの修習生活を少しでも安心して迎えるための助けになれば幸いです。