業界トピックス

【79期向け】司法修習における集合修習の内容・流れ・ポイントを徹底解説│先輩方の声も紹介

INDEX
  • 集合修習とは?司法修習の中での位置づけ

  • 集合修習の全体スケジュールと流れ

  • 集合修習で学ぶ5つの主要科目

  • 模擬裁判・即日起案とは?修習生の実力を問う重要課題

  • 先輩修習生の声:印象に残った集合修習の学びとは

  • 【まとめ】集合修習は“実務家としての基礎”を築く最後のステップ

司法試験に合格したあと、多くの受験生が次に迎える大きなステップが「司法修習」です。その中でも、修習の総仕上げとして位置づけられているのが「集合修習」。全国の修習生が埼玉県和光市の司法研修所に集まり、裁判官・検察官・弁護士を目指す者としての基礎を固める期間です。
 
集合修習では、民事裁判・刑事裁判・検察・民事弁護・刑事弁護といった5つの主要科目を中心に、講義や演習、模擬裁判、即日起案などのカリキュラムが行われます。二回試験(司法修習生考試)を見据えた実践的な内容が多く、修習の集大成ともいえる学びの場です。
 
本記事では、79期修習生の方に向けて、集合修習の流れやカリキュラム、先輩修習生の声などをわかりやすく解説します。司法修習の全体像をつかみ、不安を少しでも解消する参考にしてください。

集合修習とは?司法修習の中での位置づけ

司法修習は、裁判官・検察官・弁護士として必要な実務能力を身につけるための、法曹教育の最終課程です。司法試験の合格後、修習生は約1年にわたり「導入修習」「実務修習」「集合修習」の3つのステージを順に経験していきます。
 
このうち集合修習は、司法修習の締めくくりに位置づけられる重要な期間です。実務修習で得た経験を整理・定着させ、法的思考力・判断力をより高い水準へと引き上げることが目的とされています。
 
全国の修習生が埼玉県和光市の司法研修所に集まり、約2か月間にわたって講義や演習、模擬裁判、起案演習などの実践的なカリキュラムを受講します。
 
また、この期間は「二回試験(司法修習生考試)」を控えたタイミングでもあり、試験本番に向けた最終調整としての意味合いも持っています。言い換えれば、集合修習は実務家としての型を仕上げる場ともいえるでしょう。
 
集合修習は、修習生を2つのグループ(A班・B班)に分けて実施されます。A班は8月〜9月頃、B班は10月〜11月頃に集合修習を行い、もう一方の期間には「選択型実務修習」を行う形式です。この班分けは修習地によって機械的に決まり、希望制ではありません。一般に、A班は東京・大阪などの都市部、B班はそれ以外の地域に割り振られる傾向があります。
 
なお、「B班のほうが移動が少なく、集合修習を終えてすぐに二回試験を受けられるため有利」といった声も一部にはありますが、カリキュラムや評価の内容に大きな差はありません。
 
集合修習の期間は、約1か月半〜2か月。平日を中心に講義・演習・即日起案がぎっしりと組まれ、寮での生活や同期との交流も含めて、法曹としての視野を深める濃密な時間となります。

集合修習の全体スケジュールと流れ

集合修習の期間は、例年およそ2か月前後。開講式を皮切りに、各科目の講義や演習、模擬裁判、即日起案などが順次行われます。
 
修習全体の流れは次のとおりです。
 
① 開講式・ガイダンス
司法研修所長による挨拶のほか、修習全体の目的や進め方、生活ルールなどの説明が行われます。
 
② 各科目の修習(講義・演習)
民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護の5科目を中心に、講義・グループ討論・ケース演習が実施されます。
 
③ 模擬裁判・即日起案
クラス単位で模擬事件を扱い、訴訟活動を通して法的分析力と実践感覚を養います。即日起案は二回試験を意識した実戦形式の起案訓練です。
 
④ 講義・課外プログラム
著名な弁護士・検察官・裁判官などによる特別講義も行われ、幅広い法曹観を養う機会となります。
 
集合修習の1日は、午前・午後それぞれ2コマの講義・演習で構成されます。
 
一日の例:
9:50〜11:40 民事裁判の講義
12:40〜14:30 刑事弁護の演習
14:45〜16:35 検察講義または模擬裁判
 
講義後は自習時間や復習のほか、クラス単位の打合せやグループ課題に充てられることもあります。
 
規則正しいスケジュールの中で、修習生同士が学びを共有しながら、法律実務の基礎を固めていきます。

集合修習で学ぶ5つの主要科目

集合修習では、司法修習全体で学ぶ5つの主要分野を改めて体系的に整理します。どの科目も、二回試験と実務に直結する重要な内容です。

 

