業界トピックス

弁護士のための法律事務所からの退職交渉について

目次
  • 1.弁護士の退職交渉について

  • 2.退職交渉を行うタイミング

  • 3.退職交渉を成功させるための伝え方

  • 4.まとめ

1.弁護士の退職交渉について

弁護士は、退職を希望する労働者を代理して退職交渉をすることもある職業です。しかし、弁護士自身が退職をする際の退職交渉についてはわからないという方も多いのではないでしょうか。

近年、企業内弁護士も増えてきましたが、いまなお弁護士の多くは法律事務所に勤務しています。そして、法律事務所の多くは、企業と比較して小さな組織であり、契約関係も業務委託であることが多いため、企業を退職する際の退職交渉がそのまま通用するわけではありません。

ここでは、弁護士が、法律事務所を退職したいと考えたときの、弁護士のための退職交渉の流れについて解説します。

2.退職交渉を行うタイミング

法律事務所からの退職交渉を行う際に留意すべき点は2つあります。1つは自分の転職活動への影響、もう1つは現在の勤務先において十分な引継を行えるようにすることです。

退職交渉でのつまずきにより転職活動に悪影響が出る場合があります。未だ転職先が決まっていないのに退職意思を伝えてしまったばかりに、激高されて生活の糧を失ってしまったり、逆に引き留めにあったり、転職活動を妨害されたりということもあり得ます。引き留めの中で待遇や労働条件の改善を引き出せるならば問題ないと思われるかも知れませんが、日頃から適切なコミュニケーションが取れていれば、退職という最後のカードを切るまで追いつめられることはないはずです。転職活動への悪影響を避けるために、退職交渉は、転職先から内定を得た後のタイミングで行うべきでしょう。

現在の勤務先において十分な引継が行える時期から退職交渉を行うこともとても重要です。弁護士の仕事は属人的要素が強いため、他の職種と比較すると、引継の重要性が高いと言えます。また、弁護士業界は狭い業界です。転職後も現在の勤務先の所属弁護士と顔を合わせる機会は多々あるでしょう。弁護士が扱う事件は解決までに時間がかかるものも多いため、転職後も、現在の勤務先の事件に共同受任という形で関わることも想定されます。そのため、法律事務所からの退職交渉においては、退職後の関係性維持がミッションとなります。法的にも、法律事務所と業務委託契約を締結している弁護士は、契約の一方当事者として、相手方である現在の勤務先に不要な損害を与えないように十分な引継を行う信義則上の義務を負っていると考えられます。

以上のように考えると、退職交渉を行うべきタイミングは、転職先から内定を得た後であり、かつ退職日までに必要な引継期間を設けられる時期、ということになります。必要な引継期間については、現在の勤務先における立場や任されている仕事によるため一概には言えませんが、一般論としては1~2ヶ月は必要と考えられます。引継期間を確保するためには転職先との調整も必要となりますが、前職での仕事に責任を持つことによって、転職先からもより高い評価を得られるのではないでしょうか。

とはいえ、現在の勤務先の業務が忙しすぎて転職活動との並行が難しい場合には、転職先が決まる前に現在の勤務先に退職意思を伝えて転職活動のための時間をもらう、あるいは現在の勤務先を辞めてから本格的な転職活動を開始する、ということをせざるを得ません。前者の場合のリスクは上で触れましたが、後者の場合には、転職先が決まるまでの経済的なリスク、精神的な不安、転職活動への悪影響(ブランクが発生してしまう)などがあることを覚悟する必要があります。

3.退職交渉を成功させるための伝え方

法律事務所からの退職交渉においては退職後の関係性維持がミッションになると述べましたが、そのためには、転職への前向きな理由が求められます。もし後ろ向きな理由、例えば、待遇や労働環境、仕事の内容、人間関係といった不満を前面に出してしまっては、喧嘩別れとなってしまう可能性がある上に、不満点を改善するからと引き留められてしまう可能性もあります。

上でも述べましたが、退職という最後のカードを切らなければ不満点の改善が果たせない環境に先はありません。また、既に転職先が決まっているにもかかわらず引き留めに応じて内定承諾を辞退してしまうことは、各方面に多大な迷惑をかけることになります。転職先は、内定を出すにあたり、他の候補者に断りの連絡をし、机や業務用PCを購入し、名刺や各種アカウントの作成といった受け入れ準備を進めています。自分が内定を断ったから次点の候補者が繰り上がるという単純な関係が成り立つとは限らず、その候補者は既に意中ではない別の勤務先に転職しているかも知れません。法的にも、内定を承諾した時点で新たな契約が成立していると考えられます。

退職交渉を成功させるための前向きな退職理由としては、現在の勤務先では扱えない分野にチャレンジしたい、家族との時間を作るためにどの地域でどのような条件で働きたい、将来のキャリアのために今しかない環境に身を置きたい、といったものが考えられます。これらの理由ならば、現在の勤務先も、転職に反対し辛いのではないでしょうか。

4.まとめ

法律事務所からの退職交渉では、転職活動の妨げとならないようにするだけでなく、退職後も良好な関係を維持できるように工夫することが必要です。とはいえ、退職交渉を恐れて転職に向けた新たな一歩を踏み出せないというのでは本末転倒です。C&Rリーガル・エージェンシー社は、弁護士の転職活動を支援する中で、どのように転職活動を現在の勤務先の業務と並行させるか、どのように退職交渉を進めるかについても、ご相談を承っております。法律事務所からの退職を悩まれた際には、お気軽にお声がけください。

記事提供ライター

弁護士
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。

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