業界トピックス

企業法務の業務内容とは?5つの分類(予防・臨床・戦略・商事・コンプライアンス法務)を未経験者にもわかりやすく解説|法務職に就く前に知っておきたい基礎知識

INDEX
  • 企業法務とは?──一般民事との違い

  • ① 予防法務:企業トラブルを未然に防ぐ法務の基本

  • ② 臨床法務:トラブル発生時の初動対応

  • ③ 戦略法務:経営戦略を支える攻めの法務

  • ④ 商事法務:会社運営の根幹を支える法律業務

  • ⑤ コンプライアンス法務:企業の信頼を守る仕組みづくり

  • 企業法務5分類を知れば、法務キャリアの可能性が広がる

  • 企業法務に転職したい方へのアドバイス──未経験からの挑戦も可能

  • C&Rリーガル・エージェンシー社への登録で次のステップへ

企業法務は、契約書のチェックや紛争対応にとどまらず、経営戦略への関与や社内体制の整備まで、多岐にわたる業務を担う重要な部門です。
 
本記事では、企業法務の代表的な5分類(予防法務・臨床法務・戦略法務・商事法務・コンプライアンス法務)をわかりやすく解説し、それぞれの役割や実務のポイントを丁寧に紹介します。
 
転職を検討している法務経験者はもちろん、これから法務職を目指す未経験の方にも役立つ基礎知識を網羅していますので、ぜひ最後までご覧ください。

企業法務とは?──一般民事との違い

企業法務とは、企業が法令を遵守しながら安定的に事業を継続・発展させるために、法律の専門知識を活用して支援する業務領域です。
契約書のチェックや規程整備、リスクの予防、経営判断のサポートなど、多岐にわたる法務業務を担います。
 
企業法務の目的や、一般民事との違いについては以下で詳しく解説します。

■企業法務の目的:企業の経営活動を法律面から支える

企業法務の最大の目的は、法令を遵守しながら企業が健全に発展できるように法的な支援を提供することです。
 
たとえば、取引契約のチェックによって損害賠償リスクを減らしたり、適法な業務フローを設計することで行政処分を回避したりと、企業の活動を円滑にするための仕組みづくりが主な役割です。

■一般民事との主な違い:関係当事者・目的・スタンス

一般民事は、個人や企業間の金銭トラブル、損害賠償請求、離婚や相続などの家庭内の法律問題など、主に「個別紛争の解決」が中心です。対応は多くの場合、訴訟や交渉といった“事後的”な対応に重点が置かれます。
 
一方、企業法務では「問題が起きる前に防ぐ」姿勢が重視され、予防法務やコンプライアンス整備、経営支援といった“事前的”な対応が主軸になります。関係当事者も、個人ではなく法人や行政機関であることが多く、取り扱う法領域も商法、会社法、独禁法、個人情報保護法など、より専門的・制度的です。
 
また、企業法務は単なる法的アドバイスにとどまらず、経営者の意思決定に法的観点から関与し、会社の戦略実行を支えるという役割も求められます。この点で、企業法務は“企業の中のブレーン”としての性質を強く持っています。

① 予防法務:企業トラブルを未然に防ぐ法務の基本

予防法務とは、トラブルや法的リスクが顕在化する前に、その“芽”を見つけて摘み取る役割を持つ法務です。特に、近年は情報漏えいや労働トラブル、取引先との契約問題など、企業にとってのリスクが多様化しています。こうした複雑な課題に対して、実務的な予防策を講じることが重要となっています。

■社内ルール・規程整備、契約リスクの低減、研修など

予防法務が行う主な業務には、契約書の事前審査、取引条件の精査、社内ルールの整備、そして社員への法務研修の実施などがあります。これにより、組織全体でリスク感度を高め、ミスや違反の発生を未然に防ぐ体制をつくります。各部門と密に連携しながら、現場の事情に合ったルールやマニュアルを整備することが、実効性のある予防法務につながります。

■トラブルの“芽”を摘む=企業の健全な運営の土台

経営上の損害は、多くが初期の小さなミスや見落としから始まります。予防法務はそれらを未然に発見し、対処することで、企業の信頼や安定を守る役割を果たします。日常的に発生する法的課題に対して、経営陣に助言を行うなど、法務が組織の「盾」として機能するのが理想です。