■民事裁判修習:裁判官としての判断力を磨く

実際の裁判記録をもとに、事実認定や法的評価を行う訴訟運営の演習を行います。模擬事件の即日起案や評議を通じて、裁判官の視点で論理的に考える力を養います。

 

■刑事裁判修習:証拠評価と量刑判断を学ぶ

刑事事件における証拠の取扱いや量刑判断のプロセスを実践的に学びます。模擬公判形式で、判決起案や評議演習なども実施されます。

 

■検察修習:捜査・公判の一連の流れを理解

検察官の役割を中心に、捜査から公判維持までの流れを体系的に学習します。証拠整理や論告作成、量刑意見の検討など、訴訟を支える法的思考を身につけます。

 

■民事弁護修習:依頼者対応と書面作成を実践

依頼者からのヒアリング、訴状や答弁書の作成、交渉方針の検討など、弁護士業務の基本を体験します。実務修習での経験を整理し、実践的な弁護士スキルを磨く科目です。

 

■刑事弁護修習:弁護人としての実践的対応力を学ぶ

被告人との接見、弁論要旨・弁論書の作成、尋問計画の立案など、弁護活動全般を通じて防御活動のあり方を学びます。裁判官・検察官の視点を踏まえた戦略的な弁護姿勢が求められます。

模擬裁判・即日起案とは?修習生の実力を問う重要課題

集合修習の中でも特に重要なのが、模擬裁判と即日起案です。いずれも、司法修習の集大成ともいえる「二回試験(司法修習生考試)」を意識した実践型の訓練であり、修習生の実力を試す最も緊張感のあるプログラムです。

 

■模擬裁判:理論と実務をつなぐ総合演習

模擬裁判では、民事・刑事のそれぞれで、修習用にアレンジされた事件記録をもとに、訴訟の一連の流れをグループ単位で体験します。裁判官・検察官・弁護士の立場に分かれ、主張整理、証拠提出、尋問、評議(評決)までを自分たちで進行。まさに「法廷実務の再現」といえる内容です。
 
たとえば、民事模擬裁判では原告代理人・被告代理人の両チームを設け、準備書面や尋問事項を検討し、最終的に判決に至るまでのプロセスを学びます。一方、刑事模擬裁判では、起訴状に基づく公判手続を想定し、冒頭陳述や証人尋問、論告・弁論を経て評議を行う流れを実践します。
 
配役は修習生同士で割り振られ、当事者役(被告人・証人など)を演じることもあります。チーム全員で協力しながら裁判を組み立てる過程を通して、訴訟手続の理解が深まり、論理構成力や協働性も磨かれるのです。

■即日起案:二回試験を意識した“実戦型トレーニング”

即日起案とは、当日に配布される事件記録を読み込み、制限時間内に答案を作成する課題です。民事裁判・刑事裁判・検察・民事弁護・刑事弁護の5科目すべてで行われ、各科目2回ずつ、計10回前後実施されます。
 
起案の内容は、二回試験を想定した実践的な設問構成。6〜7時間ほどで100ページ前後の記録を読み込み、30〜40ページに及ぶ起案を仕上げるため、高い集中力と構成力が求められます。
 
答案は教官により採点・講評され、成績(A〜E評価)がつくことも。さらに、優秀答案がクラス内で共有される場合もあり、他の修習生の答案を読むことで自分の弱点を確認する機会にもなります。
 
なお、集合修習では各科目2回の即日起案が行われますが、特に重要なのが2回目の起案です。
 
これは、実務修習を終えたあとに実施されるもので、現場で得た経験を理論的に整理し直す「総仕上げ」と位置づけられています。1回目の起案が「基礎の確認」だとすれば、2回目は「実務を理論に昇華させる」段階。二回試験とほぼ同様の形式・難易度で出題されるため、実戦感覚と時間配分、論理展開のすべてが試されます。
 
