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留学希望の弁護士必見!留学の意義と事前準備を解説します!
- 目次
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1 弁護士の留学の目的・意義
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2 留学に必要な準備
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3 まとめ
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弁護士の留学といえば、以前は四大法律事務所を筆頭とする大規模企業法務系事務所のアソシエイト弁護士が、パートナー弁護士になるための研鑽の一環としてアメリカの有名ロースクールに留学するというイメージがあったかもしれません。しかし、近年ではグローバル化が進んでいる中、大規模法律事務所以外の弁護士でも留学をする人が増えてきています。
そこで、今回の記事では弁護士の留学について基本的なことをまとめてみました。なお、現在でも留学先として選ばれるのはアメリカのロースクールが多いこともあり、アメリカへの留学を前提に記述しています。また、アメリカのロースクールの大半は、J.D.コース(3年)とLL.M.コース(約9ヵ月)を設けており、日本の弁護士資格を有する人はほぼ全員がLL.M.コースに進むので、この記事でもLL.M.コースを志望することを前提としています。
1 弁護士の留学の目的・意義
(1)アメリカの弁護士資格を取ること
アメリカのロースクールを卒業すると、一定の州の司法試験の受験資格が与えられます。この試験に合格すると「○○州弁護士」と名乗ることができます。もちろん、日本に戻って弁護士業務をおこなうのであれば、アメリカの弁護士資格を取ることは必須ではありません。
しかし、法律事務所で働くかインハウスローヤーとして働くかに関わらず、企業法務に携わる弁護士であれば、海外との取引や海外進出をサポートする機会は多数あります。そうなると、必然的に海外の弁護士とやりとりをする機会も増えますが、外国の弁護士と交渉する際には、その国の弁護士資格を持っているということが「信頼」につながるといえます。
率直にいって、海外の弁護士は、日本の司法試験がどのくらいの難しさなのかをよく知りません。しかし、自国の司法試験のレベルであればよく知っています。アメリカの弁護士からすると、単に「日本の司法試験に合格している日本の弁護士」というより、「自分たちと同じアメリカの司法試験を突破している日本の弁護士」というほうが、相手の実力を信用しやすいという実状があります。また、アメリカは現在でも世界的な大国であることからすれば、アメリカ以外の国の弁護士とやりとりをする場合にも、アメリカの弁護士資格をもっているということは信頼につながるといえます。もちろん、依頼者である日本企業にも安心感を与えることになるでしょう。
そういった意味で、アメリカで弁護士業務に携わらないとしても、アメリカの弁護士資格を取っておく意味は大きいと考えられます。
(2)世界の人とのつながりを作ること
留学でもう1つ重要なことが、「人とのつながり」を作ることです。アメリカのロースクール、特に日本の弁護士が留学先として選択するLL.Mコースには、世界各国の法曹が集まってきます。そのような人達とロースクールでの学修を通して切磋琢磨し、授業外を通じて交流を深め、それぞれが自国に戻った後も関わりを維持することは、弁護士業務だけでなく一個人にとっても大きな財産となることは間違いありません。
また、留学2年目にはアメリカの大手ローファームや官公庁などで実務経験を積むことも多くありますが、そこで実力を認められれば、その後の仕事にもつながります。
2020年に大流行した新型コロナウイルスの影響でオンライン授業が増えており、クラスメートと直接顔を合わせて話をする場面が減っていることは残念ですが、留学するからには、様々な機会を得て、多くの人と繋がる努力をされるのがよいと思います。
(3)著名な学者の講義を受け、アメリカの法実務に触れること
アメリカの有名大学には、世界的に著名な学者が多数在籍しており、最先端の研究に触れることができます。また、国の規模が大きいこともあり、実務分野においても日本とは比べものにならないほどのダイナミックな経験ができるでしょう。こういった経験は、弁護士としての知見を深め、視野を広げるのに役立つはずです。
2 留学に必要な準備
(1)留学中の目標の設定