② 臨床法務:トラブル発生時の初動対応

臨床法務とは、トラブルや紛争が実際に発生したときに、最初に対応する法務機能のことです。特に、従業員からの相談対応や、社内外との法的調整を通じて、問題が拡大しないよう初期の段階で適切な措置をとることが求められます。

 

■社員相談・紛争初期対応・社内調整

臨床法務の主要な業務は、従業員からの法律相談、労務問題の初期対応、クレームや取引先とのトラブル対応などです。これらを速やかに処理することで、裁判や訴訟といった大きな問題への発展を防ぎます。また、臨床法務は社内の複数部署と連携して対応方針を決定することも多く、組織横断的な調整力が必要です。

 

■社内で「法律のかかりつけ医」的ポジション

臨床法務は、社内に安心感をもたらす存在です。問題を抱える従業員がすぐに相談できる窓口があることは、職場の健全性を高めるうえでも重要です。また、早期に事実確認と対処方針を提示することで、社内の意思決定のスピードと質を向上させる効果も期待されます。

③ 戦略法務:経営戦略を支える攻めの法務

戦略法務とは、企業の中長期的な経営戦略に法務が関与し、事業成長を後押しする法務領域です。単なるリスクの回避ではなく、経営陣のパートナーとして法務が関わることが求められます。

■M&A、海外展開、新規事業開発、業務提携などの支援

戦略法務では、M&A(企業の合併・買収)や海外子会社の設立、新規事業の立ち上げ、他社との資本業務提携など、企業の成長戦略を法務面から支援します。
 
たとえば、契約スキームの設計、法的リスクの洗い出し、国内外の法制度との整合性確認などを行い、意思決定の土台をつくります。

■経営層と対話し、事業を進める「攻めの法務」

戦略法務の担当者は、法的な観点だけでなく、ビジネス感覚や数値感覚を持って、経営陣の意思決定に参加します。
 
経営陣との直接的な対話を通じて、ビジネスリスクを最小化しつつ企業の価値を最大化するための法務支援が求められます。

④ 商事法務:会社運営の根幹を支える法律業務

商事法務は、会社の組織運営に関わる法的業務を担う分野であり、会社法を中心とした法的な整備と実務を遂行します。

 

■株主総会、取締役会、会社登記など会社法への対応

商事法務では、定時株主総会の議案作成・通知、取締役会の議事録管理、組織変更や役員変更に関する登記申請などを行います。
 
また、コーポレート・ガバナンスコードの実務対応、社外取締役の選任支援、適正な開示情報の作成も求められます。

■ガバナンス・ディスクロージャーの適正管理を担う

商事法務の成果は、対外的な信頼と直結します。

ここでいうディスクロージャー(情報開示)とは、会社の経営状況や財務情報、ガバナンス体制などを、株主や投資家、取引先などの利害関係者に向けて正確かつタイムリーに開示することを指します。
とくに上場企業では、法令に基づく開示義務を果たすことが企業の信頼性に直結するため、重要な法務業務のひとつです。
 
不備のない登記、正確な情報開示、ガバナンス強化を通じて、投資家・取引先・社員などのステークホルダーとの信頼関係を支えるのがこの業務の重要な役割です。

⑤ コンプライアンス法務:企業の信頼を守る仕組みづくり

コンプライアンス法務は、企業が法令を遵守しつつ、社会的責任や倫理観に基づいて行動するための社内体制を整備する業務です。
 
コンプライアンスは単なる法令遵守にとどまらず、企業文化として根付かせることが重視されています。

■法令順守体制の整備、教育、内部通報制度の構築

内部通報制度の設計と運用、行動規範の整備、社員教育の実施を通じて、従業員が自らリスクに気づき、適切に行動できるようにする体制を構築します。これにより、不正の早期発見・是正が可能となり、組織全体の透明性が向上します。

 

■不祥事の予防とレピュテーションリスクの管理

不祥事は、企業にとって信用・評判・業績すべてに直結する重大なリスクです。コンプライアンス法務では、事前のリスク察知と是正の仕組みづくりを通じて、不正の温床を排除し、レピュテーションリスク(評判リスク)をコントロールします。
 