多くの修習生が「2回目の即日起案を境に自信がついた」「弱点が明確になった」と語るように、この演習は二回試験のリハーサルとして、修習の集大成に位置づけられています。

先輩修習生の声:印象に残った集合修習の学びとは

ここでは、実際に集合修習を経験した先輩修習生たちの“生の声”を紹介します。
 
(年齢・性別・志望進路・修習地・班別は当時のものです)
 
■20代・男性・検察官志望(千葉修習・A班)
刑事裁判の模擬裁判では検察官役で被害者の主尋問を担当しました。3日間ほどで争点整理から判決まで進めるタイトなスケジュールなので準備は放課後まで及びましたが、どのような質問をするか、図面をどのように示すか、反対尋問に対する異議をどう述べるかといった刑事裁判の基礎について身を以て体験できました。
 
■30代前半・男性・弁護士志望(さいたま修習・A班)
集合修習は二回試験対策に重きを置いていたので、集合起案がいい経験となりました。集合起案は、試験監督がいないし、連続した日程で行われないので、模試としての機能は果たしていませんでしたが、記録を読んで様々な出題形式に対応する数少ない機会なので必ず受験するようにしていました。なお、各科目2回ある起案を両日とも欠席すると二回試験を受けられなくなるので要注意です。
 
■20代・男性・弁護士志望(大阪修習・A班)
民事模擬裁判で、証人役を務めた経験が印象に残っています。集合修習の模擬裁判は時間外の事情聴取も含め、かなりリアルを意識して行うのですが、こちらが持っている情報量が多すぎて、何を話すべきなのかかなり悩みました。争点整理を踏まえた代理人役の聴取の重要性を強く感じました。
 
■20代・女性・弁護士志望(京都修習・A班)
民事模擬裁判の授業では、法廷教室で証人尋問(反対尋問)の担当をしました。書証等の証拠を証人に提示しながら尋問する方法やタイミングが難しく感じました。また、証人から証言を適切に引き出すことの難しさを改めて感じました。
 
■20代・男性・裁判官志望(仙台修習・B班)
民事の模擬裁判で裁判官役を担当したのですが、裁判官チームで争点の整理に関して合議をした経験が印象に残っています。模擬裁判では、裁判官チームは当事者の主張を事前に想定し、最終的にどこを争点とするかを考える必要がありますが、活発に意見が交わされ大変楽しかったです。
 
■20代・男性・弁護士志望(水戸修習・B班)
各カリキュラムで、任官(裁判官・検察官)予定の修習生が積極的に発言している様子が印象的でした。特に、グループワークの際にはとても助けられました。起案についても、かなり勉強している様子が伝わってきました。

【まとめ】集合修習は“実務家としての基礎”を築く最後のステップ

集合修習は、司法修習の締めくくりとして、法曹としての「型」を固める期間です。講義や模擬裁判、即日起案などを通じて、実務の全体像を体系的に整理し、法律家としての思考力・判断力を鍛えます。
 
先輩修習生の声からもわかるように、この期間は決して楽ではありません。7時間に及ぶ起案を何度もこなす体力、仲間と議論を重ねる集中力、そして本番の二回試験を意識した準備。いずれも、法曹としてのキャリアを歩み出す前の“総仕上げ”にふさわしい試練です。
 
一方で、全国から集まった同期との交流や、模擬裁判を通じて得られる実務感覚は、一生の財産となります。集合修習を乗り越えた経験は、どのような進路を選んでも、法律家としての自信と軸を支える力になるはずです。
 
最後に、司法修習や二回試験、修習後のキャリア形成についてもっと知りたい方は、「大学生・法科大学院生・司法修習生のキャリア支援サイトをチェックしてみてください。修習体験談や79期向け求人情報など、次のステップにつながる情報を掲載しています。

中澤 泉(弁護士)

弁護士事務所にて債務整理、交通事故、離婚、相続といった幅広い分野の案件を担当した後、メーカーの法務部で企業法務の経験を積んでまいりました。 事務所勤務時にはウェブサイトの立ち上げにも従事し、現在は法律分野を中心にフリーランスのライター・編集者として活動しています。

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