司法修習生に給与は出るのか
- INDEX
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1.司法修習生の給与はいくら?
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2.司法修習生の「給費制」とは?
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3.給付金を受けるために必要な手続き
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4.給付金は税金の対象?
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5.まとめ
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1.司法修習生の給与はいくら?
司法修習生が生活を維持していくために、第71期司法修習生からは修習給付金が支給されています(裁判所法67条の2)。修習給付金の種類は、基本給付金、住居給付金、移転給付金(同条2項)となっており、基本給付金は誰でも受け取ることができますが、住居給付金は司法修習のために住居を賃借した場合に、移転給付金は司法修習のために住居を移転した場合にのみ支給されます。司法修習生の修習給付金の給付に関する規則によると、基本給付金は月135,000円(同規則2条1項)、住居給付金は月35,000円(同規則4条2項)、移転給付金は路程に応じて46,500円から141,000円です。これらの修習給付金は法律的には給与ではないのですが、日常会話の中では給与と呼ばれることもあります。
2.司法修習生の「給費制」とは?
この批判と共に、司法修習生の人数の増加に伴う財政的な問題も生じたため、新第65期司法修習生から第71期司法修習生までは給費制が廃止されていました。当時の裁判所法67条の2第1項は「最高裁判所は…司法修習生に対し、その申請により、無利息で、修習資金…を貸与する」となっています。この期間は、給費制ではなく貸与制と呼ばれています。
給費制の廃止によって司法修習生は経済的に苦しい立場に追いやられました。司法修習生は、多くの場合複数回の引っ越しを強いられるにもかかわらず働いてお金を稼ぐことが許されません。なんら金銭的な補償がなされないのはひどすぎる話です。また、貸与制への移行もあってか法曹志望者は激減し、司法修習生の人数も当初想定されていたほどには増加しませんでした。そこで、第71期司法修習生からは修習給付金が支給されるようになりました。
もっとも、裁判所法67条の2第1項には「司法修習生には…修習給付金を支給する。」とあり、現行第65期以前の給費制とは文言が異なっています。金額的にも、かつては公務員に準じて月額200,000円以上の給与(修習地によって異なりました。)を受け取れていたのに、基本給付金は月額135,000円となっており、大きく減額されました。受け取れる金額が以前よりも減少したことで生活を維持できなくなる修習生が出ることも想定されるため、裁判所法67条の3第1項は「最高裁判所は…司法修習生に対し、その申請により、無利息で、修習専念資金(司法修習生がその修習に専念することを確保するための資金であって、修習給付金の支給を受けてもなお必要なものをいう。…)を貸与する」として、貸与制も併存させています。
同じ給費制といっても、現行第65期以前の給費制と71期以降の給費制とでは内容が異なっており、根拠条文の文言の変化通りに、給与的なものから生活を維持する一助としての給付になったと理解するべきでしょう。
3.給付金を受けるために必要な手続き
参考までに、第75期司法修習生が修習給付金を受け取るための手続きは以下のようなものです。基本給付金を受け取るためには、定められた日(司法修習開始前)までに、振込口座届出書を経理課経理係に提出する必要があります。振込口座として指定できない銀行もあるので、注意が必要です。住居給付金を受け取るためには、要件を具備した日から7日以内に住居届と賃貸借契約書の写し(追完可)を、総務課人事係まで提出する必要があります。移転給付金を受け取るためには、移転をする原因となった修習の開始の日の翌日から起算して7日以内に移転届を、経理課経理係まで提出する必要があります。修習給付金の種類によって提出先が異なっていることにも注意が必要です。
4.給付金は税金の対象?
修習給付金は基本給付金だけでも毎月135,000円になるので、多くの場合、確定申告が必要になります(司法修習の開始時期によっては確定申告が不要となる年も想定されます。)。確定申告というと必要経費を控除したくなりますが、司法修習は無償で提供されており、司法修習生は司法修習を受けることと引き換えに修習給付金を受け取っているわけではないので、司法修習を受けるために必要となった交通費などは必要経費として控除できないとされています。
修習給付金を受け取ることにより家族の社会保険の被扶養者からも外れることになるので、国民健康保険等への加入も必要です。
5.まとめ
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記事提供ライター
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。