業界トピックス
なぜか3つもある東京の弁護士会の選び方
- 目次
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1.東京には弁護士会が3つある
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2.弁護士会の比較
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3.3つあると困ること
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4.なぜ合流しないのか
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5.東京第4の弁護士会誕生?
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記事提供ライター
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1.東京には弁護士会が3つある
弁護士法第32条は、「弁護士会は、地方裁判所の管轄区域ごとに設立しなければならない。」としています。北海道は広いので、地方裁判所が4つあり、弁護士会も4つです。しかし、東京には、東京地方裁判所しかないのに、東京弁護士会(東弁)、第一東京弁護士会(一弁)、第二東京弁護士会(二弁)の3つの弁護士会があります。二弁によると、「東京に3つの弁護士会があるのは、歴史的な経緯による」そうです(※1)。そして弁護士法第89条第1項は「この法律施行の際現に同じ地方裁判所の管轄区域内に在る二箇以上の弁護士会は、第三十二条の規定にかかわらず、この法律施行後もなお存続させることができる。」としているので、東京三会は存続を許されています。
東京で弁護士登録をする場合、3つの弁護士会のうちのどれかを選ぶ必要があります。勤務先の経営者弁護士やパートナー弁護士から弁護士会を指定される場合には何も考えずに済むのですが、どこでも良いと言われてしまい、困っている方もいるのではないでしょうか。ここでは、東京の3つの弁護士会について考えます。
2.弁護士会の比較
弁護士会を選ぶときに一番気になるのは経済的負担でしょう。一弁の第 75 期司法修習生向けパンフレット(※2)によると、3つの弁護士会の会費(日弁連(日本弁護士連合会)会費、日弁連特別会費を含みます)は、初年度と6年目以降は同額であるものの、途中の段階的な値上がりにやや差があり、10年間のトータルでは、東弁2,736,600円、一弁2,628,600円、二弁2,655,600円と、やや差が出るようです。とはいえ、東京三会のいずれも競うように会費値下げを繰り返しており、やや古い資料(※3)では東弁が一番安いので、ほぼ同水準と考えて良いでしょう。
人数(会員数)も比較してみましょう。日弁連によると、三会の会員数は、2023年8月1日時点で、東弁9,037人、一弁6,553人、二弁6,450人となっています(※4)。全国で52の弁護士会があり、4番目に大きな大阪弁護士会は4,916人ですから、三会のどれを選んでも、先輩は沢山います。女性比率は、東弁21.3%、一弁22.0%、二弁22.3%とほぼ同水準で、いずれも全国平均の19.9%を上回っています。東弁の人数が突出してはいるものの、大規模で女性が活躍し辛いということもないだろう点で、三会の違いはありません。
特色という点でも、かつては、一番古い東弁が保守的、一弁は大手顧客が多く、二弁は新しいもの好き、というイメージを持たれていたようですが、今となっては違いは感じられません。6,000人を超えるような業界団体で、勤務先もバラバラならば、人の個性もバラバラになって当然です。
第2段落にして結論が出てしまいましたが、三会のいずれを選んでも違いを体感することはないだろう、というのが、筆者の結論です。
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3.3つあると困ること
筆者は東京三会のどれかで酷使されている多重会務者なのですが、企業、大学、他士業団体等への表敬訪問や提携協議に駆り出されることがあります。どこに行っても、何千人もいる弁護士会の看板があるので無碍に扱われることはありません。しかし、具体的な協力の話をしようとすると、他の弁護士会とも等距離でいたいという態度を取られて、やりづらさを感じます。相手の立場に立ってみると、筆者が所属する弁護士会と仲良くなることで、他の二会と距離が離れてしまうのではないかという警戒感を抱かれることは理解できます。しかし、実際には、弁護士は職業柄ぐいぐい行くので、他と仲良くしているなら自分とも仲良くして、とは思うものの、他と仲良くしているからあなたとは付き合えない、ということには決してなりません。東京三会は決していがみ合っていません。いがみ合っていると誤解されていることが一番困ります。弁護士会の中の人として、この事実は広く訴えていきたいです。
4.なぜ合流しないのか
二弁によると、二弁は、「分裂状態を憂慮した東弁及び一弁の会員の中から有志が集まり」設立されたそうです(※5)。また、弁護士法第89条第2項も、「前項の弁護士会は、何時でも合併又は解散することができる。」としており、三会の合併を予定しています。にもかかわらず合併がなされない理由を、筆者は、ひとえに、弁護士の東京偏在によると考えています。
2023年8月1日時点の全国の弁護士数は44,830人、うち東京三会が22,040人を占めます。東京三会が合併すれば、全国50の弁護士会のうち1つが他の49会を合計した規模とほぼ同等となります。函館弁護士会は55人ですから、東京三会との人数差は400倍です。果たしてそれで良いのか、もはや東京三会だけで決められる話ではなく、弁護士法の改正も踏まえた議論が必要であるように、筆者には思えます。
【関連コラム】弁護士会には派閥がある?会派とは何をしている団体なのか
5.東京第4の弁護士会誕生?
東京都の23区及び島嶼部以外は多摩地区と呼ばれています。人口400万人以上で、これは四国全体よりも大きな数です。
多摩地区では、東京三会の垣根を超えて、弁護士の有志が、東京三弁護士会多摩支部として活動しています(※6)。多摩地区の弁護士は約800人、うち多摩支部に所属しているのは600人程度と、広島弁護士会と同水準の規模を誇っています。
多摩地区を管轄する東京地方裁判所立川支部の事件数も、全国に50ある地方裁判所本庁と並べても10位以内に入ります。にもかかわらず、立川支部は本庁ではないので、最高裁判所規則により上訴事件(簡易裁判所からの控訴)や行政事件を扱うことができないなど、機能に制限があります。そこで、立川支部を本庁化して欲しいという要望が、多摩地区の地方自治体から出されています。
この要望が通り、立川支部が立川地方裁判所となった場合、冒頭で見た、弁護士法第32条「弁護士会は、地方裁判所の管轄区域ごとに設立しなければならない。」により、東京三弁護士会多摩支部が、東京第4の弁護士会となる可能性があります。筆者には、東京三会の合併よりも、多摩支部の独立の方がずっと現実的に思えます。東京四会と呼ばれる日が遠からずやってくるかもしれません。
記事提供ライター
弁護士
大学院で経営学を専攻した後、法科大学院を経て司法試験合格。勤務弁護士、国会議員秘書、インハウスを経て、現在は東京都内で独立開業。一般民事、刑事、労働から知財、M&Aまで幅広い事件の取り扱い経験がある。弁護士会の多重会務者でもある。
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【参照】
※1『二弁によると、「東京に3つの弁護士会があるのは、歴史的な経緯による」そうです。』
https://niben.jp/niben/organization/about.html
※2『一弁の第 75 期司法修習生向けパンフレット』
https://www.ichiben.or.jp/data/75th_youkoso2022.pdf
※3『東京三会のいずれも競うように会費値下げを繰り返しており、やや古い資料では・・・』
https://www.moj.go.jp/content/000077010.pdf
※4『人数(会員数)も比較してみましょう。日弁連によると・・・』
https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/membership/members.pdf
※5『なぜ合流しないのか。二弁によると・・・』
https://niben.jp/niben/organization/about.html
※6『東京三弁護士会多摩支部』
https://www.tama-b.com/
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