業界トピックス
弁護士の多様なキャリアとは
- 目次
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1 司法試験合格者の就職先(司法修習直後の就職先について)
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2 法律事務所のキャリア
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3 インハウスローヤーのキャリア
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4 弁護士の代表的なキャリアプランと転職のポイント
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5 まとめ
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司法制度改革の一環として法曹人口が拡大されていくのに伴って、弁護士の活躍するフィールドも広がりを見せています。今回は弁護士の多様なキャリアについてまとめます。
1 司法試験合格者の就職先(司法修習直後の就職先について)
まずは弁護士に限らず、司法試験に合格して司法修習を終了した人たちの進路について簡単にまとめてみます。
司法修習終了後に法曹として選択できる道は3種類あり、「裁判官」「検察官」「弁護士」です。裁判官と検察官は国家公務員であるため、それぞれ採用可能人数が決まっています。近年は、司法修習終了後に裁判官として採用される人が100名前後、検察官として採用される人が80名前後であり、毎年の司法修習終了者が2,000名程度であることからして非常に狭き門といえます。
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裁判官や検察官になるためには、司法試験に良い順位で合格することが求められます。司法試験の成績があまり奮わなかった場合でも、司法修習中に行われる起案(テスト)で高得点を取ることで挽回できる可能性はありますが、やはり司法試験の段階から上位を狙うことが重要です。その上で、司法修習で配属された実務庁からも高評価を得ること、司法研修所の裁判官教官・検察官教官の推薦を受けること、といった何段階かのハードルを乗り越えた人だけが裁判官・検察官に採用されることになります。
裁判官・検察官にならない人は、ほとんどが弁護士として登録します(この段階で法曹以外の道に進む人もいますが、ごくわずかです)。弁護士になった場合は、法律事務所に所属する人が多数ですが、一般企業の法務部でインハウスローヤーとして勤務するケースも増えてきています。
以下の「3 インハウスローヤーのキャリア」のところで説明するように、最近では自治体内弁護士、病院内弁護士、学校内弁護士と言った形で、一般企業以外の様々な団体でも弁護士を採用するようになってきています。もっとも、その多くは経験弁護士の採用が中心で、司法修習直後にこれらの場所で勤務をスタートする例はまだあまり多くはありません。
2 法律事務所のキャリア
弁護士として最も一般的なキャリアは法律事務所で勤務することですが、法律事務所といっても多種多様です。法律事務所の主な分類と特徴は次のとおりです。
(1)一般民事・刑事法律事務所
最も多いタイプの法律事務所がこちらです。いわゆる「マチ弁」に相当するもので、一般民事・家事から刑事事件、中小企業の企業法務案件まで幅広く手がけるところが多いです。どの分野の事件を多く手がけるかは法律事務所によって異なり、それが法律事務所のカラーにもつながっています。
(2)企業法務系法律事務所
企業法務全般を扱う法律事務所です。企業法務系法律事務所と言えば、いわゆる四大(五大)法律事務所が有名ですが、小規模な法律事務所も存在します。
もっとも、大企業の大規模案件を扱う場合は弁護士側にもマンパワーが必要となりますので、数十人以上の規模の法律事務所が受任する傾向が強いです。数人から十数人規模の法律事務所の場合は、主に中小企業案件や、大企業の顧問弁護士(大規模事務所は弁護士費用も高額になりやすいため、大企業は依頼内容によって法律事務所を使い分けることが多いです)を手がける場合が多いといえます。
四大(五大)法律事務所のような数百人規模の企業法務系法律事務所は、近年、諸外国にも進出しており、所属弁護士がそこで働く機会も増えてきています。
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(3)ブティック型法律事務所
ブティック系法律事務所とは、取扱分野が特定分野に限定されている法律事務所のことをいいます。労働、知財、金融、税務、インターネット&サイバーセキュリティ、M&A、刑事、エンタメ、離婚、相続、ベンチャーなど幅広い分野にブティック系法律事務所と呼ばれる法律事務所が存在し、規模の様々ですが、所属弁護士全員がその特定分野のみを扱っている点が特徴的です。
ブティック系法律事務所についてはこちらの記事もご参照ください。
【弁護士】ブティック系法律事務所の求人特集
(4)外資系法律事務所
一般的に、外国法律事務所の傘下にある事務所を外資系法律事務所と呼びます。規模は40名程度のところもあれば100名を超えるところもありますが、取扱分野は概ね企業法務案件に偏っています。外資系であるだけにクライアントは日系企業よりも外資系企業が多い点が特徴であり、外国語や外国法に携わる機会はかなり多くなります。
どの分野の法律事務所に就職するにしても、その法律事務所に残ってキャリアアップを目指すのであれば、アソシエイト弁護士(勤務弁護士/イソ弁)として給与をもらう立場から始まり、やがてはパートナー弁護士(経営弁護士/ボス弁)として事務所経営の一翼を担うようになるというのが代表的なキャリアプランといえます。
一方で、独立開業を視野に入れた上で経験を積むために数年間どこかの法律事務所に所属するケースもあります。2~3年単位で専門性の異なる事務所を2~3箇所渡り歩き、幅広い経験を積んでから独立するという人もいます。
勤務弁護士時代の給与は法律事務所によってまちまちであり、四大法律事務所は初年度から1,000万円を超える収入がもらえる一方、小規模事務所は500万円程度に留まる場合もあります(もっと安いところもあります)。小規模事務所の場合、固定給の額が低い代わりに個人受任は自由であったり、逆に固定給は比較的高額であるが個人受任は禁止又は許可制であったりするところもあるため、収入と働き方のバランスも意識してどのような法律事務所で働くかを考えてみるとよいでしょう。