具体的には、内部監査結果のフィードバック、匿名通報制度の運用強化、倫理違反に対する即時対応ルールの整備などが挙げられます。万が一の事態が発生した際も、法務が初動対応にあたることで、企業への信頼毀損を最小限に抑えることが可能になります。

企業法務5分類を知れば、法務キャリアの可能性が広がる

企業法務の5分類(予防法務・臨床法務・戦略法務・商事法務・コンプライアンス法務)を理解することで、自分の適性や志向に合ったキャリアパスを描きやすくなります。法務職は契約・訴訟・社内体制構築など幅広い領域にまたがるため、自分が「どの業務に向いているか」「何を伸ばしたいか」を把握することが重要です。

 

■「どこから入るか」「どこを極めるか」が明確になる

自分のスキルや志向に応じて、まず取り組むべき法務分野を明確にすることができます。たとえば、ロジックやリスク管理が得意なら予防法務、調整力に自信があるなら臨床法務、経営志向が強いなら戦略法務など、自分に合った分野を選択することが可能です。

 

■スペシャリストとゼネラリスト、どちらも目指せる

ある分野に特化して高度な専門性を磨くスペシャリストも、複数領域を横断して法務部門全体を支えるゼネラリストも、企業法務ではいずれも高く評価されます。キャリアの段階や企業規模に応じて、柔軟にキャリアの舵取りができる点も魅力です。

 

■未経験者にとっての“最初の一歩”が見つかる

法律の実務経験がない人でも、企業法務の5分類を理解することで「まずは予防法務の補助業務から」「契約レビューから始めてスキルアップ」など、具体的なスタート地点を決めやすくなります。特にバックオフィスや管理部門出身者にとっては、コンプライアンス法務や臨床法務からのアプローチがしやすい傾向にあります。

 

企業法務に転職したい方へのアドバイス──未経験からの挑戦も可能

法務未経験でも、企業法務の全体像と業務分類を理解しておけば、ポテンシャルを評価されやすくなります。経験者であれば、業務内容を分類して言語化できることが、転職成功の大きな鍵となります。

 

■経験者・未経験者それぞれに求められるスキルとは?

経験者には、法的判断力や契約実務の精度、業務推進力が求められます。一方、未経験者には、論理的思考力・リスク感度・部門連携の意識などが期待されます。法務は“育成可能な専門職”であるため、素養や伸びしろを重視する企業も増えています。

■履歴書・職務経歴書でアピールすべき「業務分類別の実績」

履歴書や職務経歴書では、自分が携わった業務を「予防法務(契約審査、規程整備)」「商事法務(取締役会対応)」など、分類に即して整理すると、採用担当者に伝わりやすくなります。分類ごとの成果や取り組み姿勢を明記することで、自身の強みと適性を明確に示せます。

 

C&Rリーガル・エージェンシー社への登録で次のステップへ

私たちC&Rリーガル・エージェンシー社は、法務領域に特化した転職支援エージェントとして、法務経験者のキャリアアップはもちろん、未経験から法務職を目指す方のサポートにも力を入れています。
 
ご登録いただいた方には、これまでのご経験やご希望に基づき、「予防法務を強化したい企業」や「戦略法務に挑戦できるポジション」など、ご希望にマッチする求人をご紹介しています。また、転職活動にあたっての不安や疑問には、専門のエージェントが丁寧に対応し、履歴書・職務経歴書の作成支援から面接対策まで一貫してサポートいたします。
 
企業法務の5分類を理解し、自分の志向に合ったキャリアを築くためにも、まずはお気軽にご相談ください。法務人材の専門支援会社として、次の一歩をともに考えてまいります。

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記事提供ライター 中澤 泉(弁護士)

弁護士事務所にて債務整理、交通事故、離婚、相続といった幅広い分野の案件を担当した後、メーカーの法務部で企業法務の経験を積んでまいりました。
事務所勤務時にはウェブサイトの立ち上げにも従事し、現在は法律分野を中心にフリーランスのライター・編集者として活動しています。

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