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業界トピックス

リーガルテックの現状~電子署名を中心に~

ITの活用で既存の産業に新たな価値や仕組みを提供するものとして、クロステック(X-Tech)という領域が近年注目を集めるようになりました。その中から今回は、弁護士の業務にも関わりの深いものになりつつある「リーガルテック」についてまとめてみます。既に仕事でリーガルテックに携わっている方も、「今さら聞けない…」と思っている方も、ぜひご一読ください。

1 リーガルテック、日米での発展

リーガルテックとは、リーガルサービスを提供するために活用されるソフトウェアやテクノロジーのことをいいます。
もともとは訴訟大国といわれるアメリカで発展してきました。アメリカの民事訴訟では、訴訟相手が証拠の提出を拒否した場合、全ての証拠開示を請求することができます。相手が個人であればともかく、訴訟相手が企業の場合、相手が保有している証拠の量は膨大になりますので、人の手で全てを精査するのはとても大変です。また、コモン・ロー(先例主義)を採用するアメリカにおいては、日々蓄積される裁判例の調査・分析を正確かつ迅速に行うことが非常に重要になります。これらのことから、アメリカではAI技術を使った効率的な精査・リサーチが早くから普及してきました。現在では、既存の法律事務所以外の代替法務サービスプロバイダ(ALSP)もリーガルテックを提供するようになっていきています。
これに対し、日本のリーガルテックは、企業の働き方改革と相俟って、2016年頃から大きく発展しつつあると言われています。2017年以降は、メディアでも注目されるようになりました。リモートワークの推進やフリーランスの活用に伴い、業務関係者が常にオフィスにいるという環境が当たり前ではなくなった今、法務・契約周りの紙文化が見直されるようになっており、このような社会状況がリーガルテックの導入を後押ししているといえます。
とはいえ、ITを活用したときの最大の懸念事項は「セキュリティ」です。セキュリティ対策にも様々なものがありますが、この記事では、契約の場面で多用される「電子署名」について詳しく見ていきたいと思います。

2 電子署名

2-1 電子署名とは何か

電子署名とは、紙媒体における署名・押印に相当するもので、電子ファイルが間違いなく本人によって作成されたものであること及び内容が改ざんされていないことを示すものです。
インターネットの普及とシステム化、そして上述したような紙文化見直しの流れにより、契約書のような重要書類もPDFなどの電子文書でやりとりするケースが増えてきていますが、紙媒体と異なり、電子ファイルには押印や手書きの署名をすることができないため、文書の内容が本人の意思であることが証明しにくいという難点があります(デジタルな印影や署名画像を上書きすることは可能ですが、デジタル画像はコピーが容易であるため、本人意思の証明には使えません)。そこで、署名・押印に代わって電子ファイルの作成者と日時を証明するとともに、改変されていないことを確認できるようにする技術として生み出された技術が電子署名なのです。
更に安全性を高めるために「電子証明書」が併用されています。電子署名が印鑑の役割を果たすのに対し、電子証明書はインターネット上の印鑑証明書の役割を果たすもので、第三者である証明局が発行します。電子証明書はパソコン本体やICカードなどに格納されており、インターネット経由で第三者に盗まれることはないという点で、安全性が高いと考えられています。

2-2 電子署名の仕組み

電子署名は、暗号技術によって実現されます。現在は、文書を暗号化・復号するときに「公開鍵」と「秘密鍵」という一対の鍵を使う「公開鍵暗号方式」という技術が多く使われています。公開鍵は、平文を暗号化することしかできない(閉めることしかできない)鍵で、一方の秘密鍵は、公開鍵で作った暗号文を平文にすることしかできない(開けることしかできない)鍵です。2つの鍵は「公開鍵で作った暗号文はそれと対に秘密鍵でしか解読できない」という関係にあります。
公開鍵は第三者に公開することを前提としているのに対し、秘密鍵は厳重に保管されることが必要です。
通常、秘密情報を受け取りたい者(受信者)は、秘密鍵を厳重に保管した上で、秘密情報を送る者(送信者)に対し、自らの公開鍵を配布しておきます。このとき、受信者は、証明局から発行してもらった電子証明書を添付することで、公開鍵の情報が受信者本人のものであることを証明します。その後、送信者は、受信者の公開鍵を使ってメッセージを暗号化した上で受信者に送信します。受信者は、自らの秘密鍵で復号(解読)文書作成者は、作成した文書に、自身の秘密鍵で電子署名をします。これを受け取った相手は、予め受け取っている公開鍵で文書を解読することができる、という仕組みです。

2-3 電子署名のメリット・デメリット

電子署名を利用したクラウド型電子契約サービスは2015年頃に登場したと言われます。電子署名は一定の安全性が担保されている上、比較的低コストで導入できます。しかも、業務の効率化、ペーパーレス化によるコスト削減・環境改善、契約書の紛失や更新漏れを防ぐことによるコンプライアンスの強化といったメリットもあるため、利用する企業は年々増加しています。
一方、現時点でのデメリットとしては、定期建物賃貸借契約や重要事項説明書など、書面による契約が法律で義務付けられている一定の文書については利用できないということが挙げられます。また、書面の電子化への移行がまだ過渡期にあることから、取引先企業や法律事務所が同じように電子契約を用いることに合意してくれるとは限らないという難しさもあります。とはいえ、これらの点は、今後書面の電子化が一般化するにつれて状況が変わっていくと思われます。
電子署名を支える暗号技術が誕生したのは1970年頃ですが、電子署名の効力を法的に認める電子署名法が施行されたのは2001年のことです。電子署名は今後ますます活用され、それに伴って法改正も行われていくことが予想されます。契約関係業務を行う弁護士であれば、一度はこの法律に目を通し、顧客に適切なアドバイスができるようにしておくとよいでしょう。

3 まとめ

今回は、近年注目を集めているリーガルテックについて、電子署名を中心に、基本的な部分を解説しました。2020年の新型コロナウイルスの感染拡大で、働き方はますます変化し、リーガルテックも一層発展していくと予想されます。弁護士も、仕事をする上でリーガルテック普及の流れを避けて通ることはできないでしょう。
しかし、現段階では、弁護士の中にもこの分野に詳しい人はまだあまり多くないのが実状です。この分野での経験・知識が豊富であれば、現段階では転職活動における「強み」としてアピールできる可能性があります。
C&Rリーガル・エージェンシー社は、弁護士に特化した転職エージェントです。強みを活かした戦略的な転職活動についてもアドバイスさせていただくことができますので、キャリアアップをお考えの方はぜひ一度ご相談ください。

記事提供ライター 元弁護士

社会人経験後、法科大学院を経て司法試験合格(弁護士登録)。約7年の実務経験を経て、現在は子育て中心の生活をしながら、司法試験受験指導、法務翻訳、法律ライターなど、法的知識を活かして幅広く活動している。

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