上記のとおり、留学には様々な意義があります。まずはご自身が何を目的に留学するのか、留学中に何を身につけたいのかという「獲得目標」を明確に設定しておく必要があります。留学がキャリアアップにつながることはもちろんですが、LL.Mコースは約9ヵ月と短く、時間はあっという間に経ってしまいます。限りある時間を有益に活用するためにも、目標設定はしっかり行っておきましょう。
特に、帰国後に転職をし、別の法律事務所や企業で働きたいと思っている方は、留学前から「どのような法律事務所/企業に転職してどのような業務に携わりたいか」をリサーチし、それにマッチするように留学先や受講科目を選択するとよいです。留学前(あるいは遅くとも留学後の早い段階で)転職エージェントと繋がっておけば、留学中もエージェントと連絡を取り合うことで、海外にいながらにして日本の転職市場の情報を得られます。そうすれば、余裕をもった転職活動ができますし、LL.M.での学修過程などで新たな分野への興味関心が生じた場合にも、それをどう転職に活かすことができるかを具体的に相談することができます。
(2)所属事務所/企業との相談
大手の法律事務所のように、若手弁護士の育成カリキュラムの中に留学が組み込まれているところであれば別ですが、そうでない場合は、早めに所属事務所のボス弁や、所属企業の上長に相談しておくことが必要です。特にあまり規模の大きくない法律事務所や企業に所属している場合には、弁護士1人が留学することによる業務への影響も少なくありません。早めに留学の希望を伝え、事務所/企業の業務に配慮すれば、事務所/企業も快く送り出してくれるはずです。
また事務所/企業が留学費用(の一部)を負担してくれるのかどうかについても話し合っておくとよいでしょう。
(3)留学プランの確定
留学は、個人で留学先を探して自己資金で学費を支払うという方法が最も一般的ですが、様々な団体が留学支援を行っています。例えば、日本弁護士連合会は「日弁連海外ロースクール推薦留学制度」という制度を設けており、一定の要件を充たした場合に、特定のロースクールへの留学について資金援助を行うこととしています。
ロースクール留学は学費も高額ですし、アメリカは物価も高いため、利用できる制度を見逃すことのないよう、しっかりリサーチしておきましょう。
(4)必要書類などの準備
ロースクールの留学には、かなり高いレベルの英語力が要求されます。TOEFLで100点以上のスコアを求められる場合も少なくありません。帰国子女や大学時代に留学経験のある方でなければ、なかなか1度の受験で100点を取ることは難しいともいわれます。実際に、ロースクールの出願時期の1年以上前から英会話スクールなどに通って準備をする人も多いです。「留学」という道を考え始めた時点からコツコツと学修を進めておくとよいでしょう。もしも留学しないことになったとしても、今の時代、英語力を身につけておいて損をすることはありません。
また、ロースクール出願に際しては、複数の推薦状やステートメント(志望動機)の提出も求められます。推薦状は、現在の職場の上司、大学時代にお世話になった教授、司法研修所の教官(主に裁判官)などからもらうのが一般的だとされます。忙しい仕事の合間に推薦状を書いてもらうことになるわけですから、時期的に余裕を持って依頼するのがマナーです。誰に、いつ頃依頼するか、早めに段取りをしておきましょう。ステートメント(志望動機)についても早めに作成し、英語に間違いがないかなどを第三者にチェックしてもらうとよいです。
それから、これは言うまでもないことですが、ロースクール在学中は収入がなくなることを前提に、留学に必要な費用(学費・生活費など)を貯金しておくことも大切な準備のひとつといえます。
3 まとめ
アメリカをはじめとする海外のロースクールに留学するというのは貴重な経験です。冒頭で、留学する弁護士は増えてきていると書きましたが、それでもまだ全体に占める割合はそれほど多いとはいえません。留学経験があることで、その後のキャリアプランの幅が広がることは間違いないでしょう。
C&Rリーガル・エージェンシー社は、弁護士に特化した転職エージェントとして、総合的なサポートを行っております。留学経験を活かしたキャリアアップの方法についても、最新の動向を踏まえたアドバイスを行うことが可能ですので、ぜひ一度ご相談ください。
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記事提供ライター
社会人経験後、法科大学院を経て司法試験合格(弁護士登録)。約7年の実務経験を経て、現在は子育て中心の生活をしながら、司法試験受験指導、法務翻訳、法律ライターなど、法的知識を活かして幅広く活動している。