業界トピックス

司法試験の制度変更・日程変更で何が変わるのか

目次
  • 1.司法試験の日程が変更されました

  • 2.司法試験受験生への影響

  • 3.77期司法修習生の就職活動への影響

  • 4.転職市場への影響

  • 5.まとめ

1.司法試験の日程が変更されました

2023年に実施される司法試験から、受験資格や試験日程などが変更となります。これは、法科大学院の魅力を高めるための施策の一環です。変更の内容については「日本最難関資格?司法試験とは」をご覧ください。

この制度変更・日程変更によって、司法試験受験生・司法修習生の就職市場、弁護士の転職市場にどのような影響が出るのでしょうか?ここでは、2022年12月時点で予想されている影響について解説します。

2.司法試験受験生への影響

従来は5月に実施されていた司法試験が、2023年から7月に実施されることになります。これに伴い、予備試験の実施時期も、2か月先送りとなりました。具体的な試験日については、令和5年司法試験の実施日程等について及び令和5年司法試験予備試験の実施日程等についてをご覧ください。

予備試験経由で司法試験合格を目指す受験生にとっては、試験日程が2か月先送りになった分、準備期間が長くなるので、より充実した勉強ができると言えるでしょう。

影響が大きいのは法科大学院生です。そもそも試験日程の変更は、3月の法科大学院修了後に司法試験を受験した場合、合格しても11月の司法修習開始までの間に8か月ものギャップタームが生じてしまうという問題意識に基づいています。これを解消するために、法科大学院在学中の7月に司法試験を受験し、合格すれば、法科大学院修了直後の3月中から司法修習を開始することが可能となりました。

法科大学院生にとって、司法試験に合格できれば、ギャップタームなしで司法修習生になれるので、望ましい制度変更・日程変更と言えます。しかし、従来は、法科大学院在学中は基礎学力の向上と単位の取得に注力し、法科大学院修了後に集中して司法試験対策に特化することができていました。今後は、在学中受験のために、法科大学院の授業と司法試験対策の両立を強いられます。合格できれば得られるものは大きい反面、合格のハードルは高くなったと言えるかも知れません。


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3.77期司法修習生の就職活動への影響

2023年7月から実施される令和5年度司法試験の受験者数は、前年よりも増加する可能性があります。2023年3月に法科大学院を修了した受験生に加えて、2023年7月において法科大学院在学中の受験生も受験することになるからです。もっとも、司法試験の合格者数増は、司法修習生の採用者数増とほぼ同義であり、司法修習生の採用を増やすためには予算も人手も必要となるため、合格者数が大幅に増えるとは予想しがたい状況です。

令和5年度司法試験に合格し、2024年3月から司法修習を開始する77期司法修習生が、司法修習を終了するのは2025年4月ころとなる見込みです。これに伴い、就職活動の時期にも変化が生じると考えられます。

多くの大規模法律事務所が、優秀な学生を確保するために、学部や法科大学院の夏季休暇中にサマークラークを実施し、司法試験の合格発表を待たずに内定を出しています。制度変更・日程変更後は、サマークラークの実施前に司法試験の試験日を迎える上に、法科大学院在学中の司法試験受験が認められるようになるため、法科大学院生がサマークラークに参加するべき時期が大幅に前倒しになると予想されます。実際に、2022年実施のサマークラークの募集対象を、2023年7月の司法試験受験予定者としていた法律事務所が多数ありました。また、多くの法律事務所が、2023年7月の司法試験受験予定者を対象に、ウィンタークラークやスプリングクラークを募集しています。法科大学院の既修者コースに在籍している場合、これまでは2年目の夏にサマークラークに参加すれば良かったのに、これからは1年目のうちに就職活動を本格的に行う、慌ただしい生活を送ることになるのでしょう。

大規模法律事務所への就職を希望していない場合、77期司法修習生の就職は、例年よりもやや有利となるかも知れません。76期司法修習生の一斉登録日は2023年12月で77期は2025年4月と16か月の間隔が空くため、中小規模の法律事務所の新人育成余力と新人採用意欲が例年よりも高まる可能性があります。

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4.転職市場への影響

弁護士は、他の職業と比較して人材の流動性が高い職業です。弁護士という資格があれば、法律事務所で勤務することも、企業組織の中で稼働することも、独立して一人で法律事務所を経営することも可能であり、一所懸命に働く動機づけに乏しいからでしょう。また、弁護士業界には繁忙期や閑散期がないため、どの時期は転職しやすいという季節変動もありません。

弁護士には、職業経験だけでなく人生経験も必要となる上に、事務処理能力に加えて営業能力も求められます。そのため、新人が即戦力として採用されることはほぼありません。法律事務所が新人を採用する意図は、将来投資か恩返しです。大規模法律事務所は、毎年新人を大量に採用しており、これを教育するためのカリキュラムやノウハウを備えています。そこで鍛え上げられた新人は、いずれパートナーに昇格して、法律事務所に大きな利益をもたらすことになります。中小規模の法律事務所にとっては、新人を採用するメリットは、経済的には存在しません。しかし、どの弁護士も、自分の新人時代は先輩弁護士に鍛えてもらったから今があると考えているので、先輩ひいては弁護士業界への恩返しのために、今度は自分が後輩を育てる順番だと考えて新人を採用します。そして、新人が一人前になれば独立させて、さらに次の世代を育ててくれることにも期待しています。弁護士業界には、上から受けた恩は下に返せという伝統が根付いています。もっとも、新人を育てる余力はないので、即戦力となる経験弁護士の中途採用しか行わないという方針を採っている法律事務所も珍しくありません。

法律事務所によって採用方針は様々ですが、いずれによせ、新人弁護士を採用しても、直ちに利益をもたらしてくれるとは考えていません。これは、弁護士業界においては、就職市場と転職市場が切り離されていることを意味しています。新人が大量に採用される時期だから転職市場が動きづらいということはありません。

元々季節変動がなく、就職市場の影響も受けないので、司法試験の制度変更・日程変更が、弁護士の転職市場に与える影響はほぼないと考えられます。

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5.まとめ

司法試験の制度変更・日程変更は、法科大学院生に大きな影響を与えるものです。しかし、司法試験に合格した後の就職活動・転職活動については大きな影響は生じないように思えます。C&Rリーガル・エージェンシー社は、リーガル・プロフェッショナルを支える一生涯のパートナーとして、法科大学院生に向けた就職情報の提供から、司法修習生の就職支援、経験弁護士の転職支援まで、様々なサービスを提供しております。就職/転職に向けた疑問点やご関心がおありでしたら、場面を問わず、お気軽にご相談ください

記事提供ライター

弁護士
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。

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