業界トピックス

刑事弁護士だけじゃなく民事弁護士もいるの?民事弁護士の仕事とは

目次
  • 1.刑事と民事

  • 2.実は民事弁護士ばかり

  • 3.一般民事と企業法務

  • 4.争う事件と争わない事件

  • 5.民事弁護士の仕事は人それぞれ

  • 記事提供ライター

  • サイト運営会社:株式会社C&Rリーガル・エージェンシー社

1.刑事と民事

弁護士資格を持つと、刑事事件では弁護人に、民事事件では訴訟代理人になることができます(刑事訴訟法第第31条第1項、民事訴訟法第54条第1項本文)。刑事事件において、弁護人は、被疑者/被告人から独立して弁護活動を行います。さらに、刑事事件の中でも、重い犯罪が問われている場合には、弁護人がいなければ裁判を始めることができません(刑事訴訟法第289条第1項)。一方の民事事件では、原則として、本人が自分で争い、例外的に訴訟代理人を立てる場合には、弁護士の中から選ぶというだけです。

弁護人と訴訟代理人のどちらが裁判の主役らしいかといえば、弁護人でしょう。弁護士が主役となるドラマでも、多くの場合、刑事事件が舞台となって、訴訟代理人ではなく弁護人として活躍することになります。刑事弁護士の現実については「ドラマと現実の違い~99.9%の理由~」https://www.bengoshitenshoku.jp/column/181をご参照ください。

訴訟代理人は裁判の主役とは言えないかも知れませんが、民事事件における弁護士の役割は、訴訟代理人となることだけではありません。刑事と比較するとわかりづらい民事における弁護士の仕事についてご紹介します。

2.実は民事弁護士ばかり

刑事弁護は弁護士の本籍地だと言われています。しかし、実は、弁護士の大多数は、刑事事件をほとんど扱いません。かつて先輩弁護士から、取扱事件の1割が刑事事件ならば、立派な刑事事件の専門家だと聞かされましたが、そのとおりだと思います。

弁護士がなぜ民事ばかり扱うのかというと、民事の方が刑事よりも仕事が多いからです。民事では私人から依頼を受けます。ひとくちに私人といっても、個人も企業もいますし、年齢も職業も企業規模も経営状態も様々です。さらに、刑事と比較した場合の民事の最大の特徴として、争いがない案件も多数存在しています。例えば、企業から新規事業へのリーガルアドバイスを求められる場合です。争いとなる場合、例えば、貸したお金を返してくれないという相談を受けた場合でも、いきなり訴訟代理人となるわけではなく、内容証明郵便を送付するだけで終わることもあります。民事は幅広く、その分の仕事の総数も多いので、民事ばかりを扱う弁護士が大多数になっています。

3.一般民事と企業法務

民事事件は、一般民事と企業法務に区分されることが多いようです。しかし、一般民事や企業法務という言葉に明確な定義があるわけではないので、その線引きはあいまいです。

両者を区別する基準として、一見わかりやすいのは、依頼者が個人であるか企業であるかというものでしょう。しかし、労働事件は、個人(労働者、被用者)対企業(使用者)であるため、この基準を用いると、同じ事件であるのに、個人側に立てば一般民事、企業側に立てば企業法務ということになってしまいます。一般民事ではわかりやすい説明が求められ、企業法務では根拠のある説明が求められると言われることもあるようです。しかし、筆者は、依頼者が個人であろうが企業であろうが、確たる根拠を示しながらわかりやすく説明しようと心がけており、態度を使い分けることはありません。

次に基準として考えられるのが、個人が関与する争いか、企業間の争いか、というものです。この基準を用いると、企業側から労働事件を扱っても一般民事ということになります。しかし、企業と企業が貸金返還請求や建物明渡請求で争うこともあります。これを企業法務と呼ぶことには違和感があります。

筆者には一般民事と企業法務の違いが理解できないのですが、世間からは、なんとなく庶民的なのが一般民事、なんとなく煌びやかなのが企業法務、というイメージを持たれているだろうことは知識として知っています。

4.争う事件と争わない事件

筆者がかつて勤務していた法律事務所は、多数の顧問先企業を抱え、それが取引先企業との間で紛争となった場合に、勝利を目的として活動していました。常に企業対企業の争いを扱っているので、多くの分類に従えば、企業法務ということになります。企業対企業の貸金返還請求を扱うこともありましたが、企業法務の最たるものとして扱われるだろう知的財産権の争いなども扱っていました。にもかかわらず、当時のボス弁は、街弁を自称していました。いわく、M&Aや渉外取引といった企業法務を扱わないからだそうです。

現在の筆者は、民事の中でも争わない事件ばかりを扱っています。契約書ひな形や就業規則の整備など、企業内部で完結するものは、争う相手がいません。契約書の文言修正などは相手方がありますが、交渉こそ発生するものの、双方の目的は、合意を形成して円滑に取引を進めることにありますので、争いに発展して訴訟事件に至ることは想定されません。同じく裁判所外の交渉であっても、訴訟事件に発展する可能性を踏まえて、相手方弁護士に裁判になったらこちらが勝つ見込みだと理解させて譲歩を迫る交渉をするのと、訴訟事件に発展することは想定されず、互いが納得するために調整をおこなうのとでは、仕事の内容は全く異なると思います。

M&Aや渉外取引は、交渉の中での駆け引きは発生しても、本質的に争うものではありません。企業対企業が知的財産権の帰属を争うこととは全く異なる能力が求められるのだと思います。とはいえ、争わないから企業法務だと簡単に言えないことも、民事の面白いところです。筆者は、高齢の方から、自分の死後も子供たちが争わないような相続対策をしたいと相談されることがあります。これは明らかに企業法務ではありません。

5.民事弁護士の仕事は人それぞれ

弁護士の仕事の内容は人それぞれです。そして、ほとんどの弁護士が民事弁護士である以上、民事弁護士の仕事も人それぞれです。だからこそ、筆者は、一般民事や企業法務などの区分に惑わされることなく、その法律事務所に勤務すれば、具体的にどのような仕事ができるのかに注意を向けるべきだと考えています。C&Rリーガル・エージェンシー社は、2007年の創業以来、弁護士の就職/転職を支援し続けており、どの法律事務所ではどのような仕事ができるのか、詳細な情報をお伝えできますので、就職/転職をお考えの際には、お気軽にご相談ください。

記事提供ライター

弁護士
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。

サイト運営会社:株式会社C&Rリーガル・エージェンシー社

弁護⼠、法務・知財領域に精通したプロフェッショナルエージェンシーです。長きに渡り蓄積した弁護士・法律事務所・企業の法務部門に関する情報や転職のノウハウを提供し、「弁護士や法務専門職を支える一生涯のパートナー」として共に歩んでまいります。
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日本のリーガルを牽引する弁護士、法律事務所/企業法務部の姿、次世代を担う弁護士を徹底取材した『Attorney's MAGAZINE』を発行。
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