弁護士の文章はなぜ読みづらいのか|弁護士や法務の転職・求人情報なら「弁護士転職.jp」

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弁護士の文章はなぜ読みづらいのか

目次
  • 1.はじめに

  • 2.弁護士の文章のここがダメ、裁判書面はここがヘン

  • 3.弁護士の釈明

  • 4.まとめ

1.はじめに

弁護士が書いた文章を読んだことがある人の多くは、とても読みづらいと感じるのではないでしょうか。弁護士になるくらいですから学生時代の国語の成績は良かったはずです。それなのに読みやすい文章が書けない。法律の勉強をしすぎて人間の心を失ったと疑われているかも知れませんが、実は、弁護士の文章の読みづらさには理由があるのです。ここでは、弁護士が書く文章はなぜ読みづらいのか問題点を指摘した上で、弁護士の立場からの釈明をしたいと思います。

2.弁護士の文章のここがダメ、裁判書面はここがヘン

弁護士の文章の弱点として筆者が自覚しているのは、一文が長いこと、読点が多いこと、同じ語尾を繰り返すこと、の3点です。筆者はこれらに陥らないように注意を払いながらコラムを書いています。

裁判書面を読んだことがある方は、和暦を用いていること、読点の代わりにカンマが使われていること、急に話題が変わる支離滅裂な文章になっていること、に読みづらさを感じるのではないかと思います。弁護士も、裁判書面のルールを面倒に感じながら、守ったり守らなかったりしています(和暦やカンマを絶対に使わない反骨心溢れる弁護士もいます。)。

3.弁護士の釈明

3-1.一文が長くなるのは完全性を求めているから

弁護士も論文試験の訓練を受けているので一文一意は意識しています。しかし、弁護士が書く文章は、多くの場合、複雑な条件分岐を説明するものです。例えば、「乙が契約書〇条の規定に違反して〇をしなかったことにより甲が〇できなくなった場合には、乙に契約書〇条に規定する〇のような事情がある場合を除いて、乙は契約書〇条にある〇円の違約金だけでなく契約書〇条にある〇円の罰金も支払う必要があります。」というようなものです。ここでは省略部分が多いのでそこまで長い文章になりませんでしたが、実際にはこの倍以上の長さになるでしょう。一文一意を守っていますし、不必要な部分はないはずです。依頼者は、今回はいくら請求できるのか、いくら支払わなければならないのか、という結論だけを求めており、法的な理屈を求めているわけではないことは弁護士も理解しています。しかし、弁護士が恐れるのは、原則としていくら請求できます、という発言だけを切り取られ、例外的な事情の発生時に依頼者から懲戒請求を受けることです。だから弁護士は、職責である説明責任を果たすために、文章の完全性に拘っているのです。コンピュータプログラミングの経験がある方には、命令文が長くなることと同じ理屈だと納得していただけるのではないでしょうか。

3-2.読点が多いのは公文書のルールだから

読点は本来不要なもので、専ら読み手の便宜のために用いられるはずです。読みやすさを考えるならば、一文が長くなり一呼吸で読めなくなったタイミングで読点を打つべきです。しかし、公文書には「くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)」というルールがあります。
この中には「ワタクシハ、オニガシマヘ、オニタイヂニ、イキマスカラ、」という頭がくらくらしてくる例文も示されています。お上の考えに従うならば、弁護士の読点の多い文章こそが文章のあるべき姿ということになるのでしょう。また、弁護士は、日本語において省略されがちな主語を必ず明示するように強く意識しています。弁護士業務では誰の誰に対する権利であるかが重要だからです。公文書のルールに明記されてはいないものの、例文中には主語の後に読点が打たれていることが多いため、主語の後には読点が続くことが通例です。文頭に主語と読点が加わることも弁護士の文章に読点が多くなる理由です。

3-3.同じ語尾を繰り返すのは内容をわかりやすくするためのテクニック

弁護士が同じ語尾を繰り返す理由についてははっきりとしたことが言えないのですが、筆者の場合、司法試験受験生時代に学んだテクニックが理由です。そのテクニックとは、論理的階層構造の中で同じ階層にある文は単語を入れ替えただけの全く同じ文調にする、というものです。箇条書きをイメージしていただくと筆者が教わったテクニックが伝わりやすいと思います。そして、同じ語尾を繰り返した後に異なる語尾を登場させれば、読者に違和感を与え、ここで階層が変わると気付いてもらいやすいでしょう。筆者は、事務的な文書においては、日本語的な美しさよりも内容のわかりやすさを重視して、敢えて同じ語尾を繰り返すことがあります。

3-4.裁判書面が読みづらいのは弁護士のせいではない

裁判書面において、和暦を用いていること、読点の代わりにカンマが使われていることは、公文書のルールです。前者は慣習に過ぎませんが、後者は「公用文改善の趣旨徹底について」という昭和27年の内閣官房長官による通知が根拠となっています。

裁判書面が支離滅裂な文章になっている理由は、攻撃防御の中で作成されているからです。民事裁判では原告と被告が交互に自らの主張と相手方の主張への反論を出し合っていきます。複数の争点がある場合には、ある争点についての主張と別の争点についての反論を一つの書面で行うことになります。その書面だけを読むと途中でいきなり話題が変わるので驚きますが、その前に相手方が提出している書面と併せて読めば、この部分は新たな主張でこの部分は反論であるということがわかるはずです。

4.まとめ

以上のように、弁護士が書く文章が読みづらいことには弁護士なりの理由があります。とはいえ、理想は相手と場合によって文調を使い分けることであり、依頼者に裁判書面案を確認いただく際には、メールなどでの説明は読みやすく書くべきでしょう。文章はコミュニケーションのツールである以上、相手と場合に合わせた文章を書くことが求められます。例えば、求職者として法律事務所や企業に履歴書や職務経歴書を提出する際には、内容の正確性はもちろんのこと、熟読せずとも自分の魅力が伝わるように工夫することが必要です。C&Rリーガル・エージェンシー社は、2007年から弁護士の就職/転職を支援し続けてきました。就職/転職をお考えの際にご相談いただければ、自分の魅力を伝えるための履歴書や職務経歴書の作成もお手伝いいたします。

記事提供ライター

弁護士
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。

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