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3 インハウスローヤーのキャリア
インハウスローヤー(企業内弁護士)の数は近年急激に増加しており、2001年には66人に過ぎなかったところ、2021年には2,820人にまで増えています(日本組織内弁護士協会HP参照)。
既にインハウスローヤーが複数いるような企業や、若手を中心としたベンチャーでは、司法修習終了直後の弁護士も積極的に採用するところも見られるようになってきましたが、インハウスローヤーに関しては経験弁護士の中途採用が活発化しているのが現状です。
弁護士が企業に入る場合、総合職として働くルートと専門職として働くルートがあります。一般的には社内の昇進ルートに従って、法務部長やCLOを目指すパターンが多いでしょう。総合職の場合、バックオフィスなどの他部署に異動したり、希望して事業開発などのフロント部門に関与する弁護士も散見されます。
企業の業種や規模によって取扱分野には偏りがあり、求められる能力(語学力、実務経験など)や働き方(残業時間、収入、出張の頻度など)も様々です。収入水準は法律事務所と比べるとやや低いとされますが、安定はしており、比較的福利厚生が充実している場合が多いと言えるでしょう。
インハウスローヤーの場合、企業側から弁護士登録は維持して欲しいとの要望が出ることもありますし、特に弁護士資格が必要でないポジションの場合には登録を維持するかどうかを本人の判断にゆだねることもあります。弁護士登録を維持する場合も、弁護士会の会費を会社が負担してくれるかどうかはまちまちですが、任意で登録を維持する場合には個人負担となるのが通常です。
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●関連コラム
企業内弁護士(インハウスローヤー)の現状
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4 弁護士の代表的なキャリアプランと転職のポイント
弁護士が転職を考える場合、代表的なパターンとしては以下の8つに分類できると思われます。
(1)法律事務所から法律事務所への転職
(2) 法律事務所からインハウス(企業だけでなく自治体・病院・学校などを含む。以下同じ)への転職
(3)インハウスからインハウスへの転職
(4)インハウスから法律事務所への転職
(5)法律事務所から独立
(6)任官・任検(法律事務所から裁判官・検察官へ)
(7)法律事務所から起業
(8)法律事務所から政界進出
このうち(1)から(5)は、これまでのキャリアを直接活かしながら、活躍の場を変えるものであり、(6)から(8)は弁護士としての経験や肩書きを活かしつつ新しい分野に挑戦するというイメージのものになります。
(1)から(4)は、一般的な「弁護士の転職」にあたるもので、当社がサポートしているのもこれらの分野になります。転職をする場合の動機として多いのは、(1)(3)になり、この場合は「これまでとは異なる分野の専門性を身につけたい」「業務環境や働き方を変えたい」などが多くみられます。(2)の場合は、「企業法務に特化したい」「ワークライフバランスを重視した働き方をしたい」「外部からではなく団体の内部から業務支援を行いたい」などがあげられます。(4)の転職を行うケースはあまり多くありませんが、比較的多く見られるのが、法律事務所からインハウスローヤーに転向した人が再度法律事務所に戻るというパターンです。企業によっては業務が単調になりがちであるため物足りなく感じて法律事務所に戻る場合や、働き方を変えたくてインハウスローヤーになってみたものの思っていたのと違っていたという理由で法律事務所に戻る場合などがあります。
いずれのパターンであっても、これまでの経験や実績をアピールポイントにしながら転職活動を行っていくことになります。転職活動の際の注意点については、こちらのコラムも合わせてご覧下さい。
(5)は、ある程度の経験を積んで、いよいよ自分の法律事務所を開業するというパターンです。独立開業というと難しく感じるかもしれませんが、弁護士業界は独立する割合がかなり多く、有名な大規模事務所がある一方で無数の個人経営の事務所が存在するというのが実状です。独立の際の注意点については、こちらのコラムも合わせてご覧下さい。
(6)は、弁護士としての職務経験を積んだ後で、裁判官・検察官になるというルートです。近年、弁護士会が任官・任検を推奨していることもあり、徐々にその数が増えてきています。また、任官の促進を目的とした、非常勤形態の民事調停官・家事調停官(これらは「非常勤裁判官」と呼ばれます)への任官制度もあります。任官・任検を考えている人向けに、弁護士会がメーリングリストを発行していますので、興味のある方は登録して情報収集をしておくとよいでしょう。
(7)については、弁護士として活動する中で抱いた問題意識を元に、弁護士としてではなく起業家として社会貢献しようとする弁護士が徐々に増えてきています。特に近年は、弁護士を辞めて起業するというより、弁護士業務も引続き行いながら起業もするというケースが増加しているように思います。
法律事務所の代表弁護士でありながら、株式会社の代表取締役でもある方の記事はこちら
(8)は従来から一定程度見られる転身例です。2020年10月時点で弁護士登録をしている国会議員は35名であり、「元」弁護士も含めればもっと多いでしょう。もっとも、選挙で勝利するのは容易なことではなく、テレビのコメンテーターをしたり著名事件を手がけるなどして知名度を高めた上で政界進出を行うケースが多いように思います。
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5 まとめ
法曹人口の増加に伴い、従来は弁護士が関与するとは到底考えられていなかった分野にもどんどん弁護士が進出するようになっています。
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記事提供ライター
社会人経験後、法科大学院を経て司法試験合格(弁護士登録)。約7年の実務経験を経て、現在は子育て中心の生活をしながら、司法試験受験指導、法務翻訳、法律ライターなど、法的知識を活かして幅広く活動している。
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